14 - 泥棒
私は家に空き巣が入っているところに、ばったりと出くわしてしまった。
その人物は真っ黒の目出し帽を被っていて、
上から下まで全身黒ずくめの服を着ていた。
私は家に入っていた泥棒さんに「あ、どうも」と挨拶をした。
泥棒さんも「あ、どうも」と軽く会釈をしながら返してくれて、
そのまま私の家の引き出しを片っ端から漁っていた。
庭のウッドデッキとの境目にある大きなガラス窓を見ると、
クレセント錠の近くのガラスが一部壊されており、
窓が開いていたので、どうやら彼はそこから侵入してきたようだった。
私は泥棒さんの横に座り、彼が荒らした引き出しの中身を丁寧に直していった。
彼はその間にも、次から次へと私の部屋を荒らしていく。
私は忙しそうにしている泥棒さんに尋ねてみた。
「何か良い物は見つかりましたか?」
「ああ、少し高そうな腕時計がありましたよ」
「見せていただけませんか?」
「あ、どうぞ」
私は私の腕時計を受け取ると、自分のポケットにしまった。
「これ、私の腕時計なので、一応預かっておきますね」
「あ、はい。分かりました」
それだけやり取りをすると、泥棒さんはまた別の棚に移り、
ごそごそと金目の物を探し始めた。
私はしばらく泥棒さんの横で後片付けをしていたが、
彼の「おっと、そろそろ時間だ」というつぶやきが隣から聞こえてきた。
「どうかされましたか?」
「5分以上やると通報される可能性が高くなるので、このあたりで、おいとまさせていただこうかなと思います」
「あっ、そうなんですね。どんな物が盗れたか、また見せていただけませんか?」
「あ、どうぞ」
私は泥棒さんの持っていた小さな袋を受け取ると、
それを広げて、中に入っている盗まれた物を確認させてもらった。
「あ、すみません。全部私の物みたいなので、全てこちらで預からせていただきますね」
「あぁ、そうでしたか。残念です。それではこれで、失礼いたします」
泥棒さんは丁寧に頭を下げ、壊したガラス窓からゆっくりと外に出ると、
きちんと窓を閉めてから、もう一度窓越しに会釈をして帰っていった。
私は闇夜に消えていく泥棒さんを眺めながら、
近くにあった固定電話の受話器を取ると、
静かに「1・1・7」と入力し、電話をかけた。
『午後9時23分10秒をお知らせします。ピッ、ピッ、ピッ、ポーン…』
ああ、結構遅い時間になっちゃってた。
お腹もすいたし、片付け終わったら夕飯にしないとね。




