第五幕 ドロントVSシャーロット
ドロント、フワリフワリと飛び跳ねながら、確実に「獲物」が展示されているギャラリー3に接近。
倒れている機動隊員達を避けて、室内に足を踏み入れる。
ドロント、室内を見回し、目標を発見。フッと笑う。
それはガラスケースの中にある額入りの絵。
奈良斑鳩の里にある世界最古の木造建築と言われている法隆寺(別名斑鳩寺)の夢殿の水彩画。
ドロント、絵を覗き込み、ゆっくりと吟味するように見る。
ドロント「作者不詳、年代不明、恐らく明治時代初期程度としかわかっていない。何とも言えないほど、ミステリアスな絵ね」
ドロントがガラスケースに手を触れようとした瞬間、強力なライトが彼女を照らし出す。
ドロント、ギョッとして目を細めてライトの方を見る。
ドロント「えっ?」
そこには、逆光の中、腕組みをしているシャーロットが立っている。以下、シャと表記。
ドロント「シャーロット?」
ドロント、怪訝そうな表情で呟く。
シャ、後ろにたくさんの機動隊員を従えている。得意満面である。
シャ「ドロント、私があんな子供騙しに乗せられたと思ったの? 迂闊だったわね」
ドロント、キッとしてシャを睨む。
シャ「袋のネズミよ、ドロント。今日こそ、その仮面を剥いで、貴女の正体を暴いてあげるわ」
シャ、ゆっくりとドロントに近づく。ドロント、肩をすくめる。
ドロント「仕方ないわね。私もヤキが回ったようね」
ドロント、逃げる素振りも見せずに両手を前に突き出す。
シャ、機動隊員に目配せして、ドロントに手錠をかけさせる。
シャ「行くわよ」
シャ、ドロントを機動隊員で取り囲み、連行する。
北の丸公園の田安門前。MIDORI達の乗るタクシーが、入口の所で中年の制服警官に止められている。
警官、後部座席を覗き込んでいる。不審そうな表情。
警官「何ですか、こんな時間に?」
何かを言いかけるMIを押しのけ、リョクが身を乗り出す。
リョク「武道館でコンサートをした者なのですが、控え室に忘れ物をしてしまって、取りに戻ったんです」
警官、リョクとMIを見比べながら、困り顔になる。
警官「うーん、今公園全体が封鎖中なんだよね。入れないよ」
それを聞き、いきなりテンションマックスのMI。
MI「えーっ、なになに、おまわりさん? 事件? 殺人?」
MI、窓から身を乗り出して尋ねる。警官、ギョッとする。
と同時に、MIの正体に気づく。
警官「あ、貴女確か、MIDORIさんですよね? いやあ、私の息子が貴女の大ファンでしてね」
警官の顔が綻び、いい雰囲気。MI、してやったり顔になる。
MI「あらどうも。じゃあ、通してよ」
MI、ウィンクする。しかし、警官は頑である。首を横に振る。
警官「それとこれとは話が別です。そういう訳にはいきません」
MI「えーっ!?」
MI、膨れっ面になる。リョクがMIDORIを引き戻す。
リョク「仕方ないわ、姉さん。明日で大丈夫だから」
MI、酔いはすっかり覚めたのか、キッとした顔になる。
MI「ここまで来て帰るのって、どうにも納得がいかないのよね」
MI、警官を睨む。警官、バツが悪そうに顔を背ける。
国立近代美術館前。
シャーロット、ドロントを建物の外に連れ出す。以下、シャと表記。
シャ、ドロントが大人しいのに疑惑を抱き、ジッと彼女を見る。
シャ(どうにも気に入らないわね。こうもあっさり諦めるなんて……)
ドロント、シャの疑惑の眼差しに気づく。
ドロント(シャーロットめ、私が何か仕出かすと思ってるわね。そのとおりよ)
シャ、立ち止まる。機動隊員達はそれに驚き、彼女を囲むように立ち止まる。当然連行されているドロントも立ち止まる。
シャ「ドロント、何か企んでいるわね? でも無駄よ。もう貴女は籠の鳥なんだから」
ドロント、シャを見てニヤッとする。
ドロント「あーら、そうかしら? ミスティ!」
ドロント、仮面に仕込まれた通信機に叫ぶ。
ミスティの声「はい、首領!」
どこからともなく響くミスティの声。
夜空に滑空するハンググライダーの影。
シャ、それに気づき、見上げる。そしてショルダーホルスターからオートマグを取り出し、構える。
シャ、ドロントを見てフッと笑う。
シャ「残念ね、ドロント。救出作戦失敗よ」
シャ、オートマグを撃つ。ガオンとオートマグが吠え、ハンググライダーの左の翼が撃ち抜かれる。
次の瞬間、ハンググライダーから強烈な閃光が発し、シャも機動隊員も目が眩んでしまう。
シャ、辺りを手探りしている。
シャ「ドロント、よくもやったわね!」
ドロント、ニヤッとしてスルスルッと手錠を外す。
そして、目が見えなくなってパニックに陥っている機動隊員をすり抜け、走り出す。
ミスティ「首領!」
ミスティ、今度こそハンググライダーで現れ、縄梯子を下ろす。
ドロント、縄梯子に捕まり、逃走。
シャ「待ちなさい、ドロント!」
シャ、眩んでいる目を無理矢理開き、辺りを見回すが、何も見えない。
ドロント「バーイ、シャーロット」
ドロント、夜空を去って行く。




