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ふとソファーの上で目を覚ました。
昨日拾った目覚めない赤ちゃんウルフ達をみているうちに寝てしまったみたい。
気配を消しながらそっと籠を除き見ると二匹は今だに寄り添って眠っている。
一先ず外に出てルル達の世話と畑に水をやる。
絞りたてのミルクを持って家に入ると、籠から顔を出しているのに気が付いた。
どうやら、外に出ているうちにナイトウルフの赤ちゃんが目を覚ましたらしくしきりに匂いを嗅いだり噛みついたり周りを見渡したりと忙しい。
そのまま見ていると此方に気付いたようで毛を逆立て牙を向きはじめた。
小さい体で必死にスノーウルフの赤ちゃんを護るように私を威嚇する。
その様子は正直微笑ましいが、これからどうしようか迷う。
ナイトウルフの赤ちゃんは目覚めたが見た感じスノーウルフの赤ちゃんはまだ目覚めていない。
黒い子から目を逸らさずに見ていると威嚇するのを止め小さな声で鳴き始めた。
「…もしかして、お腹好いてる?
なら、ミルク温めてくるから少し待ってて。」
キッチンに入り鍋にミルクを入れてかき混ぜながら弱火にかける。
ミルクの回りが沸々となってきたら火を消して人肌くらいに冷ます。
程好い温度になったミルクを少し深めの小皿に移し籠の中で大人しくしているナイトウルフの赤ちゃんの前に置く。
最初は警戒するようにミルクの匂いを嗅いだ後におそるおそる顔を伸ばして舌を出しピチャピチャとミルクを飲みはじめた。
「…良かった。
飲んでくれてる。」
でも、ミルクを飲むってことはまだ乳離れしてないってことだよね?
なら、この子達の親はどこにいるんだろう…。
私が住んでいるこのオールドフォレスト(古い森)にはナイトウルフや他の魔獣等も多く生息しているのは地図と図鑑で見たから知ってる。
けれど、スノーウルフは此処からもっと北にあるインヴェルノと言う名前の一年中雪で閉ざされる山脈に生息している筈だ。けれどこの子達を拾った時周りに親や仲間の気配がしないか探ったが一切それらしいものはなかった。
ナニかから逃げている途中で此処で力尽きたか…。
色々考えなきゃいけないが面倒臭くなり思考を放棄した。
目覚めないもう一匹の方を見るが一向に目覚める気配がない。
呼吸はちゃんとしてるし鑑定でみた感じは昨日と同じで良好。
なら、なんで目覚めないんだろう…?
クイクイっと服の裾が引っ張られ下を見ると黒い子が此方を見上げていた。
「もうミルク飲んだの?
もう少し飲む?」
黒い子は首を横に降り籠の中に戻ってしまった。
けれど首だけ出して此方をジッと見るから見返してみる。
少しの間奇妙な静寂が続き、目を逸らさすか逸らさないか考えはじめた時に小さな鳴き声が聞こえた。
まさか!
慌て籠に近付く。
籠の中を除き見ると白い子が弱々しく鳴いていた。
黒い子が白い子を心配そうに寄り添う。
急いでまだ温かいミルクを何故かあった哺乳瓶に容れ白い子を抱き上げ口元に近付ける。
うまく飲んでくれるか分からなかったが、なんとか口に加えて飲み始めてくれた。
「…飲んでくれたぁ。」
そっと飲みやすいように抱え直しながら少しずつだが必死にミルクを飲む様子にこの子は生きようとしている。
なら、出来るだけの事をしよう。
全部飲み終わりうとうとしだした白い子を慎重に籠の中に戻す。
直ぐに黒い子が白い子に寄り添い二匹して丸まって眠りはじめた。