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昔のコンセプト

 ここは渋谷のマンション。

「おお! 我が麗しの妹! 怪獣ちゃん!」

 過去の世界から戻って来た魔法少女エルメスは谷子の姉、渋井栞になっている。

「栞お姉ちゃん!」

 谷子と栞は抱き合って喜ぶ仲良し姉妹であった。

「お姉ちゃん、見て見て。私の昔のコンセプトを見つけたよ。」

「どれどれ。」

 栞は谷子の出した紙を覗き込み読んだ。

「世の中にはテレビやスマホなどの娯楽が溢れて、娯楽は多様化している。昔みたいに、本が売れない時代、読書離れの現代に、救世主が現れた。奇跡の語り手、ストーリーテラー 渋井谷子。彼女が本を紹介すると売れる。彼女が本を読み聞かせると売れる。彼女が本にポップをつけると売れる。彼女は本が大好きな女の子。もちろん、趣味は読書。本に対する愛情は、まさに愛!? 1億冊の本を完読して得た知識と、女子高生の未経験の現実との狭間を描く物語。か~ん。」

 栞は谷子の昔のコンセプトを読んだ。

「さすが怪獣ちゃん! 昔から素敵な設定だったのね。」

「ありがとう。エヘッ。」

 感激する姉に感謝する谷子。

「でも、ほんのおねえさんの座を獲得した怪獣ちゃんには、そんなに関係ないわよね。」

 谷子は、ほんのおねえさん大会で優勝して、テレビ番組のほんのおねえさんとしてレギュラー番組を持っている。谷子が本を読み聞かせする恐ろしい番組である。

「そうだね。でも本が好き。やっぱり私は本が好き。」

 本を書くということで、コンセプトは本について。谷子の誕生は、本業界にゴマを擦った所から生み出された。

「怪獣ちゃんは、ゲームはするの?」

「しないよ。昔はマイナンバーアプリのゲームをしてたけど。」

「マイナンバーアプリって、今の時代には無くなってるの!?」

 9才の谷子の世界ではあったマイナンバーアプリは、16才の谷子の世界では滅んで歴史から姿を消していた。

「だからゲームはしないよ。せいぜいゲームの攻略本とか、ゲームのイラスト集とかを読むぐらいかな?」

 16才の谷子の選択肢は本一択である。

「そうよね。怪獣ちゃんは本しか興味がないものね。」

 栞は本が好きな谷子しか知らない。

「だって本はみんなを笑顔にしてくれるんだもん。本を読めば心を豊かにしてくれるんだよ。本は勇気をくれるんだ。だから私は本が大好き。」

 谷子の本に対する愛が炸裂する。

「そうだ!? 怪獣ちゃんは9才の小学生の時、とても明るい活発な笑顔のかわいい女の子だったでしょ。どうして16才の怪獣ちゃんは、本以外のことは、どうしてこんなに控えめな性格になったの?」

 栞は谷子の核心に触れる。いったい小学生の谷子に何があったのか?

「失恋。」

「し、し、失恋!?」

 日常の物語を書き続けるということは、当然、谷子の学校の友達も現れる。きっと谷子は同じ学校の男の子に失恋したと栞は思った。

「許せん!」

 栞は激怒した。

「私の怪獣ちゃんに手を出すなんて、許せない!」

 谷子がフラれたことよりも、その前の段階、谷子に男が近づいたことが許せなかった。

「過去に行って、人類皆殺しゲームの開始よ! エル・エル・エルメス!」

 栞は次元の扉を出して飛び込んで消えていった。

「まったく忙しいお姉ちゃんだ。」

 谷子は寝転がりながら本をクルクル読んでいた。


つづく。

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