蜘蛛
花の国は今月に入ってからも平和である。
首都{ラフレフィア}の総人口は120万人、国土はちょうどユーラシア大陸の左半分くらいの大きさ。
花の国の国民は、鼻をくすぐる様なしつこくない花の匂いと春の良く晴れたような暑くも寒くもないような空気に心を落ち着かせ農作業を始めている。
季節は春の周期。新たな季節となり、種を蒔き鍬で土を耕す丸っこい国民は頭の上から一輪の花を咲かせており、その花は光を浴びたくて上へと向いている。
花の国の国民は顔から手足が生えたような姿で、耳は腕の後ろにある。感覚器官として、使われているのは鼻・目・舌・耳・皮膚、そして頭上に咲く花である。
国民等は小麦の種を蒔いている。すると畑の中にいる一人の国民が別の国民に話しかける。
「昨日、首都の西側に怪物が沸いたんだってさ。蜘蛛みたいなやつだったらしい。」
国民が言っているのは昨晩、首都{ラフレフィア}の西警戒門で起きた出来事である。
昨晩、首都の西の地区、商業地区では活気あふれる商人たちが貴族や、訪れた者に品々を売りさばいていた。そんな商業地区に、ある若者が走ってきた。
「大変だー!西門に蜘蛛みたいな化物が出たってよ!」
騒ぎは大きくなっていく。