そして天使は舞い降りた
僕の名前は、表 久呂斗
高校3年生で受験を控えている。
早く自宅に帰って勉強しないといけないというのに...
今日もついてなかった。
下校中に近所の古い神社でタバコを吸っている不良たちに見つかってしまった。
3人いる内の1人が声を掛けてきた。
彼はこの不良グループのボスだ。
輪類 団士といって同じクラスのやつだけど、留年していて歳は1つ上だ。
「よお、くろと。こっちこいよ。」
他の2人も僕をみてクスクスと笑っている。
2人は、中尾 咲太と矢田 行大だ。
僕と輪類は3年A組だが、この2人は3年B組の不良だ。
輪類の金魚のフンとしてくっついている不良だ。
(冗談じゃない。早く帰りたいのに。でも、そのまま帰ったら次が怖いな...)
「...やあ、輪類くん。ど、どうしたの?」
輪類はニヤニヤしながら、手招きしている。
僕は心臓の鼓動が早くなるのを察知した。
それでも行くしかなかった。
輪類から出た一言は、想定内の言葉だった。
なんて嫌な言葉なんだろう。
この世から無くなればいいのにと思った。
「なあ、くろと。肩パンしようぜ。か、た、ぱ、ん!」
(言うんだ!言い返すんだ!)
僕は震えながら言い返した。
「え、、、あ、でも、、、昼休みの時にしたよ?」
輪類は睨みつけてきた。
「あ?そんなん関係ねえよ。今は今だろうが!」
僕の言い返す作戦は失敗に終わった。
「う、うん...やろうか...」
矢田が手を挙げて、輪類に言った。
「輪類くん!俺から先にこいつとやってもいい?」
輪類は笑いながら、いいぞと頷いた。
矢田は僕の肩に、スタート!もないまま殴ってきた。
「痛っ。」
痛いけど輪類よりは痛くなかった。
僕は安堵した。
僕を見て矢田の表情が少し変わった。
矢田はまた殴ってきた。
肩かと思いきや、僕の頬に殴ってきた。
親父にも殴られた事ないのに。
輪類にもまだ顔は殴られたことなかったのに。
初めて殴られた。
その勢いで僕は倒れた。
「あーあ、くろと、わるい!間違えて顔なぐっちゃったな。あはは。」
輪類も笑いながら言った。
「矢田なにやってんだよ。まじうける。」
中尾は無表情で僕を見下している。
「きもっ。それくらいでぶっ倒れるなよ。」
輪類が倒れている僕の胸ぐらをつかんできた。
「俺にも殴らせろ。大丈夫、肩にしてやんよ。あははは。」
顔へのパンチは逃れたが、起き上がった瞬間にお腹を蹴られた。
(肩じゃないじゃん。お腹じゃん。)
僕はうつ伏せで倒れた。
輪類たちは満足したのか笑いながら去っていった。
僕は痛くて泣いた。
あと、悔しさと悲しさも入り混じって泣いた。
「なんで、僕ばっかり...こんなめに...ぐすっ」
「うぅ...痛い...」
僕の後頭部あたりから、何か聴こえる気がした。光の玉が話かけてきた。
「何を望む?お前は何を望む?」
(え?僕に言ってる?なにこれ!?)
「そうだ。お前に話しかけている」
(え?心読まれてる??)
「お前は、何がしたい?何を望んでいる?」
僕は起き上がって、光の玉に答えた。
「ぐすっ、僕は...もう...こんな生活嫌だ。だから...あいつらと関わりたくないです。」
不思議と冷静に返答できた気がした。
普通は怖がるだろうが、あいつらの方が怖いし、何より暖かさを感じたからだ。
光の玉は僕の頭をぐるぐると回り始めた。
「憎いか?殺したいのか?」
「そりやぁ...殺せるもんなら殺してやりたい。でも、そんなこと出来るわけないですよ...」
僕の頭を周回していた光の玉は、僕の目の前で止まり、僕が望んでいた事を答えてくれた。
「手伝ってあげよう。君が望むがままに。」
そうか、天使か。
天使に違いない。
僕は、救われた気がした。
「あなたは、もしかして僕の天使?」
光の玉は、白い羽があり白い衣をまとった長髪のダンディなおじさんの姿に変わった。
「私の名前はラウ。君がそう思うのなら天使だろうな。」
そして、天使は僕に舞い降りた。
「ちなみに、私の姿は君にしか見えないからそのつもりで。」
僕は頷いた。
「では、話を戻そう。くろとと言ったか。あいつらが憎いか?殺したいのか?」
僕はゆっくり頷いた。
「そりぁ...殺したいくらい憎いですよ。でも、人を殺したら捕まりますよ。」
ラウは微笑んだ。
「心配するな、君が困ることは起きない。」
僕は困惑した。
「それは、どういうことですか?」
「実践が早い。」
「ちょうどいい。戻ってくる。」
ラウはそう言って、笑った。
——数分後、矢田が1人で戻ってきた。
ジッポのライターを忘れて取りにきたようだ。
「お前、まだいたのかよ」
そのままライターを手に取り、僕に背を向けた。
矢田の背中から、糸のようなものが出ていた。
ラウが笑って、そこへ指をさした。
「引け。」
半信半疑で、空を掴むように腕を引く。
訳もわからず言われるがままに体を動かした。
——何かが、伸びた。
見えないはずの“それ”は、確かに手応えがあった。
「それが.....命だ」
渡されたカマが、やけに重く感じた。
カマを引く。
——重い。
何かが、確かに矢田と繋がっている。
夢中で引いた。
そして、それをカマで刈り落とした。
矢田が振り返った。
しかし表情がおかしい。
「くるしい…」
「やだ…いきたい…」
そのまま、動かなくなった。
ラウは言った。
「初めてにしてはやるじゃないか。」
僕は困惑した。
「え!?これ、何!?まさか...死んでないよな...」
いきなりの事で訳わからなくなって走って逃げた。走ってる途中に、突然足が震え出して神社を出て10メートルくらいのところでしゃがんでしまった。
「……違うよな。」
「僕が、やったわけじゃ……」
ラウは僕の額に指をあてた。
「大丈夫だ。」
額が一瞬熱く感じた。
「恐怖心と罪悪感をとってやった」
——ああ、これでいいんだ。
その隣で、ラウが静かに笑っていた。
僕は立ち上がり自宅へ向かった。
——ただいま
玄関を開けて階段を上りそのまま自分の部屋へ向かった。
学習机の椅子に座り、深呼吸してラウを見つめた。
——どうやるかは、もう分かっている。
僕は微笑んだ。
(明日が楽しみだと思えたのは久しぶりだ。やっと、普通の生活に戻れる。)
恐怖心と罪悪感を感じない僕は無敵にさえ思えた。
このまま勉強をしたが、今までで一番捗った。
こんなにスラスラと公式を解けたこともなかったのに。
とても良い気分だ。
今日も、帰りの遅い両親より先に晩御飯を食べて風呂に入った。
さて、寝るか。
良い夢が見れそうだ。
——翌日
学校に到着し、自分の席に座った。
英語の勉強をしていると、唯一の友達の糸田 太が声をかけてきた。
「おはよう!くろと」
「ああ、おはよう」
「俺も勉強しないとな...」
「そうだよ。受験近いからね。」
そういうと、太は僕の右隣の席に座った。
2人でもくもくと勉強していた。
すると束の間、僕の机が蹴られた。
反動で倒れて手を床について顔を見上げた。
輪類が睨みつけている。
「おい、くろと。つらかせや。」
その後ろには中尾が立って、無表情で見下すように僕を見ていた。
太がこっちを見ているのに気づいたが、目があった瞬間に目を逸らされた。
そうだよな。これが普通の反応だ。
僕は立ち上がり、輪類たちについて行った。
体育館裏に連れてこられたが、今までの僕なら恐怖に怯えていただろう。
今なら、体育館裏なんてベタだろと呆れてしまう余裕が僕にはある。
いつ、糸を刈ってやろうか。
ラウは僕の隣で微笑んでいる。
輪類は、僕の胸ぐらを掴み口を開いた。
「お前、あれから矢田が戻ってきたよな?そこで倒れてるのが発見されたんだよ。お前、何か知ってるだろ」
輪類は興奮しており、いつもより鋭い目つきになっていた。
僕は首を横に振り、だんまりを決めていると輪類に頭突きをされた。
痛っ
今、ここで2人を殺してやりたいが部が悪い。
どうしたものか...
そう考えている内に、次は顔を殴られた。
唇から血の味がしてきた。
「.....知らないんだ。僕は矢田くんが来る前に帰ったから...」
とりあえず、咄嗟に嘘をついた。
中尾は、ため息をついて近くにあるコーンを蹴飛ばした。
「おい!お前さ、矢田が倒れてから置き去りにしたんじゃないのか?矢田が戻ってこないから俺らも戻った時にはすでに倒れてたんだぞ。あれから、そんなに時間も経ってない。おかしいだろ。お前が気づいてないわけがない。」
「知らない。みてないよ?」
今度は中尾が僕の胸ぐらを掴んだ。
殴られる!と覚悟した瞬間に先生が抑止した。
「お前ら!何やってる!!」
担任の本野正義先生だ。
「お前ら...いつも一緒にいた矢田が亡くなって、やるせ無い気持ちなんだろうが人を殴るのは最低な行為だぞ!」
僕は保健室へ、2人は職員室へ連れて行かれた。
後から知った事だが、太が先生に僕が連れて行かれる事を報告したようだ。
良かったよ。殺していなくて。
保健室で保健の先生から傷の治療をしてもらっていると扉があいた。
黒髪ロングでスカートは膝より少し上くらい。
清楚の女神と言っても過言ではない。
僕のクラスメイトであり、学級委員長でもあり、僕の好きな人だ。
結城 天さん...。
いつか、表 天となる予定の人だ。
彼女は、僕の方に近づいて心配そうな表情でこちらを見ている。
「表君、大丈夫?殴られたって聞いたけど...」
嗚呼、もう何て事だ。
殴られて良かったと生まれて初めて思えたよ。
心配してくれてるよ。
心配してる顔も可愛いよ。
ラウ、ありがとう。
嬉しい心は排除してくれなくて。
「結城さん、心配してくれてありがとう。平気だよ。」
結城さんは、ホッとしたようで胸を撫で下ろしていた。
しばらく結城さんと会話を楽しんだら、彼女は教室に先に戻っていった。
保健の先生も席を外し、僕ひとり。
ラウが口を開いた。
「くろと、殺さなくて良かったのか?」
「あの時、殺してたら証拠は無くても僕が殺したって思われるだろ?」
ラウは微笑んだ。
「そうだな。怪しまれるかもしれないな。ただ、そいつの記憶を改ざんしたらいいじゃないか。だが、代償はあるぞ。」
はぁ?僕は驚いた。
そんなこと聞いてないよ。
ラウはとぼけた。
その力はお前に譲渡も貸し出しもできないからな。私がやってやるよ。と言って、また微笑んだ。
ラウは他にも隠している事があるのでは?と思う事もしばしばあったが聞かないことにした。
今は、あいつらを殺す事ができたらそれでいいからだ。
「ラウ。あなたはいつまで僕を助けてくれるの?」
それは君が私を必要としなくなった時だよと答えた。
本当に有難い。
ラウは僕にとって天使だ。
死神とさえ思ったが、そんなのどうでもいい。
僕は殺されていないし、救ってくれたんだから。
——あれから数日が経った。
輪類と中尾は謹慎が解けて通学してるが、一切声をかけてこなくなった。
それでも、いつか殺してやるという気持ちは変わらない。
今まで、どれだけ苦しかったか、痛かったか。
このまま許すと報われない気がした。
そして、進展もあった。
結城さんとの会話が増えたんだ。
今までは挨拶程度だったのに。
そこに関しては、あいつらに感謝している。
だから、まだ生かしてあげてるんだ。
それがせめてものお礼だよ。
たまに輪類から視線を感じるが気にしないようにした。
しかし、その視線は僕に対してでは無かった。
それに気づいたのは後の話だ。
休み時間になり、勉強もせずに結城さんに声を掛けに言った。
時間が経つのは早い。
あっという間にチャイムがなり、次の授業時間が始まる。
そうか、結城さんはお花が好きなんだ。
家の庭で花を育てているらしい。
ほっこりするなぁ、とニヤけながら授業に参加した。
シャープペンをくるくると指で回していたら、床に落としてしまった。
ペンを拾って顔をあげた瞬間に太の顔がみえた。
あれ?太が悲しそうな表情をしている...
どうしたんだろう?
次の休み時間になり、気になって「太!」と声をかけようとした瞬間に太は席から立ち上がり教室を出て行った。
そこには、中尾が太を連れて何処かへ行こうとしている。
僕は後ろから気づかれないような距離を保ちながら尾行した。
またお決まりの体育館裏だ。
こっそり覗いてみると、中尾が太の肩を殴り始めた。
そうか、太が肩パンの相手をされていたのか。
だから表情が曇っていたのかと思うと怒りが込み上げてきた。
こっそり近づいて、中尾の背中の糸を引っ張って刈った。
すると、中尾が「う...うぅ....」と苦しみだして倒れた。
太は僕に気づいた。
「くろと!?」
「心配だったから後をつけて来たんだ。そしたら、中尾くんが倒れたから...」と告げると
「先生呼ばなきゃ!」と太は焦りながら職員室へ走って行こうとした時、輪類がやってきた。
太はそのまま輪類とすれ違い、職員室へ向かった。
輪類は倒れている中尾の元へ駆け寄った。
「おい!中尾!どうした!?大丈夫か!中尾!中尾!!」
中尾を抱えながら、僕を睨みつけた。
「くろと、これはどういうことだ!?」
僕はラウを見つめた。
(ラウ!記憶改ざん頼むよ)
ラウは微笑んだ。
いいぞ。
輪類は頭をかかえた。
「ううっ」
次の瞬間、輪類は僕を睨んだ。
「おい、くろと。中尾って太と肩パンしていて、太から殴られて倒れたんだよな?」
僕は首を傾げた。
輪類は、「太の野郎!!」と叫んでいた。
すると太と保健室の先生がやってきた。
輪類は叫んだ。
「太!お前!!きいたぞ!!中尾と肩パンしていて、お前が中尾の顔ぶん殴ってから倒れたままなんだってな!!」
太は首を横に振った。
そこから太は胸ぐらを掴まれたが他の先生たちもやってきて抑止された。
輪類の今までの行いと、太の肩の痣から誰も輪類の味方をする人はいなかった。
警察も現場検証をし、太が中尾の顔を殴ったという事は否定された。
心臓発作として片付けられた。
なんて滑稽なんだろう。
輪類はこれでひとりぼっちだ。そう思った。
次の日も、その次の日も太は僕を避けている。
そんな気がしてならなかった。
どうしてなんだろう。
「太...最近、俺を避けてないか?」
太は俯いたまま、ようやく口を開いた。
「あの時さ、輪類くんに言ったの君なんだろ?僕が中尾くんの顔を殴ったから倒れたとか、その場しのぎの言い訳だったとしても、ひどすぎるよ。皆んな輪類君の言うこと信じなかったから良かったけど....」
僕は驚いた。
輪類の記憶改ざんした代償がこれとは...
唯一の友達を失いかけてるじゃないか。
「違うよ。あいつが勝手に思い込みで言ってただけだよ。」
僕はすぐ否定したが信じてもらえなかった。
「もう話しかけてこないで」とさえ言われた。
あれから輪類も学校にきていない。
輪類に怒りが込み上げてきた。
余計な事を言いやがって!
輪類が行きそうな所は想像ついている。
なんたってパシリをされていたから。
笑えてくるよ。
何ヶ所か輪類が居そうな所を探してみて3ヶ所目で発見した。
矢田が死んだ神社の裏側でタバコを吸っていた。
「やぁ、輪類くん」
輪類は僕を睨みつけた。
「なんだ、てめぇ。」
僕は輪類くんの前で爆笑してしまった。
あははは、いや、面白いね。爽快だよ。
輪類はタバコを投げ捨て、こっちに向かってきた。
「輪類くん!矢田くんと中尾くんがどうして死んだか教えてあげようか?」
「あ!?」と輪類のボルテージは最高潮に上がっている。
「僕が君たちを排除したんだ」
といって、輪類の糸を引っ張ってカマで刈った。
「はぁ!?」と輪類は、僕を殴りかかろうとした時に倒れた。
人の死とは呆気ないものだ。
僕はすぐに神社を後にした。
翌日には、すぐに学校に話が広まっていた。
矢田、中尾、輪類の死。
これは何者かによる殺人じゃないのかと。
そんな話も太とは出来ていない。
彼は僕の顔を見ようとしないし、隣の席なのに存在を消しているように過ごしている。
まぁ、仕方のないことか。
こうして僕らの仲は引き裂かれたんだから。
——3人が死んで数日経つが、毎日が楽しかった。
毎日、結城さんが僕に話しかけてきてくれた。
「くろとくん...最近、とても楽しそうだね。」
そうかな?そんなことないよ?と適当に返した。でも、ニヤけてしまう。
結城さんと話ができてるし平和だし、そりゃそうだよな。
でも、結城さんは悲しそうな表情をしている気がした。
「あの....くろとくん、放課後空いてる?」
即答で空いてるよと返事した。
どうやら、着いてきて欲しいところがあるようだ。
そこは、体育館裏だった。
結城さんも体育館裏とは...ベタだなぁ。
でも、それがいい。
「くろとくん...ここで中尾くん亡くなったんだよね?」
僕は頷いた。
すると、僕の手を引っ張って例の神社へ向かった。
「くろとくん...ここで矢田くんと輪類くんが亡くなったんだよね?」
僕は、「う、うん。そうだけど?」と返事した。
結城さんは泣きそうな顔で話し出した。
「あのね...私...」
え、なに?まさか愛の告白??
僕はドキドキした。
「どうしたの?」
結城さんは涙を流して僕に強烈な一言を言った。
「私は...あなたの...死を望みます」
はぁ??な、なぜ?
僕は口をあけたままだった。
「ちょ...え、どうしたの?なんで?」
結城さんから指を指された。
「あなたには悪魔がいる。そして、悪魔の力を利用して3人を殺した。」
何を言ってるんだと弁明したが彼女は横に首を振ったままだった。
仕方なく殺した事は認めた。
「確かに、そうだよ。3人の命は僕が刈ったんだよ。天使の力を借りてね。」
泣いている彼女は叫んだ。
「違う!そいつは天使なんかじゃない!悪魔よ!何を言ってるの!?」
(え!?ラウのことが見えてる?一体、いつから?)
僕は信じがたい顔をした、ラウは隣で微笑んだ。
「あははは、そうか私が見えているのか。ここ最近は視線が痛かったよ。くろとに話かけてたのも私を監視するためか?」
結城さんは力強く頷いた。
「そうよ。3人が亡くなってから、もうこれ以上は犠牲者が増えないようにって祈ってたら、天使が舞い降りたの。」
ラウは今までにない表情をした。
すると結城さんの後ろから光が溢れてきた。
ラウの顔は強張ったままだ。
「ま、まぶしい。」
「ラウ!どういうこと?天使なんでしょ?」
それは君の思い込みにすぎないよ。
今の姿も君の思い込みなんだから。
「表しか見ないから、人は間違える」
僕は絶望した。
天使じゃなくて悪魔だなんて...
それよりも、結城さんに敵対されている。
どうにかしないと...
結城さん目掛けて引っ張ったが糸が...でてこない
ラウは観念したような表情になった。
あいつの後ろをみてみろ。
天使の加護を受けている。
結城さんの後ろのまぶしい光から天使のような姿がみてた。
ラウが絶望しているようにみえた。
「くそ、人間どもの死を養分として何が悪い!」
あ...そうか、僕は利用されていたのか?
そして、結城さんから最後の言葉が聴き取れた。
「くろとくん、さようなら」
光のレーザーのようなものが、結城さんの指から放たれた。
それは、僕とラウを貫通した。
嗚呼、でも暖かいな。
とても良い気分だ。
そして、僕とラウは消滅した。
天使の力で、この世の全てから僕の存在は抹消された。
もう誰も覚えていない。
結城さん以外は。
結城さんと僕の運命の糸だけは繋がってる。
そう願いたい。




