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わかってますよね?

作者: 星野☆明美
掲載日:2026/04/30

彼は、母子家庭で育った。ぎりぎりの生活。劣等感。

ある夜夢に天使が現れた。

「人生には波がある。悪いことの次はいいこと、いいことの次は悪いこと、その繰り返し。今がどん底なら、あとは這い上がるだけ」

「俺にもチャンスはあるのか?」

「もちろん。ただし、よく覚えておいて。幸せと不幸は表裏一体。幸せの絶頂にいる時には気をつけなさい」

それから彼は、夜学と独学で大検に合格した。

その夜はお祝いを兼ねて外食することにした。

外食先で彼と同じくらいの年の青年がやけ酒を飲んでいた。

「何があったんです?よかったら話を聞きますよ」

「勤め先がブラック企業だったんだ。同僚が過労で倒れて一気に仕事の量が増えた」

「そんなところ辞めればいいのに」

「うちは祖父母と両親と俺の家族で、老々介護だし、生活費と税金を稼がなきゃならないんだ。好きな女性がいるけれど、苦労かけたくなくて、結婚できない」

「そんな……」

彼は絶句した。

政治が悪いんだ、と青年はつぶやいていびきをかき始めた。

政治……。彼は、政治家になって、この青年みたいな人たちを救いたいと思った。

「明日ここの選挙事務所に行って、政治家が困っているところを助けなさい」

また、夢に天使が出てきた。

半信半疑でとある選挙事務所にいくと、有名な政治家が心臓麻痺で倒れる場面に居合わせた。彼は救急車を呼び、その政治家は一命を取り留めた。彼は感謝され、自分が政治家になりたいと思っていることを話した。

「君の力になろう」

政治家は、側近を4人用意して、彼はすいすい出世した。

「おめでとうございます」

彼はいつしか大統領になった。

制度が見直され、国民が幸せな国が実現した。

いつかの青年も報われて彼のことを応援していた。

テレビの演説で、本気の涙を流した彼をみんなが好感をもった。

「俺は幸せだ」

これ以上の幸福があるだろうか?

そこへ、側近4人がやってきた。

「大統領の本当の仕事が待っています。こちらへ」

誘われて行った場所に、ボタンがあった。

「これは?」

「周辺国との会戦の合図に弾道弾ミサイルを発射するのです」

「い、嫌だ」

「わかってますよね?後戻りできませんよ」

側近たちの顔が夢の天使の顔に変わった。

「さあ、地獄へ堕ちなさい」

彼の震える指はボタンを押した。

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