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閑話ー父と母ー

「そう……」


 そう言ったきりソフィアはベッドの上で身動きもせず、押し黙ってしまった。

 窓の外に目を向け、どこを見るでもなく遠くを見ている瑠璃色の目。窓から差し込む光に薄い銀色の髪がキラキラと輝いて見える。年を重ねても尚、まるで妖精のように美しい妻。


 ――この妻に望まれた時は天にも昇る心地と共に、現状に絶望しかけたこともある

 ――だが、妻を手に入れるために私はどんな努力でもした

 ――いや 今でも努力し続けていると思う

 ――最愛の妻が手から零れ落ちない様に…


「あの子は、君にそっくりだよ」


 寂しそうな横顔にふと声をかけてしまった。弾かれたように振り向いた妻の顔は、優しく笑っていた。


 ――妖精のような見た目に反して、現実を見据える力を持ち、

 ――信じた道を突き進む強さを持っている

 ――本当に、リーナはソフィーによく似たものだ…特に内面が


 ベッドの上から白く細い腕がパタパタと私を呼ぶ。愛しの妻の微笑と白い腕に呼ばれ、簡単に引き寄せられた私はその傍らに座った。ベッドのスプリングがギシリと 音を立て己の肩に妻の頭が倒れてくる。


「あなたとの娘ですものっ」


 倒れかかってきたままの銀色の頭を、肩から回した手で撫でた。


「では、私にも少しは似ているのかな? 」

「そうね…あなたの行動力はそのままセリーナへと受け継がれていると思うわ」


「いいや、あの子の行動力は君譲りだろう? 」

「そうかしら…? 」


「そうだよ。笑顔の可愛らしさも、ものを捉える聡明さも、自分の頭で考えられる賢さも、人を大切にする優しさも、あの子は君によく似ている」

「それは、困ったわっ」


「なぜだい? 私はうれしいがね」

「私に似すぎていたら……」


「ガーランドの呪いかい?」

「フフッ 違うわよっ リーナはそんな呪いに負けないわっ ただ、貴方を盗られちゃうかなって…フフッ」


 フフフッと、 花が咲くようにソフィアは笑う。その頭を優しく撫でながら、バーナードもクツクツと笑った。めったに見せない優しい顔で。


「君に、会いたがっていたよ」


「……私だって、会いたいわっ それに、力一杯抱き締めてあげたいわっ」

「何あと2年もすれば堂々と会うことができるさ」


「だと、いいのだけれど……なんだかあっという間にお嫁さんに行っちゃいそうで……ふぅ」

「っ!! そうならない為だろう? こうすれば、リーナに呪いは効かないって君も言ったばかりじゃないかっ」


 急に声を荒げたバーナードの空を写し取った様な碧眼に、ソフィアのおかしそうに笑う姿が映る。


「だって……あっという間に、好きな人と結ばれてしまうかもしれないわよ?」

「……早いだろう、いくら何でもっ」


 節くれだった大きな手で自身の金髪をガリガリと掻き回すと、バーナードはすがる様にソフィアの肩を引き寄せた。ソフィアは抗う事なくバーナードの肩に銀色の頭を乗せ、楽しそうに笑う。


「あら、わたしはリーナの年にはあなたの子を身篭っていたけれど?」

「そっそれは君と、リーベルがっ」


 慌てだす昔とちっとも変わらない年上の夫に、ソフィアは嬉しそうにほほ笑んだ。


「いいじゃない そのおかげで、かけがえの無いものを得たのよ 私たちはっ」

「……そうだな」


「ねぇ、」

「なんだい? 」


 窓から入ってくる優しい風が、飾りもなく背に逃されている銀色の髪をふわりと揺らす。浮いた髪を押さえながら、思いついた様にソフィアが目を細めてバーナードを見た。


「いい天気ねっ」

「……少し、外に出ようか?」


 頷くとともに、心得ているとばかりにバーナードが、ソフィアの細く軽い体をフワリと抱え上げた。首に細く白い腕が回されると、片腕でソフィアの身体を支えながらバーナードは庭へと続くドアを押し開けた。腕の中で楽しそうな声があがると、バーナードはしっかりと優しく愛する妻を抱きしめながら歩く。


「ねぇ、バーナード。わたしを諦めないでくれてありがとうっ」

「…君も、私を諦めないでくれて、その上、大切な家族を、ありがとう」


 バーナードの首にまわっている白い手に力が入る。それに応える様にバーナードは銀色の髪に頬擦りした。


「リーナは大丈夫よっ 強い味方も付いてるし、あの子は運がいいものっ 良き人を惹きつけるわ」

「確かにリーナは強くなったな」


「そう ヒューイも立派な大人になっているしね バーナードも負けないように頑張らないとねっ」

「まだまだ負けないつもりだが……確かに、私たちの子はいい子に育っているね」


 ムムッとほんの少し眉間に皺を寄せたバーナード。ソフィアはその様子を気にすることなく微笑んでいる。


「ヒューイも、リーナも健康に育ってくれて、嬉しいわ」

「そうだなっ」


愛しい妻の穏やかな微笑みに、バーナードも顔の力を抜いて微笑んだ。


「……うちの子供達は、2人とも優秀すぎて私もうかうかしてられないな」


2人は寄り添い合ったまま、当たり前のように静かに語り合っている。これがいつもの光景なのだろう。


「リーナの産む子供も、かわいいでしょうねっ」


「だから、まだ早いってっ!!!!」



セリーナ(セレナ)のパパママのお話でした。


パパとママのお話も、いつかかけたらいいなぁって思ってます。


そろそろ、次章に移りたいと思ってます。よろしくです。

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