15話: かつて見た光景
【文章を読む上での注意】
1.聞き取った情報は私の主観で構成されています。事実かどうかは保証できません。
2.実在の出版社や編集者から取材した内容に基づいてはおりますが、相手方のプライバシー保護及び信義則のため、話の内容や順番、インタビュー対象者などは私の主観で大きく編集した上で再構成したものです。
3.要するに「眉にツバをつけた上で」胡散臭い目をしつつ「読み物として」読んで下さい。「これが事実だ!」などと本気でとらないようお願いします。
そんな私の理解度を顔色から読み取ったのか、編集の方は少し基本に戻って説明してくれました。
「なろう書籍の出版が伸びている、という話についてはどう思われますか?」
「いやあ、すごいなあ、としか」
思わず間抜けな回答をしてしまいましたが、他に答えようがありません。
そんな回答が不満だったのか、編集の方は勢い込んで言葉を重ねてきました。
「そうです!これだけの出版不況の中で、伸びている、ということだけでも凄いんです!」
言われてみれば、なるほど、という答えです。
出版不況などと言われ、雑誌や単行本などが軒並み部数を落とす中で、それまで一部の人達のものでしかなかったインターネット系の出版物が脚光を浴びる。
この構図は、他の産業で私にも見覚えがありました。
ネット広告や通販の黎明期に起きた現象です。
若い人には信じられないかもしれませんが、今ほどインターネットとモバイルが発達していない時代、ネット通販というのは胡散臭いものでした。
自社製品をネットで売る、などと発言しようものなら「お前は自社ブランドを何だと思っているんだ」と四方八方から矢が飛んできたものです。
実際、流通に千や万単位でロットを投げるのと比較すれば、量の上でも、金額の上でも、ちびちびと一件ずつ処理しなければならないネット通販は企業からすると小遣い稼ぎにしか見えなかったのです。
ですから、かなりの大手企業でもネットの担当者はシステム管理者の1人きり、などということが結構あったのです。
ところが、不況になればなるほど取り扱う額は小さくとも伸び率の高いネット通販は企業の中でも重要視されるようになっていきました。
主流であった事業が傾く中で、ネットを中心に金額こそ小さくても伸び率の高い事業に多くの企業が参入していく、そういう状況が、今のなろう書籍を取りまく環境に似ている、と思ったのです。
その多くは、私の無知ゆえの勘違いであることが次第にわかってくるのですが。
明日も12:00と18:00に更新します。
原稿はこれから書きます




