第十七幕 シャーロット・ホームズの逆襲
裏柳生のリーダー、錐刀を構え、再び美咲に突進しようと身構える。
リーダー「貴様……」
その時、リーダーの後頭部に冷たいものが押し当てられる。
ゾクリとするリーダー。
オートマグをリーダーの後頭部に押し当てているシャーロット。以下、シャと表記。
シャ「おっと。動かないでよ。いくらニンジャでも、この距離ではかわせないでしょ?」
リーダー、顔を引きつらせ、身体を強ばらせる。
シャ、美咲を見る。
シャ「貴女、ドロントの部下ね? ドロントはどこ?」
美咲、腕組みをしてシャを睨みつける。
美咲「貴女に教える義理はないわ」
シャ、フンと鼻を鳴らす。
シャ「ボスも口の利き方を知らないけど、部下も一緒ね」
美咲、ニッとしただけで何も言わない。
シャ、ジャケットのポケットからピアノ線くらいの太さの糸を取り出す。
それでリーダーの両手と両足を縛る。しかも片手で、オートマグは持ったままで。
シャ、リーダーを見る。
シャ「手錠じゃすぐに抜け出せるだろうからね。それから、その糸、切ろうとすると逆に手を切るわよ。強度は釣り糸以上なんだから」
リーダー、抵抗する様子もなく、大人しくしている。
シャ、ハンカチを取り出し、リーダーから錐刀を奪い取る。
シャ「これは、殺人と殺人未遂の証拠として預かっておくわ、ニンジャさん」
シャ、ジャケットの内ポケットにハンカチごと錐刀をしまう。
美咲を見るシャ。
シャ「今度は貴女の番ね」
美咲、フッと笑う。
美咲「お相手してあげたいけど、今はそれどころじゃないのよ」
シャ、ムッとして美咲を睨む。
シャ「何ですって!?」
美咲、バッと門の上に飛び上がって庭に降り、サッと姿を消す。
シャ、玄関から駆けて来た力に気づく。
シャ「門を開いて!」
リョク、ビクッとして手に持っているリモコンで門扉を動かす。
シャ、開き切らない門扉を押し開き、庭に飛び込む。
シャ「どこ!?」
シャ、鬼の形相でリョクを睨む。
リョク、泣きそうな顔になる。
リョク「私、知りません、本当です!」
シャ、逃亡しようとしたリーダーに気づく。
シャ「動くんじゃないよ、オヤジ!」
シャのオートマグがリーダーに向けられる。
シャ「私は今、もの凄くムカついてるんだ。ヘタな真似すると、ぶっ殺すよ!」
シャ、目を血走らせてリーダーを睨みつける。
リーダー、再び硬直。
リョクも直立不動。
シャ、リーダーに近づく。
シャ「あんたの黒幕は誰なの?」
リーダー「言えるか……」
その瞬間、リーダーのサングラスが吹き飛ぶ。
シャ「言わないと殺すよ」
オートマグの硝煙の向こうでニヤリとするシャ。悪魔に見える。
リーダー、震え出す。
リーダー(こいつ、本気だ……)
美咲、風を切って走っている。
屋根から屋根へと飛び移りながら進む。
美咲「まさか、首領、あの男の所へ……。でもどうやって……?」
美咲、走るのを止め、苦笑いする。
美咲「そうね……。首領はそういう方よね」
美咲、走る車のルーフを飛び移りながら移動する。