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二十二話 実技試験はボール止め!?

目覚めの良い朝を迎え、軽く朝食済ませてから学院へと向かい始めた終一。

今日で実力テストが終わりで嬉しいのだが、

一番の難関の実技試験が残っているので素直に喜べずにいたのだ。

「はぁー。朝から気分が乗らないなんて。やっぱり実技がなぁー。」

うなだれながら終一は重い足取りで教室の席へと座っていく。

今日は実技試験のみで他のテストや授業はしない。

なぜならこの実技でかかる負担がとても大きいからだ。

その為、次の日は一日休みを設けるほどだ。

始まって間もない時期に休みを設けることは珍しいことであり、それほど実技試験が過酷な事を物語っている。

殆どの新入生はテスト終わりに休みがあると浮かれるものが多いが、兄弟がいるものはあらかじめ大変な事を分かっており素直に喜べずにいるものも少なからずいる。

それとは関係無しに終一は実技が無事出来るのかっという心配しかなくやる前から冷や汗が止まらない。

そして程なくしてイクタも登校して終一の隣に座った。

そして小声で終一に話しかけた。

「終一も知ってるみたいだな。この実技がどれだけ大変なのかってことを。」

かすかにイクタの声は震えていた。

そのまま続けて話し、

「前に姉貴が実技試験の後に帰ってきた時のことなんだが、あの姉貴ですら膝が笑って帰ってきたんだよ。

この試験しっかりと気合入れてかないとヤバいぞ。」

そんなとんでもエピソードを聞かされた終一は顔が劇画になり口から魂が抜け出てしまいそうだった。

「ま、マジかよ、俺、自信ねぇー。」

口が震えてちゃんと話せた不安になる終一だったが、実技試験だけは大丈夫だと言わんばかりのイクタが緊張で終一との話をちゃんと出来ていなかった。

二人は一層汗をかいたところでメリーが教室にきた。

「今日は実技試験のみで、明日が休みということもあり浮き足立っていますが、舐めてかかると明日一日寝たきり、ということもありますので気合を入れて乗り切りなさい。」

メリーは高揚した気持ちのせいで、いつもの丁寧な口調だが言葉はやや雑になっていた。

それもそのはずメリー自身が実技の試験官をしてクラス全員を叩きのめすつもりでいるからだ。

そう彼女はこの時ばかりは鬼試験官であり完璧なドSに豹変するのだ。

ただこのクラスの者たちはそれをまだ知らない。

試験が始まる頃には何人も重なった断末魔が聞こえてくることだろう。

「では、更衣室に移動して体操服に着替えてから体育館に集まってください。全員が集まり次第順番に試験を行います。それでは移動してください。」

メリーの言葉でそれぞれ移動を始めるクラスメイト。

周りの男子達はクラスの女子の体操服姿に興奮を隠しきれずに各々で誰が一番かを話しながら移動している。

そんな中、終一とイクタ周りの声が聞こえない程に気合と緊張が入り混じった顔で更衣室に向かっていた。

二人は着替え終えてから互いを見て、

「「行くか!」」

気合を入れて体育館へと向かって行く。

徐々に集まってきてクラス全員が体育館に集まった。

この学院の体操服は魔術が施してあり、大きなケガ以外はしないように出来ている。

そして余程のケガ出なければ全てを自身の体への負担となり返ってきて、筋肉痛という形で現れるのだ。

そのときは大丈夫だが次の日に筋肉痛に返ってきた分、未熟だと教えられるとても重宝する品の一つだ。

男子は白Tシャツに緑の短パン、女子は白Tシャツに緑のブルマとシンプルな作りになっている。

何故かと女子のTシャツは男子と同じくらい大きく下のブルマが見えるか見えないかギリギリのラインまで隠れてしまう。

これはもう誰かの嗜好が入っているという他ない。

そしてその姿を見て終一は今から大変なことを忘れてクラスの女子たちの太ももを観察することだけを一心に考えてしまう。

体操服万歳!太もも万歳!、と終一は心の中で歓喜に打ちひしがれていた。

感動で涙が出てきてしまうほどだ。

それに気付いたイクタは勘違いをし、これからの試験が終一にとっては泣くほど大変なんだと思ってしまう。

そしてメリーがやってきた。

メリーの格好に男子は歓喜の声上げていた。

「「「うぉー。」」」

何重にも重なった男の声だ。

この辺はアクマでも一緒なんだと終一は安心してしまう。

普段はしっかりとスーツを着こなしているメリーが女子たちと同じ体操服を着ているのだ。

そして袖もまくっており脇までちらりと見える。

さらにポニーテールでまとめた黒髪から見えるうなじが色気を増させている。

普段から想像できない大人の色気を醸し出しているのだ。

こんなものを見せられたら男子はイチコロだ。

「では実技試験を始める。まず女子から始める。

順番に私の前にで構えなさい。」

なにを始めるかと思ったらメリーが持ってきたボールを受け止めるだけという単純明解なものだった。

これに何の意味があるかわからない全員だったが、ボールを受け止めようとする女子を見て全員が理解した。

そう魔力を込めてとんでもないスピードと威力のボールをメリーは投げたのだ。

受け止めようとした女子は反応できずに呆然としている。

「今のはわざと外しました。これで理解出来たと思いますが魔力を使わなければ命の保証は致しません。

怪我が軽く済むよう全力で受け止めなさい。」

メリーはわざとクラス全員を引き締めるために外したのだ。

メリーは五系統の魔術を極めた者。

そんな彼女が本気で生徒に向かってボールを投げたりなどはしない。

現に今の外したボールの力も一系統のみを使い、

しかも一系統の半分ほどの魔力しか込めていない。

このことから生徒との差は明らかだ。

だから極力手加減をして丁度良い相手になる。

さらにメリーは五系統の魔術を極めるという異例なことをしているので他の先生よりも魔力の力量が正確に測れる。

生徒一人一人のギリギリを狙いながら力加減をしていく。

それは絶妙な力で僅かに取れるか取れないかを狙っている。

それに気付き必死で止める者、気付かないが止める者、気付きながら止められない者、気付かずに止められない者の四組に分けて評価点を定めるつもりでいるのだ。

最初の女子は気付かずに止められなかった一番評価の低い者になった。

周りには緊張が漂いクラス全員がボールを止めようと必死になって考えている。

だがメリーは相手によって魔力の質までも変えているので現状を打破するには最大魔力による魔術の相殺以外に道はなかった。

次々と止められない者が出てくる。

魔力切れを起こし保健室へと運ばれる。

上級生の保健委員と担架は常に目の見えるところにいる。

それ程までに魔力を使い切ってしまうのだが、未だに止められた者はいない。

そんな中アリスの番が回ってくる。

残っているクラスメイトが注目する。

特待生であるアリスの期待は高い。

アリスも止められなかったとすれば止められる者はいないとまで言えそうな雰囲気である。

彼女はそのプレッシャーを感じながら両手を重ねてメリーと掌を向ける。

そこに魔力が集まり始め高密度な魔力が両手を包み込みボールを受け止めようと身構える。

それを見てからメリーも魔力を込めてボールを投げる。

皆が緊張で唾を飲み込みボールが当たる瞬間を迎えた。

バチバチとボールとアリスの手から火花が飛び散った。

今までの者たちとは比べ物にならないほど高出力の魔力同士のぶつかり合いだったのだ。

「んんんー。」

アリスが踏ん張り何とか持ちこたえている。

周りはその姿に熱くなりアリスへの声援が送られる。

「アリスさん頑張れー。」

「アリスー。」

「頑張ってー。」

男女それぞれからの声援にアリスは答えるようにボールを受け止めようとする。

「これほどの力があってまだ一年生ですか。

少し嫉妬してしまいそうですね。」

メリーが小さく独り言を言った。

アリスの才能がメリーの才能よりも上だったのだ。

とはいえ今はまだ原石に近い状態。

これからの努力次第で石ころにもダイヤにもなる。

末恐ろしい才能の塊にメリーは少しだけ汗をかき、

そして喜びも感じていた。

そのままアリスは何とかギリギリでボールを受け止める。

みんなが歓声を上げて喜びアリスを讃えた。

そのあとの者は不幸としか言いようがないがそのまま試験は続いた。

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