朝食
ここは渋谷警察署の留置所。
「紅茶のおかわりいただけます。」
濡れ衣で捕まった魔法少女ティファニーが朝食を食べている。
「あのね。ここは警察署ですよ。無理です。」
警察官は抵抗する。
「ルピシアの紅茶が飲みたい! ルイボスか、アッサムか、カモミールティーにして! ティファ・ティファ・ティファニー!」
魔法があれば何でもできる。
「どうぞ。温かいお紅茶です。」
警察官は魔法で操られ、新しい紅茶を持ってきた。
「どうも、ありがとう。」
ティファニーはどこにいても優雅な朝食をとる。
「あのティファニー様、そろそろお昼の時間なんですが?」
こちら魔法少女ティファニーの使い魔兼家族の女の子が現れた。
「いきなり壁をすり抜けて現れないでくれる? おみっちゃん、あなたでも私の朝食を邪魔することは許さないわよ?」
「ごめんなさい! 許してください! ティファニー様!」
魔法少女ティファニーの家族。幽霊のおみっちゃん。幽霊だけ壁もすり抜けるし足は無い。
「まあ、いいわ。その代わり明日の朝食はウエッジウッドのラベンダーティーにしてちょうだい。」
「はい。かしこまりました。」
こうして魔法少女ティファニーは朝食を無事に終えた。
「ティファニー様、一つ質問していいですか?」
「なに? おみっちゃん。」
「他の魔法少女は、犬、猫、雀、カラス、フクロウじゃないですか。どうしてティファニー様は、幽霊の私を家族に選んだんですか?」
幽霊の素朴な疑問である。
「ティファニーといえば、永遠の愛! 生きる時も、死してもなお二人は永遠の愛を誓いあう! ああー! なんて素晴らしいのかしら! だから、幽霊のおみっちゃんを私は選んだのよ。幽霊からも選ばれるティファニー! 素晴らしいブランドイメージだわ。」
ティファニーはエルメスのケーリーやバーキンのような種類で名前があるというよりは、リングとかブレスレットのように商品に名前があるって感じ。
「どこまでも憑いて行きます! ティファニー様!」
こうして警察署を正面玄関から出て行く魔法少女と幽霊。
「コン。」
「あ! コンコン。私たちを待っていてくれたのね。ありがとう。」
妖怪の妖狐の子供。おみっちゃんのペットである。昔、山で傷ついているところを助けてからの長い付き合いである。
「これで私の家族は全員集合ね。うちに帰るわよ。」
「ティファニー様、我々のお家はどこですか?」
「コン。」
「え!? そんな細かい設定を聞くの!? 聞いちゃうの!?」
困るティファニー。この物語は完成形ではなく構想を練りながら作られているので、ティファニーの住所は未定であった。
「そうね。渋谷区といえば、松濤だけど大家さんのおばあちゃんの松トウさんが使ってる。神山も恐らく神山夫人で使用済み。代官山は代官・山男で谷子9才の恋愛の失恋相手。残るリッチエリアは、広尾か恵比寿だけね。あ、表参道も神宮前だから渋谷区ね。」
「ティファニー様、青山霊園にしましょうよ。幽霊・妖怪総動員でティファニー様を応援しますよ。」
「コン。」
「残念でした。青山霊園は港区なのよね。」
「ええー!? そうだったんですか。ガッカリ。」
「コンコン。」
幽霊でも落ち込むことはある。落ち込んだおみっちゃんを励ます妖怪のコンコン。
「電車やバス通学は嫌だから、表参道に住所を探しましょう。不動産屋に行くわよ。」
「おお!」
「コン!」
1人1幽霊1妖怪は表参道の不動産屋を目指した。
つづく。




