第五話 保健の先生 オウカ・フェニックス 登場!?
「んっ。んん?なっなにをしてるんですか?てか誰ですか?。」
目を覚ますといきなり目の前に大胆な恰好の白衣を羽織った女性が現れ終一は戸惑いを露わにしていた。
「うちのこと?うちは保健の先生のオウカ・フェニックスよ。」
きゃぴっでも言いそうなウインクをして頬に人差し指つけてポーズを取るオウカ。
終一はそのポーズに固まってしまっていた。
「えっ。うちなにかしたかなぁ?」
あまりに先生とかけ離れた態度に終一は戸惑いながら、オウカのがオロオロし始めたので終一は答える。
「いえ、先生という感じがしなかったのでつい。」
苦笑いをしている終一、オウカがそれを苦笑いとは解釈せず明るく返事をする。
「それはよかった~。終一君はまだ体が万全じゃないからもう少し安静にね。」
終一自身も体の異変に気付きオウカの言う通りに安静にしている。
「オウカ先生はずっと俺の看病をしてくれてたんですか?」
「う~ん。まぁそんなとこかな。」
そこから他愛もない会話をしている終一とオウカ。
すると終一が真剣な口調でオウカに問う。
「先生、俺の体に何が起きたんですか?」
それは終一の身体にどのような魔力反応が出たのかを確かめるかの質問であった。
「終一君は魔力痕という魔力による傷が体のあちこちに出来ています。
その魔力痕が原因で著しく体力が低下し魔力のコントロールも乱れています。
そのため完全に治るまでは魔力を使うことを禁止します。
そうしなければ終一君の身体がどうなるかは保障できませんので。」
真面目な口調でオウカが終一に警告も兼ねて説明をする。
「そんなに酷いんですか。あ、先生は俺と学院長の手合わせのこと聞いてますか?」
ふと思い出したようにオウカに終一は聞く。
「手合わせをしたことは聞いてるけど内容までは聞いてないなぁ~。」
オウカは自分の知っていること率直に終一に伝える。
「そう・・・ですか。答えてくれてありがとうございます。」
少し残念そうに返事をする終一。
それもそのはず、終一は学院長に魔力球を受けてからの記憶が残っていない。
その部分を学院長からオウカは聞いているかもしれないと思い聞いてみた終一であったが、
オウカ自身もそのことは学院長から聞かされていないので答えようがなかった。
終一は自分の身体にどことなく違和感を感じていた。
身体の傷からではなく心の奥から終一を呼ぶような声が聞こえる感じがしていたのだ。
「先生、俺はあとどれくらいで治りますか?」
「うーん、二、三日ってとこかしらね。」
終一の問いにオウカはさらっと答えた。
「わかりました。では今日はこの辺で失礼させていただきます。」
そう告げ終一はベッドから起き上がり、保健室から寮へと帰ろうとした。
「えっ、ちょっと待って。もう体動かせれるの!?」
慌ててオウカは終一と止め身体の様子を確かめる。
「休んだので大分動けれるようになりました。まぁあちこち筋肉痛みたいに痛いですけど。」
軽く笑って見せた終一だが、それ以上にオウカは驚きを隠せていない。
(あり得ないわ。あれだけの魔力痕があったにも関わらず数時間で動けるまで回復するなんて。
人間はおろかアクマにもこんな回復力持つ者なんて聞いたことがない。)
フェニックスという最高位の治療術者の肩書きを持つオウカですら信じがたい回復力にただただ驚くばかりだ。
一応終一の身体を調べて日常に支障がないかを判断するオウカ。
「診たところ確かに日常では問題ないほど回復しているわ。ただし、それはあくまで日常レベルの話。
無茶な運動とかは厳禁よ。それが約束できるなら帰っていいわ。」
「今日は帰って寝ることしかできませんよ。」
終一はほんとにそれ以上はできないという顔でオウカの方を見る。
少しおぼつかない足取りで保健室を後にする終一。
オウカは終一が保健室を出て、辺りからいなくなったの確認すると、
「はあぁ~。なんて可愛らしい男の子なのかしら。
うちの姿見て戸惑いが隠しきれへん辺りとか最高やん。またイジメてみたいなぁ~。」
オウカにとって終一の初心な反応はとても愛らしく苛めて楽しい相手となった。
これからオウカは終一に対して様々な小悪魔的行動を起こし、終一を悩ませることとなる。
帰り道の終一は力なく校門前を歩いているときに、
「終一く~ん。待ってぇ~。」
遠くから終一を呼ぶ声が聞こえる。
その声に振り向くと、後ろの方から終一をら追いかけて来るアリスの姿が見えた。
アリスが近に来るまで終一は歩みを止めていた。
そしてアリスが息を切らしながらと終一の前に来ると、
「アリスか。どうしたんだそんなに慌てて。」
走って来た理由が分からないと終一が尋ねる。
「はぁっはぁっはぁっ・・・・すぅーはぁー。終一くんと一緒に帰ろうと思って。やっと追いついた。」
息を整えてからアリスはこれでもかと言わんばかりの笑顔を終一に向けた。
女の子に耐性がない終一は一瞬固まるが、
アリスの言ったことを理解して少し間の抜けた返事をしてしまう。
「?・・・・!?・・あっあぁ。お、俺で良ければ。」
声が上ずり恥ずかしくなるほど顔がみるみる赤くなる。
そんな終一に思わず吹き出して笑ってしまうアリス。
「ぷっ。あははっ。なんか緊張してた私がバカみたい。」
笑い泣きしてお腹を抱え、アリスは笑っていた。
その笑顔はあまりに無邪気で今まで教室で見た彼女とは別の顔と言っていいほど頬が緩んでいる。
「さすがに笑いすぎ。」
終一は思わず軽いチョップをアリスの頭の上にかましていた。
「いたっ!ちょっと終一くん!女の子の頭に何してくれるの!?」
そう怒ってはいるもののアリスはほっぺを膨らますだけなので余計に可愛く見える。
終一もその顔に笑ってしまう。
「あっはっはっは。アリスの怒り顔はそんなにかわいいのな。」
終一も笑い泣きをしてポロっとそんな言葉を言ってしまう。
アリスは終一の発した言葉を聞くや否や頬を真っ赤にしてしまう。
「そ、それはあ・・・ありがと・・・ね・・・。」
「おう・・・。じゃあ帰るか?」
「うん・・・。」
その会話を境に二人して無言のまま寮の前まで歩いてしまっていた。
「俺はこっちだから。」
そう告げアリスの方を見る終一。
「私はこっちだから。」
アリスも同じ言葉で終一を見る。
「えっと今日はありがとうな。また明日学校で。」
「こちらこそ。また明日ね。」
そう二人して手を振り左右に分かれて男子寮、女子寮に入っていった。
「俺の部屋はっと。五階の五〇一号室か。エレベーターで上に上がるか。」
そう一人で呟きながらエレベーターへと入っていく。
もう夕方近くなので寮の学生達は自分の部屋へと帰っている時間なので、
誰とも会わずに終一は自分の部屋の前までたどり着く。
「よしっと。ドアノブの所に手を当てるんだっけかな。」
寮のセキュリティは指紋認証のため各部屋のドアノブ下に手を広げて触れるスぺースがある。
そこに終一は手を当ててみる。すると、
「ピー。ニンショウカクニンシマシタ。モガミシュウイチサマ、ドウゾ。」
機械音みたいに話し、終一と確認してドアを開いた。
その中のようすを見た終一が、
「えっ・・・・・・・・まじ?」
本当か疑うほどに豪勢な部屋が用意されていたのだ。
大人三人ほどが余裕で寝て過ごせる広いリビング、
キッチンはオープンキッチンで冷蔵庫も大きい物が設置してある。
リビングにはでかでかと革製のソファが置いてあり、四人用のダイニングテーブルもある。
他にはお風呂、トイレの他に部屋が三つもありどれも学生一人暮らしが出来るくらいの広さがあった。
そんなところに一人住む終一とって手の余る空間が山ほどできるのは想像に難くない。
終一一人ならリビングだけで生活が出来てしまうほどだ。
「まあ、とりあえず着替えてくるか。」
そう言い、リビング奥に置いてある終一が送ってもらったダンボールを開ける。
その中からジャージを取り出し着替え終わるとリビングのソファにダイブした。
「今日は色々あったな~。結構疲れたし。」
そう今日の出来事を振り返っていると自然と瞼が重くなり、気付いたら終一は寝てしまっていた。