第二話あんた誰?
走った為言うほどに時間がかからなかった。階段を登ったあと賽銭箱の目の前に立つ。入口が何処だがわからないので勝手に入らせてもらうことにした。この際どうでもいいだろう。ようやく母と会えるのだ。多分許してくれるだろう。淡い期待に胸をはせ、声がする部屋に向かう。三種類の声がする、三人いるんだろう。そしてその障子を開けるが目の前の光景に思わずはぁ?と声をだす。
「誰アンタ?何勝手に入ってるのよ」
写真で見たことのある、日本の巫女とかいう人物だ。脇が見えているので仮に脇巫女と称そう。確かに脇巫女の反応は当然だ。見ず知らずの人物が靴を履いたまま上がってきているのだ。靴を履いたままなのはただの文化の違いなので仕方のない事だが今は絶賛不法侵入中だ。
「ここに天使が居るはずだ、それは誰だ?」
青い髪で帽子を被った少女が答える。
「あたしだけど」
「あんたが俺の母さんか?」
レオンを除く全員が声を上げる。それはそうだ、赤の他人からいきなりこんなことを言われてもどう対処していいかわからない。
「母さん?なんでよ、結婚もしないってのに子供がいると思う?人違いよ確かに私は天子だけどもさ」
「shit!やっぱりな!こんな小便臭せぇガキが俺の母さんな訳がねぇ!」
「いきなり現れてなに!?ぶちのめしてやる!」
「ぶちのめすのはいいから、外でやってくれる?」
二人を窘める脇巫女、それを了解した二人は外の中庭に出る。
「面白そうだな、私が審判してやるぜ」
金髪でエプロンを着た少女これを仮に白黒が面白そうにいうが、レオンはそれは必要ないという。それをなんで?と不思議に聞き返す。ただただ単純に相手を屈服させればいいだけだからだ。それ以外の理由はない。
「参りましたって言わせればいいだけだかんな」
「逆に言わせてあげるわよ」
「どうだかな、おれは女だろうが男だろうが婆爺相手でも加減はしないぜ?」
「その方がいいわよ、そんなことしたらあんたはすぐ負けるわ」
青髪帽子が剣を取出し鋒を向ける。それを難なく剣を取出し対応する。一旦離れた青髪帽子は剣を振りかざした途端、妙な気配が這い寄るもののなんら変わった様子が見られない。
「あれ?なんで発動しないのよ」
剣を振る。まるで壊れたおもちゃを振るように。
「種明かしするとな、それ俺を狙ってやったんだろ?なら効かねえな」
「まさかあんたの能力?」
「まぁな、天使の加護ってやつだ。俺達に害成すものはオールカットってなわけだ。ま、呪いとか魔具とかに限るけどな」
自慢のようには言わずに淡々と語るレオン。苦悶の表情をする青髪帽子を鼻で嘲笑う。
「終わりだ」
余裕の態度を一変させ動揺した一瞬の隙を付いて背後に回り込む。回り込まれた青髪帽子は剣を落とし手を挙げ降参の意を表示し膝を付ける。
「あんた強いのね。憎いけどあんた名前は?」
「俺?俺はレオン。レオン・パージバル。何でも屋やってる」
「そう、私は比那名居天子。非想非非想天の娘よ」
そうかと言って手を伸ばし天子の手を取り立ち上げる。口が悪いが意外に紳士なのだ。しかし女だからこうした訳ではない。仮にむさ苦しい筋肉男でも同じことしたに違いない。
「あら、意外に紳士ね」
「照れるね」
「なんかあっけなく終わったわね。まぁ庭が破壊されなかったからいいけど」
素っ気なく先ほど起こった戦いの感想を述べる脇巫女。それに便乗して白黒も感想をいう。
「なんで弾幕ごっこしなかったんだ?決闘ってそれぐらいだろ?」
「それはこいつが霊夢を知らなかったのと服装や言動で外来人だと思ったからよ。外来人じゃ弾幕ごっこなんて知らないでしょ?」
「弾幕ごっこ?決闘のが遊びだって?笑えるねぇ」
思わず言葉にする。弾幕と言うが弾なんて一つも出していなかった、いやただ単に俺がその外来人だから出さなかっただけか。
「はぁ、また外来人か。いいわ説明してあげる」
面倒といった感じで説明をする脇巫女。それと同時に自己紹介もする。そしてその中で思わず口が滑ってしまう。
「日本の巫女は脇なんて開いてなかったぜ。もしかして誘ってんのか?とんだ巫女だな」
言い終えた後、しまったと言う顔をするがもはや時すでに遅し、脇巫女こと霊夢の怒りが飛んできたのあった。