プロローグ
ふと気がつくと真っ白な空間に独りで立っていた。
ここがどこか分からず周りをキョロキョロ見ていると声が聞こえた。
「平穏な人生お疲れ様でした。」
声がした方を見るとまるで漫画やお伽噺に出てくる死神ような真っ黒のローブを着て片手にランタンを持った男性?と大きな鎌を持った同じく黒いローブを来た男性?がいた。
私に話し掛けてきたのはランタンを持った男性。
たぶん声の低さから男性だろう。
「…はい?私は死んだんですか?」
「はい。貴女は平穏な人生を歩んで先程亡くなりました。」
私の質問に鎌を持った方が答えた。
そうか。私は死んだのか…。
「申し遅れました。
私は案内役のエルメス。
鎌を持った方はアレンと言います。」
「其れでは参りましょうか。
月凪小雪さん」
…?
「すいませんが今何て言いましたか?」
聞き間違えではなければもしかして…。
そんな私に気づかずにランタンを持った彼・エルメスさんはもう一度言った。
「…?
月凪 小雪さんですよね?」
やっぱり間違ってる。
私の名前は月乃 小雪だ。
私の質問に控えてた鎌を持った方・アレンさんがいつの間にかファイルのような物を開いて見ている。
其れを横目で見ながら私はゆっくり言葉を紡いだ。
「…私の名前は月凪 小雪ではなく、月乃 小雪です。」
「…え!?
いや、月凪 小雪さんですよね?」
「いいえ。
私は月乃 小雪です。」
動揺している彼に私が冷静に返していると、彼は慌てて紙を取り出して項垂れた。
其れを見ていたらアレンさんが一つ溜め息をついて申し訳なさそうに話し出した。
「申し訳御座いません。
どうやら此方の手違いです。本来なら貴女は今日何事もなく過ごしていたはずなんです。
しかし、神様から渡された資料には貴女の名前が有りました。」
そこまで言うと彼は言葉をきり俯いてしまった。
その様子から、どうやら私はよくある小説で言う神様の書類ミスで死んだらしい…。
…ふざけるな!
私は一週間後にあの人と結婚するはずだったんだ!!
どれほど憤りを感じてもしかし、この二人に当たることは出来ない。
この二人は神様に渡された資料をみて仕事をしただけだ。
だから今あるこの怒りと哀しみをぶつけられなかった。
私と死神二人で俯いたまま黙っているとこの場に似つかわしくない明るい声が響いた。
「なあにやってるの?
早く連れていきなさい!!」
凄く神々しいが話し方が少しイラッとくる人が来ました。
たぶんこの人が書類ミスをした神様でしょう。
「…申し訳ありません。
神様。
しかし、今回は神様の書類ミスで彼女は此処に来てしまいました。」
「え!?
書類ミス!!?
ちょっと!どういうことよアレン!!」
神様はアレンさんに詰め寄るが、アレンさんはファイルを盾にして鬱陶しそうにしている。
そして今まで項垂れたいたエルメスが間に入り込み、持っていた紙を神様に突き付けていた。
「ちょっとエルメスなにするの!
私はアレンに聞いてるの!!」
「良いですから御自分が私達に渡した書類を読んでください!」
強引に渡された紙をみた神様は顔色を青く染め私を見た。
そして凄い勢いで綺麗な土下座をした。
「御免なさい!!」
「…それは何にたいしてですか?」
思わず普段より低い声が出た。
「…私のミスで貴女を理不尽に死なせてしまった事よ。
本来なら貴女は一週間後に結婚する筈だったんですもの!」
「…そうですね。
私は来週、あの人と結婚する筈でした。
そこまで言うなら私は戻れるんですか?」
私が結婚する事を知っていたらしい。
けれど、私は死んだ。
「…申し訳ありません。
月乃さん。
貴女は既にこの鎌で斬ってしまったのでもう戻れないんです。」
アレンさんの言葉に神様は気まずそうにして立ち上がり、何かを思い付いたような顔をした。
「…あ。そうだ!
小雪ちゃん!!
貴女、異世界に行ってみない!?」
「…異世界ですか?」
もしや、よくある異世界転生だろうか?
でも、私の家族以外はいらないなぁ…。
「異世界って言っても転生じゃないわ!
年齢は変わるけど、まだあった寿命分異世界で生きてみない?」
なんか考えを読まれた気がするけど、スルーしておこう。
転生じゃないなら異世界でどうやって生きろというのだろう?
「神様、流石にそれは急すぎませんか?
彼女も困っています。」
考えていたらアレンさんが神様を諌めていた。
「でも、アレン。
元の世界には戻せないもの。
これしか私には出来ないわ。」
「あ!なら、私達が管轄している世界・アスヴェシチャーチはどうでしょう!!」
「そうねアレンとエルメスに最初に任せた世界ね!
彼処なら大丈夫だわ!!」
…勝手に話が進んだ。
其れにしても、アスヴェシチャーチって確かロシア語の筈。
和訳だと照らすって意味だったなぁ…。
「…すいません。
まだ異世界に行くなんて言ってないんですが…。」
三人で盛り上がっているところに控え目に言ったら忘れていたという風にこちらを見てきた。
「…あ!御免なさいね。
其れでどうかしら?
行ってみない?」
「…このまま居るよりはマシですが、その世界はどうゆう世界何ですか?」
「そうですね。
月乃さんからすればファンタジーな世界です。」
「妖精から精霊、エルフ、魔獣、獣人、人間、魔族等が居ますね。」
上からアレンさん、エルメスさんの順に答えてくれた。
ファンタジーの世界かぁ…なら、夢のスローライフをしたいな。
「わかりました。
その世界でもう一度生きてみたいと思います。」
「「「ホント!ですか!!」」」
「はい。」
笑いながら答えると三人は嬉しそうに笑う。
「なら、早速行く準備をしましょう!
先ずはどういう生活を送りたいかしら?」
「そうですね。
ゆっくりとしたスローライフを送りたいです。」
「わかったわ。
スローライフね。
次はどんな場所に住みたい?」
「出来れば自然が近くにある場所が良いです。」
「自然が近くにとっ。
なら、町に近い方も良いかもしれないわね。」
そうやって神様の質問に答えていくとアレンさんエルメスさんが後ろで紙に書いていく。
内容は
・異世界で生きてく上での土地と家
・土地と家を護る結界
・家畜(牛と羊と鶏)
・鑑定や探索など必要なスキル
など
「此れが最後の質問よ。
貴女は何を職業にしたいかしら?」
職業…。
生産系はないだろうか?
「生産系はありませんか?」
「生産系なら農業や牧場、錬金術士、薬師や他にもあるけど、錬金術士がオススメね!」
「何故錬金術士がオススメ何ですか?」
「錬金術士なら、防具やアイテムが作れるし売ればお金にもなるわ。」
「なら、錬金術士にします。
あと、そのレシピとその世界での常識に関する本、植物についての本等下さい。」
「わかったわ。
他にはないかしら?」
「他には今のところありません。」
「そう
なら、なにかあったときこれに書いて頂戴。
アレンかエルメスが行くように手配しとくから。」
そう言われてレターセットを渡された。
受けってポケットの中に入れる。
「じゃあ、早速送るわね。
いってらっしゃい…どうか良い人生を送ってね。」
視界が光に包まれて私は此処を後にした。
この小説を読んで下さりありがとうございます。
初めて書いた物なので所々おかしいですが楽しんでいただけたら幸いです。