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二十一話 老舗の店!?

イクタの雰囲気から大衆食堂的な場所に行くものだと思っていた終一は少し驚いた。

二人が着いた店はおよそお店だとわかる者が少ないであろう古民家風の外観をしていた。

要するにボロい店だ。

イクタが勧める店なので終一は大丈夫なんだろうと思いそのまま一緒に店のドアをくぐる。

イクタはドアに入った瞬間言う。

「おじさん!俺イクタだけど飯食べきたぞ!」

その声に反応して厨房にいるおじさんが顔を見せる。

「おうイクタか!久しぶりだな!しかも友達連れて来るとはな!」

終一のことをちらっと見てからそのおじさんはイクタに話かける。

「叔父さんひどいぜ!俺も友達くらいいるよ!それより昼飯食わせてくれよ〜腹減っちまって。」

お腹すいたアピールはイクタはする。

このおじさんはイクタの叔父にあたる親戚のアクマだったのだ。

「わかったよ。少し待ってな。とびきり美味いメシ食わせてやるよ!」

ガハハハっと笑いながらおじさんは厨房に向かっていった。

それを見てから終一達は空いている席に座った。

「あれは俺の叔父のカーターさんだよ。

カーターさんは俺の面倒を見てくれる優しい叔父さんなんだ。」

イクタは終一が聞く前に自分からそう言った。

その優しい叔父さんという言葉になぜか哀しさを覚える終一だった。

それもそのはずだ。

イクタのルーカス家はそこそこ名の知れた名門家。

イクタは実力はそれに見合うだけあるのだが、種族が一般的で特に優遇されたりはされなかった。

むしろイクタの存在を否定する者のが多かったのだ。

だからカーターのような普通に接する血縁者は少なく、カーターもイクタも現実の親と子以上の絆を持っていた。

イクタの家系は精霊の力を扱う者が普通であった。

だがイクタは石像鬼ガーゴイル、そのためか精霊の力を扱うことが出来なかった。

稀に同じ種族でも大地の精霊の力を扱う事が出来る者もいるがイクタは環境こそ恵まれていたがそこには至らなかったのだ。

そして叔父のカーターも同じ石像鬼であり、また精霊の力を扱えなかった。

カーターの時代はさらに差別が酷かったため甥のイクタには優しいのはその事があったからだ。

境遇が同じな二人が仲良くなれるのは必然といえよう。

そのことをイクタは終一には話さなかった。

いや、話せなかったんだ。

その事を聞いた者はイクタから離れて行くのを何度も目にしていたからだ。

だから終一と友達でいたいために己の過去を話すことは今のイクタには出来なかったのだ。

たわいもない話でイクタと終一は盛り上がっていた。

話をしていると厨房から肉を焼くいい匂いが立ち込めてくる。

それに終一は反応し、食欲を刺激させられていた。

「いい匂いだな。早く来ないかな。食べるのが待ち遠しいよ。」

ニコニコの笑顔で終一はイクタに言う。

「俺もだ。叔父さんの料理はマジで美味いからな。あんな見た目だけどな。」

カーターの見た目はとても一料理人には見えない。

イクタと似ていてガタイがとても良い。

イクタは格闘家を一回り大きくしたような体、カーターは重量級のプロレスラーを筋肉だけで固めたような体をしている。

系統は似ているが明らかにカーターのが馬力があるのが分かる。

極め付けに無精髭を生やし、スキンヘッドで、頬には古傷がついている。

元殺戮者だと言われても納得してしまう風貌だ。

その見た目でフライパンや鍋を使って料理をしている姿は不自然に見えるもので、

「俺の叔父さんが持つとフライパンが凶器に見えるだろう。」

と冗談で料理しているカーターを指差すイクタ。

そのイクタに言われカーターの姿を見ると思わず笑いが込み上がり二人して大笑いしていた。

そうしているとカーターが料理を持って二人の元に来た。

料理をテーブルに置くと間髪入れずにイクタの頭をゴンッと殴った。

「いってー。叔父さんいてーよ。」

少し涙目になったイクタが言うが、カーターはいつもの事のように言う。

「またお前は俺の事で笑ってたんだろ?すぐに分かるからな。」

悪人面のカーターがニヤリと笑って言うのだから失神する程の威圧感になる。

だが日常茶飯事のことなので全てが笑いと拳骨一発で終わってしまう。

「えっとカーターさん。この料理は何ですか?」

バチバチっと視線を合わせていた二人に終一が聞く。

「おう、それはリザードマンの炭火焼きだ。

久しぶりに手に入った肉でな、味は保証するから食べてみな。」

イクタにヘッドロックをかまして笑いながら終一に勧める。

あははっと声にならない笑いを終一はしたが、その肉はとても美味しいでイクタを待つことはできなかった。

簡素なフォークを持ち肉に突き刺してほうばる。

終一にとっては初めての魔界料理だ。

少しドキドキもしていたが余りの美味しさに衝撃が走る。

人間界にはない肉の種類で、脂がとても乗っていて口の中で噛まずに溶け高級牛肉を彷彿させ、味付けはしつこくなく程よい辛さをパンチにしてバランスがとれていた。

何度食べても飽きないほどに口の中に入っていってしまう。

それを見たカーターはとても嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「そんなにいい食べっぷりだとこっちも嬉しくなるねぇ。」

「本当に美味しいですよ。イクタが勧めるのがよく分かります。」

終一は話しながらもつい肉をほうばってしまう。

「俺の肉ちゃんと残しとけよ。」

イクタが笑いながら終一に言う。

終一は頷きながらもそのまま食べ続ける。

ガハハっとカーターは笑いイクタも肉を食べ始める。

そしてカーターはまた厨房に戻り次の料理出そうとしていた。

次に持って来たのは丼に入った白く濁った汁物だった。

それを見て終一はシチュー?いやあら汁がなにかか?っと考えながらスプーンに持ち替えて飲んでみた。

これは野菜スープだ!っと終一は見た目とのギャップと美味さに驚く。

しっかりと出汁が取ってあり、色々な野菜の甘みが染み渡る。

すくってみるとちゃんと形ある野菜が出てきた。

これはどうみてもブロッコリーだよな?

出てきた野菜に終一はじっと見てしまう。

「終一。そんなにブロッコリーが珍しいか?」

イクタが話しかけた。

「あっああ。俺はあまり見たことなかったからな。」

咄嗟に嘘をついてしまう終一だった。

「そうか。この辺じゃあまり使わない野菜だもんな。結構美味いだろ?」

イクタはそのまま流してブロッコリーが美味いと言う。

終一はアクマも人間と同じ野菜を食べるのかと安心し美味いとイクタに告げる。

二人とも腹一杯に食べ、終一は昼飯代のことを気にしたが、そこはカーターが要らないといってタダで食べさせてもらった。

お礼を言ってイクタと終一は店を後にした。

終一は後から気づいたが、店の名前がカーターの何でも飯屋だったのを見て実は結構危なかったのではないかと一瞬不安によぎっていた。

そのままイクタと寮に向かった。

「明日でテストが終わりだと思うと嬉しいな。」

イクタはやっと解放されると言わんばかりの顔をほころばせていた。

終一はどよーんと明日の実技テストがどうなるか一抹の不安を持ったままイクタの話を聞いている。

「そうだな。明日の実技で終わりだな。」

終一の顔はひきつっていて目が笑っていない。

今更どうこうしたところで強くなる訳でもないので、

諦めてしっかり休もうとイクタと話し、二人はそれぞれの部屋に戻り終一は珍しく誰も来ない部屋でぐっすりと休むことが出来た。

そしてそのまま実力テスト最終日。

実技試験が始まろうとしていた。

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