二十五話 終一争奪戦勃発!?
「ねぇ終一くん。さっきの人は誰なの?」
昼食も終わりひと段落したところで終一にリッカが質問した。
「さっきのは先輩だよ。成り行きで俺があの人の研究の助手をやることになったんだ。」
終一の言葉に嘘はなかった。
巻き込まれた形だがシャーロットに付き合わされているのは事実だからだ。
「ふーん。先輩さんのお名前は?」
リッカは少し興味を持ち名前を聞くことにした。
「確か・・・シャ、シャー、シャーロットなんとかだったかな。」
終一はそういえば名前をきちんと覚えてないなっと思って微かな記憶にあったシャーロットという名前を口に出した。
その途端リッカはおろか他の人達も驚きを隠さないでいた。
「シャーロット先輩ってまさかシャーロット・ヴァンロード先輩!?」
声を荒げるリッカに終一は状況が読み込めない。
「あ、あぁそんな名前だったよ。」
終一以外のみんなはざわめく。
「シャーロット先輩って言ったら助手を取らないで有名だけど表舞台に出てこないから顔がわからないって専らの噂だよ!」
リッカが興奮しながら終一に話す。
その姿に若干引きながら終一はどうどうっとリッカをなだめる。
「終一くんがシャーロット先輩と知り合いなんてびっくりだよ。」
今度はアリスが話しかけて来た。
それもそのはずシャーロットは助手は取らないで終わらず友達や知り合いになることも用意ではない存在になっていたからだ。
普段は気品溢れる佇まいで誰も寄せ付けないオーラを発していてそれだけで話しかけるのも難易度が高くなっている。
終一はそんなこととは関係なく接点を持ってしまったのだがそれをみんなが知ることは少し後だった。
「成り行きというか、偶然というかそんな感じでだな。」
終一はたまたまだと言い張ろうとするが、新入生であるアリス達でも知っている噂がたまたまだと言って軽く飛び越える終一のことをあまり納得できないでいた。
「ちょっとこっちに集合ー!」
リッカが女子だけを集めてヒソヒソ話を始める。
「さっきのシャーロット先輩の反応からして終一くん狙いだと思う?」
明らかに嫉妬をしていたシャーロットのことをそう思うリッカ達。
「確かにそう考えればああなるのも納得だよね。」
マイカかさっきのことを思い出してリッカに同意した。
「まぁ私には関係ないわ。」
リリアは素知らぬ顔をしていた。
「ま、まさか、そんなことが!?」
セラフィスはこういう恋愛話は苦手で話を聞いただけで不埒だと思っている。
「セラフィスさんはそうなっちゃうよね。」
セラフィスの赤い顔を見てアリスが困った笑顔でそう言った。
アリスがなだめている間に話は進み、打倒シャーロットを掲げることをこの場の六人一致の意見ということになっていた。
アリスとセラフィスは置いていかれているが、他の四人はシャーロットと終一の仲を進めないことを決めた。
「第一回終一くん争奪戦作戦会議終了〜。」
リッカがそう言って議題が終わった。
イクタと終一は女子達の話が終わるまでそのまま待っていた。
「さぁそろそろ帰ろうか。」
リッカが一目散に終一の腕に飛び込み帰ることを提案した。
それはシャーロットとこの後に会わせないようにするためだった。
「ちょっ、なんなんだよ?」
終一はそれに驚き戸惑っている。
リッカが抱き着くと続いてなんとアリスが抱きついてきた。
「えい。」
アリスも大胆な行動をしたことを自覚しており少し恥ずかしさで顔が熱くなる。
「アリスまでなんなんだよ。」
終一は困り果てていた。
だが、終一はこの素晴らしい感触を堪能しようと即座に切り替えていた。
アリスは言わずもがなだが、リッカはリッカで気持ち良いな、などと終一は思っていた。
そんな帰り道でまさかまた彼女に出会うことになるとは知らずに。
そのまま八人は寮に向かって歩いていた。
程なく寮の前まで着いた。
そこには一人の人影が見えた。
「「先生!?」」
そうメリーだった。
終一達はメリーがなぜ寮の前で立っているのか分からなかった。
しかもメリーは彼等を待っていたようでまっすぐ前を向いていた。
「終一君。ちょっと学院長からお話があるのでついてきて頂けますか?」
メリーは眼鏡をくいっと持ち上げて終一にそう告げる。
「今からですか?」
「そうです。」
終一の問いにも即座にメリーは答え、終一は肩を落としながらついていくことを決める。
「じゃぁみんな悪いな。また明日学院で。」
アリスとリッカと離れてみんなに言う終一。
その言葉を聞いてみんなそれぞれ自分の部屋へと向かっていった。
「また明日な、終一。」
「じゃ、終一君またねー。」
「終一君、また明日学院で。」
イクタ、リッカ、アリスが終一に言って他の者たちは軽く手を振って別れを告げた。
「それではついてきてください。」
メリーはそれだけを言うと学院の方へと向かっていった。
終一も今来た道を戻るようにメリーの後をついていく。
しばらくして誰もいない一室に辿り着く。
「メリー先生、ここは?」
終一は疑問と警戒を込めて聞く。
「安心してください。と言っても警戒しますよね。
私に敵対する意思はありません。今から学院長と副学院長に会ってもらいます。」
メリーは終一に背を向けたまま答える。
それを聞いた終一は副学院長?っと頭をかしげた。
「ですがまだ少し二人が来るまで時間があります。
なので、終一君あなたに質問があります。
先程の試験で行った魔術、あれは魔力破壊ではありませんね?」
メリーはくるりと終一に向き確信に近い問いを投げかける。
終一は中のアクマに小声で確認を取る。
「お前が使った魔術、魔力破壊じゃなかったのか?」
「ゲンミツニイエバ、チガウガカギリナクソレニチカイマジュツダッタゾ。」
「じゃぁなんの魔術使ったんだよ。」
「ソレハ・・・。」
一人で話している終一を不審に思い、メリーは自分の考えを告げる。
「あれは魔術消失、即ち失われし魔術ロストでは?」
終一はきょとんとしている。
メリーは気づかれて戸惑っているのだと思い続ける。
「あの時の魔術は跡形もなく消されていました。
魔力破壊であれば、魔術の破片とでも言えるものが分散し何らかの作用が起こっていたはず。それがなくボールの勢いすらも殺したあの魔術は魔術消失以外では説明がつきません。違いますか?」
キリッと終一を見てメリーは問いただす。
「メリー先生が言ってることは本当か?」
終一は中のアクマに答えを聞く。
「・・・・ホントウダ。」
アクマは素直に認めた。
「ふう。さすがメリー先生ですね。」
終一はあたかも自分やったことのように演技をした。
「ではやはりあれは。」
「そう魔術消失ですよ。」
さっき知ったばかりだけどな、などと終一は心の中で毒づいていた。
「そうですか。それで納得がいきました。魔力破壊だけでなく魔術消失まで行えるのであればこの学院で相手できる者は限られてくるでしょう。
ですがそれに胡座をかいて私以外に負けるようなことがあれば許しませんから。」
それだけ言うとメリーはそそくさと部屋から出て行こうとした。
「負けたこと根に持ってるな〜。」
メリーが部屋を出てから終一はぼそりと言った。
少ししてから学院長と副学院長が終一のいる部屋へと入っていった。
「終一君すまんのぅ。こやつが来るのに時間がかかって遅くなってしまったわ。」
気さくに話しかける学院長。
その後ろに付いてきた副学院長。
入ってきた副学院長の姿に終一は驚愕した。




