表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

第二十一幕 法隆寺の絵の秘密

 ホテルの玄関を飛び出して来るシャーロット。以下、シャと表記。


 シャ「間に合わなかったか」


 リョク、シャのジャケットのポケットから出ている紙片に気づく。


 リョク「あれ?」


 リョク、ポケットから紙片を抜き出し、シャに見せる。


 リョク「シャーロットさん、これ」


 シャ「こ、これは……」


 シャ、紙片に書かれた内容に驚愕。


 紙片には、ドロントのキスマークとサイン、そしてある文章が書かれている。


 シャ「……」


 シャ、無言のまま紙片をポケットに戻す。


 シャ「MIDORI、ベンツ貸して。大沢を追うわ。行き先がわかったのよ」


 MIDORI、リョクと目配せし合う。以下、MIと表記。


 MI「私達も行きます」


 リョクが頷く。


 シャ「仕方ないわね」


 シャ、肩を竦める。


 


 通りを疾走するリムジン。


 後部座席でムッとしたままの大沢。


 畑、その様子に気づく。


 畑「どうされましたか?」


 大沢、ハッとして畑を見る。


 大沢「あ、いや、何でもないよ」


 畑「そうですか? そうだ、幹事の好きな曲でも聞いて、気分転換をして下さい」


 大沢「うむ」


 畑、運転手に目配せ。運転手、ルームミラー越しに頷き、CDをセットする。


 大沢の声「それより、こそ泥の方だ。あの絵を奪った上、お前の顔を見たとなると、このまま放っておく訳にはいかんぞ」


 スピーカから聞こえた自分の声に驚く大沢。


 大沢「何!?」


 大沢、身を乗り出し、CDデッキを睨みつける。


 大沢「どうしてそんな声が入っているんだ!?」


 隣の畑、ニヤリとする。


 畑「まだわからないの、大沢先生?」


 大沢と秘書、畑の声の変貌に仰天する。


 畑「こういう事よ」


 畑の顔がベリベリと剥がれ、下からドロントの仮面が現れる。


 大沢と秘書、思わず身を引く。


 大沢「き、貴様、何者だ!?」


 大沢、ドロントを指差す。


 ドロント、フッと笑う。


 ドロント「私がそのこそ泥。世界的大泥棒の、ドロントよ」


 ドロント、ウィンクをする。


 大沢、ポカンと口を開き、固まっている。


 秘書の方が先に我に返り、運転手を見る。


 秘書「おい、車を停めろ!」


 運転手、秘書を見てニコッとする。


 運転手「停めませんよ」


 運転手の顔が剥がれ、下から現れる仮面を着けた美咲の顔。


 秘書「お、お前もか……」


 大量に汗を噴き出す秘書。


 大沢、ようやく我に返る。


 大沢「どういうつもりだ!?」


 ドロント、絵の入った筒を出す。


 ドロント「この絵を使って、何をしようとしていたの?」


 大沢「う……」


 大沢、筒を見て顔色を変える。


 ドロント、筒から絵を取り出し、広げる。


 ドロント「明治の初めに書かれた絵の下には……」


 ドロント、絵をペリペリと剥がし始める。


 大沢「や、やめろ!」


 大沢、慌ててドロントに掴みかかろうとするが、ドロントの足が大沢の顔を押さえる。


 大沢「もが!」


 法隆寺の絵の下から現れたのは、墨で書かれた文書。かなり達筆でパッと見では読めない。


 ドロント「孝明天皇毒殺事件の真相と真犯人が書かれているのよね。しかも、事件は『病死』で片づけられている。犯人は未だに公表されていない。貴方、これと同じ事をやろうと思っているんでしょ?」


 MIのナレーション「絵の下から現れたのは、孝明天皇、すなわち明治天皇の前の天皇が毒殺されたと言う事件の真相と真犯人が書かれていたのです」


 ドロント、足を下ろす。


 ドロント「皇室を潰して、自分がそれ3に取って代わる。凄い事を考えたわね、大沢先生?」


 大沢、苦虫を噛み潰したような顔でドロントを睨む。


 秘書、ガックリと項垂れる。


 大沢「やはり、お前達の依頼主は奴らだったのか……?」


 ドロント、ニコッとする。


 ドロント「ええ、そうよ。そして私の仕事の仕上げは……」


 ドロント、ライターで文書に火を点ける。


 ドロント「この記録を灰にする事」


 文書、ボオッと燃え上がり、灰になって消える。


 ドロント、絵を筒の中に戻す。


 ドロント「この絵は貴方が買い取ったのだから、貴方にお返しするわ。もっとも、こんな絵だけを欲しくはないでしょうけどね」


 大沢、歯軋りをする。


 ドロント「これで一件落着ね」


 ドロント、笑顔で言う。


 美咲「そうでもないみたいですよ」


 美咲、皇居前広場から飛び出して来た十人の裏柳生のメンバーに気づく。


 大沢、それを見て急に強気になる。


 大沢「ハハハ、お前らももう終わりだ。お前らさえ殺せば、証人はいない」


 ドロント「それはどうかしらね」


 美咲、リムジンを停めて、外に出る。


 車を取り囲む裏柳生。


 ドロント「すぐに戻って来るわね」


 ドロント、大沢にウィンクしてリムジンを降りる。


 大沢「裏柳生の手練十人を相手に、たった二人で何ができるというのだ?」


 大沢、せせら笑う。ドロント、振り返る。


 ドロント「私達を誰だと思っているの、大沢先生? あの第六天魔王を名乗った織田信長でさえ手を出さなかった日本最強の忍びの集団よ」


 ドロント、バンとドアを閉じ、畑の服を脱ぎ、黒のつなぎ姿に。美咲も同じ。


 次の瞬間、裏柳生が二手に分かれ、ドロントと美咲に襲いかかる。


 ドロント「美咲、殺さないでね」


 美咲「わかってます、首領」


 ドロントと美咲の姿が、裏柳生達の視界から消える。


 狼狽える裏柳生達。


 ドロントの声「どこ見てるの、オジさん達!」


 たちどころにドロントと美咲に倒される裏柳生達。


 大沢「あ、あ……」


 唖然とし、言葉もない大沢と秘書。


 ドロント「さ、大沢先生。仕上げは彼女達がやってくれるわ。じゃあね」


 ドロント、美咲と共にスッと消える。


 大沢「彼女達、だと?」


 大沢、恐る恐る振り返る。


 そこには、疾走する白のベンツに乗るシャーロットとMI、リョクの姿が。


 大沢「あ、あいつらは……」


 シャ、ドロントからのメッセージカードを見る。


 シャ「ドロント、嘘はつかなかったようね」


 ベンツ、停止。シャ達が一斉に降りる。


 シャ「大沢一郎、刑法第七十八条、予備及び陰謀の罪で逮捕します」


 大沢「く……」


 シャ、大沢をリムジンから引き摺り出す。そして、CDデッキからCDを取り出す。


 シャ「これが証拠よ。貴方と誰かさんとの危険な会話が入っているわ。それから、私を殺そうとした男、ここに倒れている連中が、証人ね」


 大沢、呆然としている。


 シャ、周囲を見渡す。


 シャ「ドロントはどこ?」


 MIとリョクも見回す。


 MI「いないみたいですね」


 シャ、フッと笑う。


 シャ「また逃げられたか」


 妙に嬉しそうに言うシャ。


 顔を見合わせるMIとリョク。微笑み合う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ