素直になれない私はもうおしまい
嫌な女だと思われたに違いない。
いつも私を助けてくれるのに。
なんで私は素直にお礼一つ言うことができないの?
わけが分からない、自分のことなのに。
けんかしたまま別れるのは嫌。
なんとしても、彼に謝らなくちゃ。
いつもの我がままで臆病な私は、いい加減卒業しよう。
本が好きな彼にお詫びとして素敵な本を送ろう。
当たり前になりつつあった彼との日常を思いだしながら、私は本を探した。
はたから見ると、滑稽なくらい真剣に。
大丈夫。
好きって気持ちは、プレゼントと一緒にきっと彼に届けてみせる。
きっかけは今度は自分で作らなくちゃ。
とんとん拍子に進む恋愛なんてない。
伝えたい言葉は自分ではっきり伝えないと。
えっと、えっと、とそんな風に口ごもってもいい。
たくさん悩んで、たくさん苦しんで。
私はもう後悔はしたくないから。
にこっと私に微笑みかけてくれる彼をもう一度見たいから。
彼に会おう。
はっきりと言おう。
優しい彼のことをどんなに想っているか。
しっかりとした彼にどれだけ惹かれているか。
くじけそうになる私を、いつも支えてくれた彼にこの想いを。
微睡みの中で、私はある光景を見る。
笑い合う彼と私、二人の薬指にはお揃いの銀の指輪。
んっ、と目覚めた私は伸びをして、すぐに今日、彼に会おうと決意する。
だって、その夢を少しでも早く正夢にしたいから。
小説の文頭だけを縦に読むと、私と彼のその後が少しだけ分かります。