良いこと、谷子、戦う
ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。
「わ~い! 車に突撃! 当たり屋だ!」
「わ~い! アリさん踏んだぞ! 殺人だ!」
「わ~い! お金欲しい! フェイクニュースを投稿だ!」
「わ~い! お腹空いたぞ! 食い逃げだ!」
「キャハハハハハ!」
栞、泪、結、恵の4人の魔法少女は堕落しきっていた。
「やめなさいー!」
良い子のみんなの味方、谷子がほんのおねえさんの収録を終えて帰ってきた。
「どうしたの? 怪獣ちゃん。みんなで楽しく遊びましょうよ。」
「そうよ。魔法があれば何でもできるんだから。」
「まあまあ、高血圧にはお茶がいいらしいわよ。飲んで飲んで。」
「谷子ちゃんが怒ってるの初めて見た。カッコイイ。」
4人の魔法少女の価値観は、魔法都市渋谷でハロウィンで暴れるヤンキーと同じような感じであった。
「栞お姉ちゃんたち、やめなさいー! 好き勝手に生きちゃあダメだ! このままじゃ、本当にダメな子になってしまう! 落ちこぼれていくんだよ! 元の優しい栞お姉ちゃんに戻って!」
谷子の勇気を振り絞った必死の心の叫び声は、半グレ魔法少女たちに届くのだろうか。
「分かったわ。怪獣ちゃん。」
「栞お姉ちゃん。」
栞は真剣な眼差しで谷子を見つめる。分かってくれたのかと安心する谷子。
「原宿でナンパして、若い女の子を夜の世界にスカウトするわ。儲かるわよ。地獄に落ちた女の子がどうなろうが、私には関係ないもの。」
「セカンドバックを忘れずに。」
栞たちは渋谷で悪さはやめて、原宿で悪いことをして来るという。
「栞お姉ちゃんのバカー!」
栞たちの悪ふざけな態度に、遂に谷子が切れた。
「私は、これから栞お姉ちゃんたちを殴る。そして、あなたたちの頭の中から悪い考え方を本に封印します。」
谷子は本の白紙のページに、栞たちの邪悪な精神を封印するというのだ。
「暴力反対!」
「そうだそうだ!」
「いいのか! ほんのおねえさんが暴力をふるって!」
「そうだそうだ!」
魔法少女たちは抵抗する。
「文句があるなら教育委員会にでも言えばいい! ほんのおねえさんだって、殴らなきゃいけない時があるんだ! これで栞お姉ちゃんが優しい本当の姿に戻るなら、批判や処分なんて、全て受け入れてやる!」
谷子は魔法少女たちの悪い性格を殴り取る。
「右フック!」
「ギャア!?」
「左ジャブ!」
「ギャア!?」
「右左ワンツー!」
「ギャア!?」
「とどめの右アッパー」
「ギャア!?」
「撃つべし! 撃つべし! 栞お姉ちゃんたちの悪い記憶を本に封印する! 必殺! メモリー・シールド! 読書! 最高! 本が大好き!」
第5の魔法少女。谷子の魔法が炸裂する。栞たちの悪い性格が白紙の本に吸い込まれていく。吸い込まれた悪い性格は文字としてページに封印された。
「ここはどこ?」
「栞お姉ちゃん。」
「おお! 私のカワイイ怪獣ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
渋井姉妹は涙を流しながら抱き合った。
「なんだか右の頬が痛いんだけど。」
「気のせいだよ。栞お姉ちゃん。」
もちろん谷子が殴った後である。
「そうだ! 困っている人を助けに行かなくっちゃ! みんな、魔法少女として、困っている人を助けに行くわよ!」
「おお!」
栞たち魔法少女は街に困っている人を助けに行った。
「良かった。優しい栞お姉ちゃんに戻ってくれて。」
ホッとする谷子であった。
「テレビでも見ながら休憩しよう。」
谷子はテレビをつけて休憩する。
「臨時ニュースです。魔法都市渋谷に土星が降ってきました。それを魔法自衛隊が粉砕しようと地上から魔法迎撃ミサイルを発射しました。ゆっくりとお茶も飲めない状況です。おまけにスクランブル交差点でタヌキがポンポコポンと踊っています。」
もちろん犯人は魔法少女たちである。
「見なかったことにしよう。」
谷子は悪いことをするよりは、まだマシと思い目を瞑るのだった。
つづく。




