二十三話 波乱の実技試験終了!?
そして先にイクタの番になる。
あんなに実技で、と息巻いていたイクタもメリーの実力に生唾を飲んでいた。
終一は一言だけ。
「死ぬなよ。」
とイクタに話した。
イクタは終一にガッツポーズだけしてメリーの前に立った。
「イクタ・ルーカス、準備はいいですか?」
「はい。」
メリーはイクタの準備が整ったのを確認して魔力を込め始める。
「すーふー。」
深呼吸を一つしてイクタも魔力を込め始めた。
だが、イクタは手に魔力を込めずに全身に魔力をオーラのように溜め始めたのだ。
「あいつ何やってんだ?全身に魔力なんて意味ないだろう。」
「頭悪いんじゃね?」
周りがイクタを馬鹿に始めた。
終一は少しムッとしたがイクタには何か考えがあるはずだ、と信じて見守っている。
「なるほど、実力はあるようですね。」
メリーがまたぼそりと独り言を言った。
それもそのはず、アリスを含め全員が手にだけ魔力を集め魔力を相殺する事だけを考えていた。
だが、それが出来るのはアリスほどの才能があってこそ。
一般のアクマにとっての正解はイクタだった。
全身に魔力を溜めオーラ状に纏い身体能力を数倍にも高め、真正面からボールをそのまま受け止めるそれこそが一成功率の高い手段だった。
だが、イクタ以外のほとんどのアクマは同じ事だろうと言っているが難易度で言えばイクタのが数段難しい。
手にだけ集める魔力と違って全身に魔力を纏いながら動くことは常に同じ分量を全身に送り続けると言うこと。
それは熟練のアクマでも半数が出来ない繊細な魔力コントロールが要求される。
それを平然とやってみせるイクタはやはり只者ではないことを表す。
メリーは彼の実力を聞かされており、さして驚きはしなかった。
「では行きますよ。」
メリーはイクタに向かってボールを投げつけた。
その威力は他の目には分からないが、アリスには劣りさえすれ他のアクマの比ではなかった。
それをイクタはドッジボールのキャッチのように胸で抱き抱えるように受け止めた。
そのまま数メートルは引きずられながらも受け止めた形のまま勢いを殺し立っていた。
「ってー。結構ボール思いじゃん。力加減間違えたよ。」
イクタはそんなことを言っていた。
その様子からまだ上があると感じさせずにはいられないが、周りはそこに目が行かずイクタが受け止めたことに唖然としている。
「さすが先生。いいボールだったよ。」
取れたことに安心しにかっと笑ってイクタはボールをメリーに返した。
「あなたも本気ではなかったのでしょう?」
メリーはバレておりイクタは笑いながら実力を誤魔化す。
「そんなことないですよ。」
イクタはそのまま終一の隣に戻って来た。
「お疲れ。」
終一はイクタにタッチを求めて手を出した。
「おう!楽勝・・・とはいかなったがな。」
軽くタッチをするイクタ。
「何言ってんだよ。止めたの他にアリスだけだぞ。
十分凄いよ。」
終一の素直な称賛にイクタは少し照れ笑いをする。
「そうか?でももう一人は増えるだろう?」
終一のことを指差してイクタは笑って言う。
笑っているが本当にそう思っているのだ。
それが終一にとってとんでもないプレッシャーになった。
「俺はその、な、なんというか止められないかも。」
終一はどもりながら話す。
「謙遜すんなよ。同じ特待生のアリスが止めたんだ。終一も止められるだろ。」
笑っているイクタのことをまともに見れない終一。
そして間がいいのか悪いのか終一の出番になってしまった。
周りは終一がアリスと同じ特待生ということで注目を浴びてしまう。
「あいつがアリスさんと同じ特待生か。」
「もちろんボールを受けとめるとしてどんな風に止めるのかしら。」
「きっと僕らでは想像のつかない止め方をしてくれるよ。」
終一はどうしたらいいか考えても考えても答えを出さずにいた。
とりあえず受けとめることは大前提だという事だけを理解して。
「どうすんだよこれ。俺止める事なんてできねーし。てかメリー先生目が俺を殺そうとしてないか?」
終一の読みは当たってしまっていた。
今メリーは終一に負かされたことを根に持ち致死レベルの魔力をボールに込めている。
一系統ではなく三系統の魔力を込めている。
他の生徒ならゆうに形がなくなってしまうほどだ。
そんなとき終一の中のアクマが話しかける。
「オイ、アレハオレノマジュツデケサナイトシヌゾ。」
終一は相容れないと思っていたアクマの言葉に信憑性を感じて思わず助けを求めた。
「マジで頼む。魔力破壊をしてくれ。」
「コンカイハツケトイテヤル。」
そう返事をして魔力破壊を行使する終一の中のアクマ。
メリーからのボールは勢いを無くし終一の手元に収まるように入って来た。
「なんだ今の?」
「魔術を上書き?いや魔力を消された?」
「なにが起こったの?」
周りは何が起こったのか分からずに騒いでいた。
とりあえずメリーは根に持つタイプだとわかった終一だった。
「だがいつ見ても変な感じだな。」
終一の中のアクマが使う魔術の魔力破壊は終一の意図とは関係なく目の前で使われそして、迫り来る魔術を目の前に来た瞬間に消してしまう。
終一には目の前まで凄い魔術が一瞬で何もなかったことになるので不思議な感じがしてしまうのも当然だ。
「ツギカラハ、タイカヲモラウカラナ。」
そう言ってアクマは終一の意識から消えた。
「対価?なにを支払わせるつもりだよ。」
独り言を言いながら終一はイクタの元に戻る。
メリーの視線を無視しながら。
私のあの魔力を消した魔術、前闘った時と同じなのかしら、とメリーは思い考えを巡らせていた。
現象としては同じでも規模が違いすぎる。
今回は三系統を混ぜた魔力とはいえ魔力だけの威力。
しかし、前に闘ったときのメリーの魔術は五系統で尚且つ魔術としては最高レベルの技だった。
それが同じ魔術で壊されるとは到底思えないでいたのだ。
メリーは終一にはまだ隠してある実力があると踏んで警戒をさらに強める。
そうとは知らずとりあえず安心した終一。
「なんとか期待に応えれたよ。」
イクタに安堵の声を終一は漏らしていた。
「あれがなんとかかよ。余裕で止めやがって。」
イクタは終一を小突きながら笑って話しかける。
そんなこんなで最後の生徒まで実技試験は終わりを告げ、最終的にボールを受け止められたのは、アリス、イクタ、終一の三人だけだった。
惜しくも止められなかった者も数人いたがほとんどが対応すら出来ずに終わっていた。
それも油断や慢心からくるもので集中していれば受け止めの体勢には入れていたはずだった。
対応できなかった者は次の日の休みは一日安静が義務付けられているが、全員が指一本動かせられない状態になることが目に見えていた。
それほどメリーのボールは難易度が高く普通に休みを生活できるのはその三人だけになっていた。
そのことは休みが明けてからわかることになる。
数名だけがメリーの実技試験の終わりを聞け、そのまま解散となった。
丁度お昼時に重なり残った数名で昼食を一緒に取ることとなってしまう。
正直、イクタと終一は気が重くてしょうがない。
それは二人以外は全員が女子だったのだ。
アリスを始め美人揃いなのだが肩身の狭い思いをすることは確定なのでどうにも気分が乗らない。
「ちょっとイクタくんも終一くんも何が食べたいか意見言って。」
そう言ってイクタにも終一にも腕を組みに行きあざとく話しかける一人の女子。
メリーのボールを受け止めた二人は将来有望と皆に思われ今から取り入ろうとし始めたのだ。
その一番手が彼女、リッカ・サルーシャだった。
リッカは小ぶりだがしっかりとある胸を必要以上に二人に押し付け自分アピールしている。
そんな感触は確かに女性らしさを感じずにはいられないがあからさまなので二人は反応しないでいる。
身長も小さめなのだが、お尻は大きく張りがある。
そこから伸びる太ももは終一にとっては大きな魅力となっているのだが、肝心のリッカは気づいていない。
だから終一はこっそりとだがしっかりとリッカの太ももを拝んでいた。
「もうリッカ。二人とも困ってるよ。」
アリスが仲裁に入ってくれ一安心する二人。
「イクタくんも終一くんもごめんね。
お昼は皆で食堂にでも行こうね。」
小さくごめんのポーズ取るアリスがあまりにも可愛く様になっていてイクタも終一も一瞬見とれてしまった。
そしてアリスが先導して男二人、女六人で食堂での昼食が決まった。




