第四話どこもかしこも悪魔ばっか
野獣の狼達は奇襲に失敗している。そして、今なお低いうなり声で威嚇をしつつ、臨戦態勢を維持してる。狼が奇襲にて勝負を決めるつもりでいたのは明白だった。人間の体は脆い。薄皮一枚という紙切れのような防壁の先にある頸部の軟骨を破壊されたら即死する。だから狼はレオンの首筋へ狙いを定め、上部から飛び掛かってきた。だが、狼の失敗は、レオンを攻撃対象として定めてしまったことだ。その反応速度は狼の予想をはるかに上回り、奇襲を防がれ、打ち損なった。実力の差を嫌でも味わった瞬間だろう。なのに逃走をしない。それが腑に落ちない。考えても仕方がない考えるより殺ったほうがいい。すぐ行動をし拳銃の人差し指が引き金を絞り切る。発砲炎が一瞬だけレオンの網膜を焼いた時点で、狼は弾丸の軌道上からその身を退けていた。舌を打ったが、毒づけるほど時間に猶予はなかった。地を蹴った狼がふたたび下方から凄まじいスピードで飛び込んきている。
「おい!ぼさっとしてんな!」
ずっこけた喜助に対していう。こいつが一人でよかった、農民の代表で一人でやってきたのことだった。
でなければ守れていなかっただろう。
「おぉらぁ!」
拳銃をしまい剣で応戦する。一匹一匹を冷静に対処し、片を付ける。案外簡単なものだった。奇襲がうまくいかなかったから腹を立てて突っ込んできたのかは定かではないが囲んできたのではないのであっけなく終わってしまった。しかしそう思ったのもつかの間奥からぞろぞろ出てきた。喜助はいつの間にかちゃっかり大木の影に隠れている。
「これから何匹まで増えるんだろうな、こいつら」
「お、俺が知るかよ・・・」
弥助が引きつった声で答える。
「だよな」
新たに姿を見せた狼は、仲間の放った遠吠えを聞いて救援にやってきた、といったところか。こんなに大勢では手が焼ける。なので少々荒ぽっくなるが奥の手を使わせてもらうことにした。
「喜助!身を伏せてな、少々荒っぽくなっからよ」
身の周りに赤色の魔力が滲み出る。狼たちが、躰を震わせる。おそらくは狼狽したのだろう。あるいは、格上の力を感じ取ったのかもしれない。魔力を掛け合わせた剣圧を放射、反撃など許さない一撃を放つ。魔力の刃は狼の躰を破壊するだけにとどまらず、軌道上に存在するあらゆる自然を爆砕した。
「おぉ、ちょっとばかし見晴らしが良くなったな」
「終わったのか?」
居心地が悪そうにおどおど顔に映る疲労の色は少し薄くなっていた。隠れていたのが休息に繋がったのだろう。
「それにしても凄かったな、さっきのあれ。あんたが何をやったのか俺には到底理解できないが、あんたももしかして博麗の巫女さんと似たような力を持っているのか?」
「さぁな、俺は持ってる力を少しばかり使っただけだしな。まぁもう終わったからな戻るぜ、報酬が待ってるしな」
戻ろうと催促しかけた時、前にあった視線を感じ取る。
「どうしたんだ?」
「いや、何でもねぇ」
気にはなったものの何かをしてくると言うわけでもなく。その場で切り捨てた。魔法の森を抜けて人里へと戻る。寺子屋に戻ろうとしてる道中叫び声が聞こえる。気になってその場に向かうと妖怪に代わって外の世界に蔓延る闇、悪魔が居た。
「やっぱどこでもいるんだな、悪魔ってのは」
走り出し剣を取り出して悪魔たちに斬りかかる。初撃で一体を倒し残りの悪魔が襲ってくるがこれを難なく撃破する。
「おっと、親玉がいんのか」
空間が歪みその中から芋虫のような巨体が出てくる。
「よくも私の子供たちをぉおお!」
「なんだ、あんたの子なのか。あんたにてブッサイクだったぜ」
「FUCKYOU!!」
「FUCKYOU」
罵り合う。先に行動したのは芋虫型の悪魔である。手が伸び引っ掻くが跳躍し、避ける。
「見た目通り鈍いな」
さらに挑発する。それに怒ったのか今度は体当たりをしてくる。意外に速かったものの相手の頭上にのり剣を突き刺す。すぐに振りほどかれたもののダメージは与えられたはずだ。しかし相手も単調ではなかった。
「行きな!子供たち!」
悪魔を生み出し遠隔攻撃をする。といっても生まれたての悪魔なぞ攻撃にもならなかった。銃で仕留めて芋虫悪魔の顔面に蹴りを入れる。
「靴でも舐めときな!」
「許さん!私聖水をぶっかけてから殺してやる!」
そう言いながら黄色い液体を吐き出す。ひょいと簡単に避ける。
「あっぶねえな、ブッサイクちゃん」
「もう一度いってみなぁああ!」
大きく手を振りかぶり地面を砕く。だがそれはおおきな隙を生むことになった。その顔面めがけて剣で両断する。
「こんなクソガキに殺される訳がない!こっちは何百年も生きてるんだよぉお!」
「クソババアじゃねぇか」
「わたしゃしつこいんだ、細切れのゲロにしてやるぅ!」
銃を数発撃ち動きを牽制すると頭上に立ち再び剣を突き立てる。今度は深く刺さりそのまま首を切断する。
「性格もブスじゃな」