この憤りをどうするべきか!!
何となく書いてみました。
ベッコォオ!
怒りのあまり手に握っていた缶が音を立ててへこむ。隣に座っていた先生が憐れみの視線をよこすが………私は腸が煮え返る思いを抑えるのに必死で気付くことはなかった。
私の名前は最上 由緒。
鳴神高校に通う一年生である。
今日はアーチェリーの全国大会の本戦が行われつい先ほど終わったところだ。
アーチェリーは、人工数が少なく、私が所属しているアーチェリー部も部員が少なかったため、一年である私も大会に出場した。
もともと私は中学の時からあらゆ大会に出場しては優勝をかっさらってきた程の猛者であり、この大会の優勝候補筆頭だった、の だ が !!
「あ~……。最上、大丈夫か? 」
アーチェリー部顧問である早乙女先生が恐る恐る話し掛けてきた。
その時だった。
「最上ーーー!!お前、この結果は一体どうゆう事だ!説明しろ!!!」
アーチェリー部部長、佐賀 仁志が怒鳴り込んできた。
私は勢いよく顔を上げてた。
ビクッ
私の顔を見た佐賀部長が何故かびびっているが、私はお構いなしに腹の中に黙っていた怒りを部長に訴えた。
「ひっっっどい結果ですよねー、分かりますよその気持ち。私も優勝候補筆頭とみんなに言われる程の実力者ですからね。この大会の為にたくさん練習したし体調に気をつけたりと自分なりに努力を続けてきました。それなのにまさか、本戦の一回戦目で敗退するとは予想外でしたよ……………それもこれもあの電波女がせいだ!ふざけんじゃねー!!!」
ベッコォオ、ベコ!!
手に持つ缶が、さらに潰れる。
その様子に佐賀部長は思いっきりドン引きしていた。
「えっと………早乙女先生?あいつ、一体どうしたの?」
あまりの荒れように、理由を知っているだろう早乙女先生に佐賀部長は尋ねる。
「最上は出番がくるまで精神統一を人気のないところで1人でやっていたらしいんだが………なんでも青葉高校の女子生徒に、いきなり『アンタのせいでイベントが台無しよ!どうしてくれるのよ!!』と言って怒鳴り散らされたらしいんだ」
「……は?なんだそれ」
呆気にとられる佐賀部長に早乙女先生も、俺もそう思うと頷いた。
「しかもその青葉高校の女子生徒、最上にさんざん怒鳴った挙げ句『こんなもの』と最上の愛用の弓を地面に叩きつけたんだと」
「はぁあ!!?」
その言葉に佐賀部長もキレた。
アーチェリーの弓は維持費も含めて金がかかる。私の弓は中学から愛用している馴染み深い物であり、アーチェリーを始めると決めた私に祖父が買ってくれたものだ。
中古なら安いものもあるが、そういったものは他人のクセが付いてしまっている。
だから大抵の人はどんなに高くても新品を買うのが殆どだ。(軽く万はする)
パカッと早乙女先生の隣に置いてあったケースを開いた。中には3つに分けられた弓のパーツが納められてはいた。
早乙女先生はその内の一つを手に取り、佐賀部長に差し出した。
佐賀部長が受け取ったのは弓の軸にあたるパーツだ。
「………」
無言で受け取った佐賀部長は弓の軸にあたるパーツには深いヒビか入っていた。
その酷い傷に、佐賀部長は顔を歪める。
「そんな状態だからな。最上の弓は一応予備で持ってきたので代用したんだが………最上は弓を割られたショックと怒りで集中力が続かない上に使い慣れていない弓を使ったせいで結果は惨敗」
はぁ、と深いため息をついてうなだれる早乙女先生。
「最上はこの大会で優勝すればオリンピックの日本代表に選ばれることになっていただけに、残念だ」
そう、私はこの大会で優勝したらオリンピックの代表に選ばれることが決まっていた。
学生の内にオリンピックに出るのは特に珍しいことではない。昨今ではゴルフやフィギュアスケートなどで活躍している学生もいる。
日本ではあまり注目されていないアーチェリーは、世界から見ても日本はレベルが低い。
「早乙女先生………青葉高校には、もちろん抗議するんだよな?」
「当たり前だ。まったく、ふざけたことしやがって!!」
早乙女先生も冷静そうに振る舞っているが、内心ではそうとう頭にきているのだろう。
佐賀部長は大会に出ることが出来ず、学校で授業を受けているであろう他の部員がこのことを知ったらどうするかと考えた。
そして───。
「……ぅ………うぅ……」
悔しさのあまり、涙を流す最上を痛ましそうに見つめるしか出来なかった。
どんな理由があるかは知らないけど、必ず見つけ出して謝罪させてやる………私を怒らせたことを後悔するがいい!!!
お分かり頂けると思いますが、由緒の弓を壊した子は、転生ヒロインです。
*続編は…………書くかな?