良いこと、夜空のお星さま1
ここは渋谷のマンション。
「ああああああああ!」
本を読んでいる谷子は何かを見つけた。
「ラブブックの29話に、夜空のお星さま! みいつけた!」
夜空のお星さまとは、谷子が子供の頃に読んでいた大好きな絵本である。
「懐かしいな。こんな所にあったんだ。わ~い。」
ちなみに夜空のお星さまとは、栞が通行人の女の子Bをやっていた頃のお話である。
「今度のほんのおねえさんで放送しなくっちゃ。キャア。」
谷子は大好きな絵本が見つかって、少し興奮気味である。
ここは渋谷のNHKK。たぶんNHKは使ってはいけないらしい。苦肉の策でNHKK。今の時代、地上波に拘らない設定なら、YouTubeeに投稿。ほんのおねえさんチャンネルを持つユーチューバーに設定か。まあ、NHKKオンデマンドで動画も見れると。
「良い子のみんな! ほんのおねえさんの時間だよ!」
谷子の、ほんのおねえさんの収録が始まった。ほんのおねえさんは前髪長過ぎの気持ち悪い谷子が、カワイイ素顔をさらけ出して行う。
「本は大好きかな? うんうん、本はおもしろいよね!」
谷子なのか、本なのか、NHKK教育チャンネルの看板番組にまで上り詰めた、ほんのおねえさん。NHKK1チャンネルのチココちゃんに叱られると肩を並べる人気番組である。
「それでは今日は、夜空のお星さまを読みます。みんなは夜空に願い事をするかな? 良い子のみんなは、温かいお布団で寝ている時間だよね。」
大人も子供もおねえさんも、おじいちゃんとおばあちゃんも良い子と言われたい。悪い子と言われたくないのが人間の本心である。カワイイほんのおねえさんに良い子と言われたい。そんな心理が視聴者に無意識に働いている。
「夜空のお星さまは、良い子のみんなが眠っている時に、夜空のお星さまに願い事をするとお願い事が叶うというお話です。え? なになに? 夜空に願い事をしたけど願い事が叶わなかった? おかしいな。良い子のみんなのお父さんとお母さんもお星さまに願い事をしたから、良い子のみんなが生まれてきたんだよ! 詳しいことは、ほんのおねえさんが終わったら、お父さんとお母さんに聞いてね。では、本を読みますね。」
打ち上げるだけ打ち上げて、スタジオの証明は暗くなり、ほんのおねえさんだけを照らす。視聴者は、本の世界に引き込まれる。谷子の感情のこもった朗読が始まる。
「夜空のお星さま。
夜空に、たくさんのお星さまが、きれいに金色に輝いていました。
ある日、何の個性もない通行人の女の子Bが、流れ星に願い事をしました。
「お星さま! どうか私を、キャラクターにして下さい!」
夜空から金色の光が彗星のように、金色の残像を残しながら通行人の女の子Bの元に舞い降りてきました。
「きれい~♪」
金色の光の正体は、星型に棒がついた杖、スターロッド。通行人の女の子Bは星を自由に操れる、スターロッドを手に入れました。
「キラキラ~♪」
ボタンを押すと金色に光ります。
「わ~い~♪」
通行人の女の子Bは暗い夜道を照らす、懐中電灯を手に入れました。
つづく。」
谷子は夜空のお星さまの朗読を終えた。スタジオの証明が明るくなる。
「良い子のみんな! おもしろかったかな?」
そう、すべての物語は、ここから始まった。すごく短いショートストーリー。字数なんか気にしない。好き勝手書いただけ。書くという行為が楽しい時期だ。短い話の積み重ねが今につながっている。それが全てだ。
「それでは、良い子のみんなで合言葉を言ってお別れするよ! せ~の~、本が大好き! 読書、最高だね! またね~!」
こうして、ほんのおねえさんの収録は終わった。過去の作品を読んでいると、現在の1話1500字縛りとかで調整して書いているのが、汚れて思える。いっそうのこと、1話100文字で1日10投稿位しようか。良い子失格だ。
つづく。




