二十六話 副学院長はメイドさん!?
終一が驚いたのは副学院長そのものと格好であった。
仮にもこの学院にトップツーとでもある方が、メイド服を着ているなんて想像できるはずもない。
終一が呆気にとられている中、学院長が副学院長の紹介をしようとする。
「終一君は初めてじゃよな?隣におるのが副学院長の・・。」
「初めまして。副学院長のルルカ・ツリードです。」
終一に対してウインクをしながら学院長を押し退けてルルカは自分で話す。
「あ、はぁ、よろしくお願いします。」
終一はルルカに圧倒されている。
「こほん。ルルカ君は貴重な木の魔術を使えるアクマなんじゃ。それに学院の経営も任せておってとても優秀なんじゃ。」
「私褒められた?褒められた?学院長に褒められちゃった〜。」
ルルカは踊りながら学院長や終一に褒められたことを確認する。
終一は今まで一番強烈なキャラだと思っていた。
ルルカは未だ自分の世界で酔っている。
「学院長。僕はなぜ呼び出されたんですか?」
終一は学院長にぼそぼそっと聞く。
「それなんじゃが、君の中のアクマが魔術消失を使ったとメリー君から聞いてな。それを確かめるために呼び出したんじゃ。」
学院長もぼそぼそっと答えた。
二人が話している間もルルカは自分の世界で一人盛り上がっている。
「どうやって確かめるんです?」
「そのためのルルカ君じゃ。」
終一は学院長の言葉に不安しかなかった。
「ルルカ君は木の魔術じゃと言ったじゃろ。
その魔術なら終一君の中のアクマのことがある程度分かるじゃよ。」
終一はその言葉に反応して思ったよりも大きい声で話してしまう。
「本当ですか!?」
その言葉でルルカは正気に戻っていた。
それを見て学院長がルルカに言う。
「ルルカ君。君の出番じゃ。」
ルルカは学院長の言葉で雰囲気がガラリと変わり先程までのおちゃらけていたものとは全く違う張り詰めた表情になる。
「では終一君。私に背中を向けてください。」
「わかりました。」
終一がルルカに背中を向け、ルルカは終一の背中に手を当て魔術を発動させる。
しばらくしてルルカは言う。
「これは確かに魔術消失を使ったと言われても不思議ではないですね。それどころか今まで魔力破壊しかしていないことのが不思議に思えるほど高度な魔術技術を持つアクマですね。」
さして学院長は驚きもせずに一言だけ、
「・・・そうか。」
っと言った。
その態度は学院長が終一の中のアクマに見当がつき始めたものによるものだった。
(しかしなぜ彼が終一君の中にいるのじゃ?
他にも方法ならあったはずじゃが。)
学院長は一人考えにふけっていた。
その間は終一がルルカに質問をしていた。
「ルルカ先生。今の話は本当なんですか?」
「本当よ。あなたの中のアクマは相当腕を持つアクマだわ。だけどそんな彼がどうしてあなたの中にいるのかは不可解だけど。」
実力のあるアクマが人間の中に入るなんてことは普通ではあり得ないことだ。
そのためルルカには疑問が残っていた。
「それでも僕は中のアクマの事が少しでも分かっただけで十分です。」
終一は中のアクマが魔術技術の高い者だと言われ妙に納得してしまっていた。
でなければメリーに勝つ事さえ難しかったはずだからだ。
「でもなぜ他の魔術を使わないんでしょうか?」
終一はもっともな疑問をルルカにした。
魔術技術が高いと言うことは他の魔術も使えると言うことだ。
自分の最も得意な系統の魔術以外に二〜三つほど別系統の魔術が扱える者を魔術技術が高いと評価するからだ。
「それなんだけど、使わないのか使えないのかは現時点でははっきりしないのよね。」
ルルカは歯切れが悪く答えた。
「どういうことですか?」
終一は訳が分からずルルカに聞いた。
「あなたの中のアクマは確かに魔術技術が高いの。
けど、稀に他系統が使えなくて一系統だけ特に優れた者も魔術技術が高いと評価できるのよ。
特に彼の魔術は魔力破壊や魔術消失などの無系統魔術だから一系統だけってことも捨てきれないのよ。」
終一の中のアクマは無系統の魔術を使っており、この魔術を使える者は現在存在していない。
過去に存在していたが、そのほとんどが無系統魔術しか扱えなかったと記録されている。
ごく少数だが、他系統の魔術を扱える者もいた。
が、その全てが全系統を扱えていたのだ。
この事を終一に話していいものかルルカは少し悩んでいた。
全系統の魔術を使える者が出てきたのであれば、学院はおろか、魔界全てに激震が走ってしまう。
そしてあらゆる手を使って終一をものにして過去に起こった魔術大戦が始まってしまう可能性までルルカはあると考えていたからだ。
(まぁ、魔術大戦までは可能性は低いにしても終一君に危険が増えるのだからかじった程度に教えておきましょうかね。)
ルルカは考え終一に全系統使えるのではなく、あくまで他系統が使えるかもと教えた。
「それでも無系統の魔術が使えるだけでも凄いことなので高望みしちゃいけませんよね。それに僕の魔術もまだ分かっていませんから。」
終一はちょっと残念に思ったがそもそも中のアクマはあまり友好的ではないので魔術を見せてもらうこと自体無理な話だと自分で区切りをつけた。
「あ、それとあなたの魔術なんだけど、無系統のアクマがなかにいるから自然と無系統の魔術になってるわ。」
ルルカは終一が悩んでいたことを軽く答えてしまった。
それに終一は驚きを隠せずに、
「なんだってー!!」
と、大きな声で叫んでしまった。
「あれ?そうゆうことは習ってなかった。」
ルルカはまずいと思い、引きつった笑顔で終一に話す。
「習ってませんよ!てかそんな大事なことさらっと言わないでください!僕がどれだけ自分の魔術がなんだと考えて悩んだと思ってるんですか!!」
驚きと怒りと嬉しさが入り混じりもうどういう顔をしているか分からないほど終一の顔は複雑になっていた。
その勢いに完全に負けているルルカ。
しかしそれを見て見ぬ振りをする学院長だった。
学院長も気づいていたが話さないでいたということにルルカは今になって気付く。
「ルルカ先生。僕は魔力破壊とかしかできないんですか?」
半泣きの終一からそんな言葉が出たのでルルカはよしっと心の中で思った。
「それは違うわ。あなたは確かに無系統魔術を使うことになるわ。けど、無系統魔術にも色々あってね、あなたの中のアクマのように魔力破壊や魔術消失など直接魔力に働きかける魔力操作魔術や身体能力や五感を増幅させる向上魔術、時を司る時空魔術など、無系統の魔術でも多種多様な魔術があるの。無系統と大きくくくってはいるけど、アクマによってその性質は大きく異なるの。だからあなたとあなたの中のアクマが必ず同じ魔術を使うかというとそうではないの。」
ルルカは無系統の魔術について終一に話し、無系統でも色々な魔術があるということを理解させた。
「そうだったんですか。早とちりしてすいませんでした。僕がどんな無系統魔術を使えるかどうしたら分かるんですか?」
終一は早く自分の魔術が何かを知りたくルルカに尋ねる。
「それは無系統魔術を使ってみるのが早いわ。
自分に合った魔術ならなんらかの現象や実際にその魔術が使えたりするわ。逆に合わない魔術はどうやっても使えないから何も起こらないわ。」
「わかりました。早速帰って分かる限りの無系統魔術を試してみたいと思います。それでは失礼します。」
ルルカに聞くや否や終一はすぐ自分の部屋へと走り出していった。
「学院長、いえルシファーそれともサタンとお呼びしたらいいですか?」
終一がいなくなったのを確認してルルカは試すような笑みで学院長に聞く。
「やめんか。いうならルシファーと呼べ。」
鋭い眼光でルルカを睨むルシファー。
「はいはーい。ではルシファー様は気づいてたのかしら?」
ルルカはくすっと笑ってから終一の事をルシファーに聞く。
「・・・今話すべきではないと思っとった。」
険しい顔をしながらルシファーは答えた。
「やっぱり知ってたんじゃないですか。
いけない学・院・長っ。」
可愛らしくウインクしながらルルカは言った。
そしてここから終一の魔術は加速的に上達していくことになる。




