最終幕 これでお別れ?
翌日。
朝日が昇り、街の明かりが消え始める。
梅雨の晴れ間である。
路面のあちこちにある水溜まり。
紫陽花の葉の上をゆっくりと進むかたつむり。
早くも多くの人で混雑している成田空港ロビー。
その中に見える、シャーロットとMIDORIとリョクの姿。
以下、シャ、MIと表記。MIの独白。
MI「昨夜は大変でした」
以下、回想シーン。
夜。警視庁全景。
警視総監を始め、多くの幹部が大慌てで動き回る。
記者会見場で質問攻めの副総監。汗を拭いながら、愛想笑い。
MI「裏柳生のオジさん達が、全て警視庁の警官で、警視総監までもが事件に関与していた事が、シャーロットさんの捜査で判明し」
シャが裏柳生の連中を締め上げているシーン。MIの独白の続き。
MI「もう警視庁は大パニック。警察庁長官や、都知事、国家公安委員長、法務大臣まで出て来て、大変な混乱の中、あの法隆寺の絵を巡る事件は収拾へと向かいました」
ロビー。シャ、MIとリョクに微笑む。
シャ「世話になったわね、MIDORI」
MI、周囲を見渡し、不満そうな顔をする。
MI「全く、お偉いさん達は酷いわね。あれだけの事件を解決したシャーロットさんを見送りに来ないなんて」
シャ「来られないわよ。今、人事異動で大変なんだから。まァ、来てもらっても迷惑なだけだしね」
MI「それもそうですね」
三人、大笑いする。
リョク「お元気で、シャーロットさん」
シャ「貴女達もね」
シャ、下りのエスカレーターに乗り、やがて見えなくなる。
リョク「行っちゃったね」
MI、エスカレーターを見たまま。
MI「ええ。行っちゃったね」
二人、同時に振り返り、そこに美女二人が立っているのに気づき、ギョッとする。
真っ赤なワンピースを着たドロント(仮面なし)と紺のパンツスーツの美咲である。
MI、唖然としていたが、口を開く。
MI「だ、大胆ですね、お二人共」
ドロント、ニヤッとする。
ドロント「まァね。私達の正体を知っているのは、貴女達だけですもんね」
ビクッとし、後退りするMI。
MI「それって、もの凄く危険な発言ではないですか?」
リョクもピクンとしてドロントを見る。ドロント、微笑んだまま。
ドロント「バカねえ。勘ぐり過ぎよ。貴女達の口を封じる必要なんてないもの」
MIとリョク、ホッとする。そして、あれっと思うMI。
MI「必要がないって、どういう事ですか?」
ドロント「だって貴女、美咲と一緒に法隆寺の絵を盗んだでしょ? 立派な共犯よ」
MI「げっ!」
蒼ざめるMI。リョクも顔色が悪い。
苦笑いするドロント。
ドロント「私が記憶を失ったふりをしたのは、美咲の力を見るためもあったけど、貴女達が決して私達を裏切れないようにするためでもあったの。私、酷い女ね。謝るわ」
ドロント、頭を下げる。そして顔を上げ、ニコッとする。
ドロント「でも、面白かったでしょ?」
MI「ええ、そりゃもう」
MIの反応に驚くリョク。
ドロント「もう一度、一緒に仕事しない?」
MI「是非!」
笑顔で応じるMIにムッとするリョク。
リョク「姉さん!」
苦笑いしてリョクを見るMI。
ドロントと美咲、二人に背を向けかける。
ドロント「じゃあね、MIDORIさん、リョクさん。また会えるといいわね」
MI「ええ、ドロントさん。いえ、葵さん」
ドロント、ニコッとして歩き出す。
美咲「MIDORIさん、リョクさん、元気でね。縁があったらまた会いましょう」
美咲も歩き出す。
MI&リョク「お二人もお元気で!」
ドロント達が見えなくなるまで手を振るMIとリョク。
MI「さてと」
リョクを見るMI。
MI「これから、夏休みのコンサートに向けて、特訓よ!」
力こぶを出してみせるMI。
リョク「お酒も程々、カラオケも控え目にしないとね」
ムッとするMI。
MI「と、とにかく、おうちに帰りましょ」
リョク「ええ、姉さん」
歩き出すMIとリョク。ロビーは大きなスーツケースを引く人達で溢れている。
MI「でも、まるで映画の中に飛び込んで、主人公と一緒になって活躍したみたいだったね」
リョク「ええ。また会えるといいね、ドロントさんと美咲さん」
MI「それと、シャーロットさんともね」
MI、ウィンクする。
成田空港全景。
飛び立つ航空機。朝日に照らされ、輝く。
END.
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。