44話:なろうの戦略2018予想
お久しぶりです。
最近の、なろうの戦略についていろいろと書きたいことが出てきたので追記という形で書かせてもらえればと思います。
連続で2話投稿しています。こちらは1話目です。
作家とは職業ではない、状態なのだ。
と喝破したのは誰であったか。
作家というのは、とにかくも作品を出版し続けてもらえなければ作家ではいられなくなるわけで、書籍化したから安泰というわけでなく、むしろ本を出してからが作家としての苦しみの始まりである、と思うわけです。
これは出版社にも同じことが言えるわけでして、海のものとも山のものとも知れないWeb小説というジャンルが、なろうバブルとでも言うべきレーベルの乱立も、ときどき破綻するレーベルが出てきたことで、なんでも書籍化すれば良いというわけもない、というビジネスとして当たり前の成熟市場の様相を呈し始めているわけであります。
ここで言う成熟市場とは、ビジネスとして安定的な戦略が見えてきた一方で、ある種の博打的な面白味が欠けている市場であるともいえます。
もし私が「なろうにおけるビジネスとして安定した戦略とは何か」と問われれば、経営的な言葉で表現するならば「迅速なマルチメディア展開による投資対効果の最大化と回収期間の最短化」と回答するであろうと思います。
具体的には、書籍化時点でコミカライズまでを見据えた投資を行い、早期にアニメ化までたどり着ける作品を増やす、ということに尽きるでしょう。
ビジネスにおける投資案件は一般に、初期投資、リスク、利益&回収期間の要素で評価されます。
初期投資が少ないほど手軽に始められますが、参加者は多くなります。
リスクが小さい方が投資をしやすいですが、利益は少なくなります。
利益は大きい方が良いですね。ただ、それが1年後に利益になるのか、10年後に利益になるのかでは大きく違います。短い方が優れた投資です。
こうした観点で評価すると、最近のなろうビジネスの投資は以下のように評価できると思います。
初期投資:コミカライズで大きくなりました。結果として中小出版社で追随できないところも。
リスク:単なるポイント評価では売れないことも。アクセスの内訳の詳細な分析が必要になっている。
利益&回収期間:短期化の要望が強くなっている。ただし打ち切りを連発すると読者離れのリスク。
ざっくりまとめると「大手が詳細なデータ分析に基づきしっかり投資して短期で回収する」という、面白みも何もない方向に進んでいる、と言えるかもしれません。
一方で、なろう小説ビジネスは「良くも悪くも正体がわからず、この先どうなるか見通せない」という、新興市場の成長株的な旨味と面白味もあって注目されてきたわけで、ここで安定株としての天井が見通せる市場になってしまうことは、参加者の誰も望んだ展開ではないと言えると思います。
以前、なろう小説は「作品に読者がついているのであって作家に読者がついているのではない」と書きましたが、その状況は基本的には変化していないと思っています。
ですが、作家側にとっては書籍化したという実績を以ってそうした状況を打破したい、ということで様々な戦略や意図を持って活動の舞台を広げる作家さんが増えてきています。
なろう運営も、そうした動きをサポートしています。
今回、なろうサイトの運営会社からはWeb小説雑誌「N-Star」が発刊されることになりました。
これまで、なろうの運営会社は一貫して出版社との仲介者として、なろうサイト以外の運営に積極的に関わってこなかったのですから、これはかなりの方針転換が成された、と言えるかもしれません。
なろうが紙媒体としてWeb小説を読む以外の読者層に訴えるための準備と見るか、あるいは雑誌に寄稿する書籍化作家達個人を売り出し、プールしておくための機構と見るか、あるいはその両方なのか。
今後の動向にも、個人的に注目して行きたいところです。




