第55話「魔人、勇者と遊んであげる」
「フェンル、ナナミ。お前たちは離れていろ」
「は、はい!」
「お気を付けて」
フェンルとナナミは素直に、背後の岩の裏に隠れた。
いい判断だ。
『結界』では『究極聖剣』の攻撃は防げない可能性があるからな。
できるだけ安全距離を取っておいて欲しいのだ。
「……ナナミ。『勇者短剣術』の娘ですか」
「『勇者剣術』のミハエルさん。自分はあなたに失望したのであります!」
ナナミは叫んだ。
「あのヴァンパイアさんは悪い者ではなかった。ただ、消えようとしていたのであります! 問答無用で刃を向けるとは、それが勇者のすることなのですか。どうして静かに終わらせてあげようとしなかったのでありますかっ!!」
「『勇者補助金』ももらえぬ流派の娘がなにを言うか!」
ミハエルは金色の剣を、ナナミに向けた。
「太古の生物には触れてならぬ。消さなければならぬ。これは我々『勇者武術』の鉄則。新興の『勇者短剣術』が知らなかっただけだ!」
「……うちの子を脅してるんじゃねぇよ」
しかも、いい大人が。
「それが『究極聖剣』の使い道か。恥を知れ」
「ヴァンパイアと話すような者に言われたくはありませんね」
「俺が誰と話そうと勝手だ」
「あの者は、魔王の関係者かもしれないのです」
「だから?」
「あなたも魔王の脅威は知っているでしょう?」
ミハエル=ランゲルスは指を折り、数え始める。
「名前を残さなかった魔王と、9人の魔人のことを。おそるべき『術の魔人』『建築の魔人』『冥府の魔人』『……の魔人』『その他の魔人』『…………人』『……ん、な魔人』」
「ちょっと待て」
俺は手を挙げ、ミハエルを止めた。
「はしょるな。ちゃんと言え」
「……え?」
「今、魔人の名前を省略しただろ。魔王の関係者について語るなら、ちゃんと全魔人の名前を言え」
「ふっ、そんな小さなこと──」
「小さくない。重要なことだ!」
ふざけるな『勇者剣術』!
勇者武術の使い手にも無理だというなら、一体、誰が俺たち魔人の名前を正確に言えるというのだ!?
「やり直せ! もう一度最初からだ!」
「ひぃっ」
俺の眼光に怯えたように、ふたたびミハエルは指折り数えはじめる。
「えっと『術の魔人』『建築の──』」
「それはもう聞いた!」
「『……ほにゃららの魔人』『……なんたらかんたらの魔──』」
「ふざけているのか貴様!」
「ふざけてなどいない!」
「だったらもう一度だ。『術の魔人』『建築の魔人』『冥府の魔人』。はい、その次!」
「…………」
青ざめたまま、ミハエルは口ごもる。
「それでも勇者の後継者か、貴様ぁ!!」
俺が一喝すると、ミハエルはびくんと、肩をすくませて──
「だ、だって思い出せないのだ。どうしようもないでしょう!?」
「諦めてるんじゃねぇ!!」
「ひぃっ!」
「勇者とは何だ? 常人は諦めてしまうような、そんな強大な相手に立ち向かう者ではないのか!? 幼女が治める城に問答無用で踏み込んでくる者など、勇者とは言わぬ!
この時代の勇者とは、もっと高潔な者であろうが!! でなければ魔王と魔人が消えた意味がない!!
ゆえに、貴様は諦めてはならぬのだ。さあ、言え! 魔人の名前を!!」
「…………う、うぁぁぁ」
こいつ……頭を抱えてうなりはじめた。
「だ、駄目だ。私はそんな立派な者ではないのです……」
「敗北を認めるのか? それで本当にいいのか?」
「……うぅ」
「貴様に最後の機会をやろう。もう一度、最初から魔人の名前を言ってみるのだ。
慈悲をやろう。
過半数……5人の魔人の名前を言えたら、貴様を勇者の後継者として認めてやろう。さあ、やってみろ!」
「……『術の魔人』『建築の魔人』『冥府の魔人』『冷気の魔人』……」
「あとひとつだ。魔王の側に常に控えていた魔人がいただろう?」
「…………あ、ああああああ」
「さあ、言ってみろ。怒らないから」
「…………そ、それは」
「それは……」
「…………『壁の魔人』」
惜しい。
そんな『建築の魔人』と能力かぶりしそうな奴はいない。
……はぁ。勇者の後継者にも呼んでもらえないなんて……。
俺の魔人名って、そんなに覚えにくかったのかなぁ……。
「だが、それだけ言えれば上等だ。貴様を勇者の後継者として認めてやろう」
「あ、ありがとうございます」
「ならば去れ。素直に消えようとしているアンデッドに剣を向けるような真似はするな。それは勇者のする事ではない。わかったな」
「…………うぅ」
ミハエルは頭を抱えながら、歩き出す。
ダンジョンの入り口に向かって。さらばだ『勇者剣術』ミハエル=ランゲルス。
もう……会うこともあるまい。
なんだかもう、充分仕返しはしたような気がするから、帰っていいぞ。じゃあな。
「──って、私はなにを!?」
……ちっ。
「おのれ! 怪しい話術で私を!」
ミハエルは金色の剣を構え、俺を見た。
正気に戻ったか。めんどくさいな。
「話してるうちにめんどくさくなったから、もう帰ってくれ」
考えてみれば、ミハエルが剣を投げたのはヴァンパイア少女エノが消えたあとだったし。
その前にダガーが飛んできてたら、俺が楯で弾いてた。
色々考えなきゃいけないこともあるから、こいつの相手するのがめんどくさくなったのだ。
「魔人の名前を言えないような勇者の相手など、していられるものか。さっさと帰れ。『勇者剣術』」
「お前はああああああああっ!」
ミハエル=ランゲルスは金色の剣を天井に向かって、掲げた。
剣が金色に輝き、光が周囲にあふれ出す。
「モニカ! 『勇者格闘術』のモニカ! ここへ」
「仲間を呼ぶか!?」
「我ら『勇者武術』の危機です! ここへ──っ」
『山ダンジョン第3階層』にミハエルの声が響き、そして──
「……しょうがないなぁ」
足音が聞こえた。
遠くから、ポニーテールをなびかせて、少女が走ってくる。
着ているのは革鎧。手には金色のガントレット。
これも『勇者武術』の武器か。
「この方たちに勇者の秘密を知られたかもしれません。無力化し、すべて聞き出すとしましょう」
「ふーん。ヴァンパイアに接触したんだ。いけないなぁ」
モニカと呼ばれた少女が、俺たちを見た。
「いいね。『勇者短剣術』なんて偽物は気に入らなかったんだ。ここで潰しておいてあげるね」
「『勇者格闘術』まで来たのか。面倒だな」
別に『勇者武術』の秘密になど興味はないのだが。
だが、せっかくだから……。
「フェンル、ナナミよ。手伝ってくれるか?」
俺はフェンルたちを手招きした。
「はい!」「よろこんでお手伝いするのであります!」
岩陰に隠れていたフェンルと、少し遅れてナナミがやってくる。
「時間稼ぎを頼めるか? 俺はちゃっちゃと『勇者剣術』を片付ける。それまで『勇者格闘術』の気を引いていて欲しいのだ」
「わ、わかりました。この命をかけて──」
「かけなくてい」
たぶん、この場、この状態なら、フェンルたちでも『勇者格闘術』と対等に戦える。
それはフェンルとナナミの『つやつやのお肌』と、『勇者武術』たちの『かさかさのお肌』を見ればよくわかる。
もしかしたらあの『勇者格闘術』モニカは、ふたりにとっては強敵にさえならないかもしれない。
「では攻略法を教える……耳を貸せ」
「は、はい」「はいであります」
奴らに聞こえないように、耳元で『勇者格闘術』について教えた。
奴が、俺の知っている能力の持ち主なら、勝てる。少なくとも、俺が『勇者剣術』を片付けるまで、時間稼ぎくらいはできるだろう。うちの子、優秀だからな。
「『勇者武術』の不始末は、同じ『勇者武術』が責任を取るのが筋であります」
ナナミが2本の短剣を手に、前に出た。
「それに勇者の時代、本当はなにがあったのか、自分も知りたいのでありますから」
「では、『勇者格闘術』は任せた。無理はするなよ。俺は『究極聖剣』と『勇者剣術』の相手をする。片付けたら手伝うからな」
「「はーいっ」」
そして魔人とその従者 (+1)は、勇者の後継者との戦闘に入ったのだった。
──フェンル視点──
しゅる。
繰り出された『勇者格闘術』モニカの拳を、フェンルとナナミは軽いステップで避けた。
モニカは反転し、今度は蹴りを繰り出す。
「一発目は誘い。二発目が本命です。ナナミさん!」
「わかったであります!」
フェンルは右脚の蹴りは無視。
モニカが左足を繰り出す瞬間、タイミングを合わせて剣を振る。
「いきます! 『真空斬』!!」
「くっ!!」
フェンルの剣が生み出した真空の刃が、『勇者格闘術』モニカに迫る。
モニカが真空刃を寸前で避け、真横に飛ぶ。
──そこには、ナナミが待っていた。
「峰打ちであります。あ──すいません、この剣両刃でありました! てーいっ!」
「馬鹿な!」
がいいんっ!
ナナミの短剣を、モニカのガントレットが弾いた。
金色のガントレットは『勇者武術』の宝物だ。
その強度に圧されて、ナナミの短剣が震える。ナナミは折れそうになる短剣にもう一本の短剣を添え、武器を守る。
なんとか武器破壊を防いだナナミが見たのは、冷や汗をかきながら肩で息をしている『勇者格闘術』後継者の姿だった。
「……ど、どうして。こちらの動きが……」
「私、耳がいいんです」
フェンルはそれだけを答えた。
さっきレベルアップしたとき、フェンルの感覚器官も強くなった。
元々彼女は『術の魔人ガルフェルド』に、獣と合成して作られた生物だ。野生動物の五感を持っている。そして、彼女の主人は言った。
『勇者格闘術は、攻撃前に息を吸い。攻撃と同時に息を吐く癖がある』──と。
前世で『風の魔人』が得た情報だそうだ。
そして『勇者武術』の使い手は、当時の勇者の動きを、正確に再現している。
相手が本物の勇者なら速すぎて対応できないだろうが、この時代の『勇者武術』は、本物の勇者には数段落ちる。
フェンルが避けに徹すれば、少なくとも、負けることはない。
「……その上、私たちは甘やかされてここまで来たんです」
「……で、ありますな」
ふたりは顔を見合わせ、笑い合う。
ここまでの道のりのことを思い出す。
クロノが作ってくれたごはんを食べ。
戦闘後には必ず、クロノが作ってくれた特製ジュースを飲み。
そのあとは、結界の中でお昼寝して。
目が覚めたら、うとうとしながらおしゃべりして。
もちろん、床が『もふもふふにふに』のふかふかで。
その後はシャワーを浴びて、髪を拭いてもらって。
マッサージしてもらって、その後は、2人でクロノの腰や背中を揉んであげて。
早寝早起き。安眠。栄養満点の快適生活だった。
だから、今のふたりは体力も気力も充実している。
普通に魔物と闘いながら、野営続きでここまで来たであろう『勇者格闘術』とは、体調が違いすぎるのだ。
それは肌のつやと、目の輝きを見ればわかる。
モニカの目にはくまができていて、ほっぺたもかさかさ。この熱い中、レザーアーマーをずっと着たままで歩いてきたのだろう、首筋には『あせも』ができている。今だってちょっと動いただけで汗だくだ。肩で息をし始めている。
対するフェンルの装備はレザーアーマーと同等の防御力を持つ、『レインボーバタフライのローブ』。しかも昨夜選択したばかりでふわふわだ。ナナミはビキニアーマー姿だが、クロノが休憩中に作った『レインボーバタフライのマント』で防御力を上げている。
その上、寝起きのシャワーを浴びて、冷たいおやつをたべたばかり。
お肌つやつや。目元ぱっちり。体力気力、魔力ともに絶好調だ。
そしてさらに──フェンルたちは、ここで全力を出すことができる。
疲れたら思う存分、結界の中で休めるのだ。
対して『勇者武術』のふたりは、これから数日間野営し、食料が残っているうちに戻らなければいけない。ここで体力をすべて使い切るわけにはいかない。
フェンルとナナミ──『勇者格闘術』のモニカとの間には、この場で使える力に、絶対的な差があるのだ。
「これがクロノさまの『スローライフ』の力です!」
「負けるわけにはいかないのであります。自分はついに、お仕えしたい方を見つけたのでありますから!」
フェンルとナナミはまっすぐに駆け出す。
正面。『勇者格闘術』のモニカに向かって。
フェンルはオレンジ色のシールドを前に、突撃。ナナミが後に続く。
「そんな小さな盾、我が全力攻撃で吹き飛ばしてくれる!!」
『勇者格闘術』のモニカが叫ぶ。
「勇者の名を汚さないために、あなたたちにはここで潰してあげる。くらいなさい!」
「くらいませんっ!」
フェンルの耳はモニカの呼吸を捉えている。
──敵が息を吸う──フェンルは盾に魔力を注ぐ。
──敵が息を吐く──フェンルとナナミは、真横に飛ぶ。
「シールドごと砕けろ! 『勇者破岩砕』!!」
モニカの拳が、オレンジ色のシールドに触れようとした瞬間──
むにゅ、と、シールドがリング状に変形した。
「──な!?」
モニカが目を見開く。
フェンルの盾──スライムシールドは、彼女の魔力で自由に変形する。
ドーナツ型になった『スライムシールド』は、モニカの拳を器用に避けた。
正面に空いた大きな穴を、モニカの拳と、魔力と、拳圧が通り抜ける。
拳の先で生まれた疾風が、正面の大岩を削り取る。割れた岩が吹き飛び、どこかで魔物の悲鳴が上がる。
だが、フェンルとナナミはすでに回避している。
ドーナツ型の『スライムシールド』はモニカの手首のところにある。
拳の先で生まれる『勇者破岩砕』の疾風は当たらない。
そして──
ぱっちん。
元の姿に戻った『スライムシールド』が、モニカの両手首をがっちりと固定した。
押しても引いても、動かない。
いわゆる『手錠がはまった状態』である。
「こ、こんなもの──っ!」
モニカは腕を振る。が──
むにょ──ん。
「の、伸びる!? しかも、切れない!?」
ぱっちん。
モニカの力が抜けると同時に『スライムシールド』は再び元の姿に。
しっかりと、彼女の腕を固定する。
『勇者格闘術』のモニカは、もうなにもできない。
蹴りを出そうとすると『スライムシールド』が変形し、体重移動の邪魔をする。バランスを崩されたモニカは地面に転がる。すると今度は『スライムシールド』が伸びて、手近な岩に絡みつく。腕を岩に繋がれて、もはやモニカは立ち上がることもできない。
「……さすがクロノさまがくださった『スライムシールド』……すばらしい能力です」
『うねうね、うねうね』
答えるように、オレンジ色のシールドがうねった。
「クロノさま! フェンルが今、お手伝いに──」
フェンルは振り返る。
そして、彼女の目が、信じられない光景を映し出す。
彼女の主人と、『勇者剣術』のミハエルとの戦い──その決着を──
──クロノ視点──
勝負は一瞬でついた。
「『勇者剣術』──1の型!」
ミハエルが金色の剣を、横に薙ぐ。
岩が砕け、その下にあった熱源──灼けた岩が露出する。
「たいした切れ味だな!」
「殺しはしませんよ。全ての情報を吐いてもらうまでね!」
ミハエルは地を踏み、金色の剣を大上段に構えた。
「『勇者剣術』──8の型!」
最初の一撃を回避した俺に向かって、ミハエルが一気に踏み込んでくる。
俺はさらに後ろに退がる。
「『結界』展開! 遮断──!」
「そんなやわな『魔力障壁』で、この『究極聖剣』を止められるものか!」
『究極聖剣』──遮るものすべてを切り裂く刃。
本当にそうなのか、試す気にもならない。
だから、スルーさせてもらおう
「うぉおおお!?」
しゅん。
『勇者剣術』ミハエルが目を見開いた。
奴が振り下ろした剣が、一切の抵抗を受けずに、半透明の結界を通過したからだ。
だけど、奴はそれ以上は進めない。
『結界』は人体を遮断するように設定してある。従者が増えたおかげで『結界』はちょっとした家くらいまで大きくできるようになった。奴の剣が届かないようにするのは簡単だ。
「『変幻の盾』──通過:究極聖剣を含むすべて。遮断:人体!!」
俺は『変幻の盾』を投げた。
「こんな──もの!?」
『究極聖剣』が『変幻の盾』を横薙ぎにする。
けれど──触れられない。
ミハエル=ランゲルスの『究極聖剣』は、何の抵抗も受けずに『変幻の盾』を通過した。
──簡単な話だ。
『究極聖剣』が『遮るものすべてを切り裂く剣』なら、遮らなければいい。
その対策を思いついたのは400年前だ。
俺の盾は、勇者の神剣を止められなかった。
だから転生する直前、俺は思ったのだ。
──あれ? 剣を受け止めずに、勇者本体だけ倒せばいいんじゃね?
だから剣に触れないように、距離を取った。
衝撃波が飛んできたときのために、正面に立たないようにした。
剣を避けて──『変幻の盾』を遠隔操作して、ミハエル=ランゲルスの足をすくって──
「う、うぉおおおおおおお!?」
その身体を『結界』の上に放り投げれば、詰みだ。
「『もふもふぷにぷに能力』──全開!!」
ぽよーん。
『結界』の屋根に乗ったミハエル=ランゲルスの身体が、跳ねた。
「な、なんだこれは!?」
ぽよーん。ぽよーん。ぽよぽよぽよぽよぽよ!!
『もふもふぷにぷに』を高速で繰り返すことによって生まれる、超振動。
それがミハエル=ランゲルスの身体を、真上に投げ上げる。
落ちてきたところを柔らかく受け止めて、そのまま超振動を加える。
頭、手足、胴体。
解放したときにしびれて動かないように、念入りにしておこう。
「う、がががっががががががっ!?」
特に頭を重点的に揺さぶって、また、真上にぽーいっ。
「ぐっおおおおおおおおおお!?」
落ちてきたところを『超振動』で──
「クロノさまー。『勇者格闘術』の人を捕まえました」
「どうするのでありますか? ねぇ、どうするのでありますかー?」
フェンルとナナミが、こっちにやってくる。
ふたりは『スライムシールド』で固定した、『勇者格闘術』のモニカを抱え上げてる。
そうして、すごくいい顔で、にやり。
俺もふたりと視線を交わして、にやり。
「なにを遠慮しているのだ? 『結界』の屋根には、まだ余裕があるぞ?」
「乗せていいですか?」
「いいでありますよねぇ?」
ふふ、ふふっふふふふふ。
魔人とその従者(+1)らしく、邪悪な笑みを浮かべて──
「「「やっちゃえ!!」」」
ぽーい(モニカの身体を投げた音)
──そして
「うがごごごごごごごごここここ!?」
「ひいいえええええええええっぃぃぃ!?」
俺のスキルは止まらない。
ミハエルの手から金色の剣が、モニカの手からは金色のガントレットが飛んでいく。
落ちたのは、地熱で溶けた岩の中。あー、まぁ、しょうがないか。事故だ。
「お前も、よくやってくれたな」
『うねうね、うね』
『結界』を通過して落ちてきた『スライムシールド』を俺とフェンル、ナナミはなでた。
こいつもがんばってくれたからな。あとでほうびをやらないと。
「「「……でもー、その前にー」」」『うねうねっ』
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ!!
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる!!
「「うがごげええええええええええ。ひゅええええええええええええええええっ。ぐごわはああああああああああああああああ!!」」
『勇者剣術』のミハエルと、『勇者格闘術』のモニカが失神するまで、『結界』による強制トランポリン+超振動は続いたのだった。
魔人さん、現代の勇者 (自称)と決着をつけました。
そして敗北した『勇者武術』たちは……
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