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45.お別れ会を開くわよ!

 ユリウスの秘密を知ってから約二週間。

 彼にかけられている魔術に関しては進展はなかった。


 一方、リックのお別れ会の準備と、回復薬の作成の方は、どちらも順調だ。

 お別れ会については、孤児院の皆も賛成してくれた。

 リックにバレないようにこっそり準備を進めてくれているらしく、当日驚く姿を楽しみにしている。


 回復薬の方は、エリックが考えてくれた散水機の運用が本格的に始まった。

 エリックがデータを取ってくれたのだが、魔石を砕いて土に撒くより、魔道具として散水機に魔石を組み込んだ方が費用面でも魔力的にも効率がいいそうだ。

 薬草も、魔力水の方が成長がいいということで、散水機を導入することになった。


 ビビアンの試験農場で採れた薬草で作った回復薬の品質も、ノークス領や隣国の回復薬と変わらないという確認が取れたため、皇室領にて栽培を進めている。


 希望する貴族がいれば帝国中に広めていきたいが、以前、ノークス領以外の領地では栽培がうまくいかなかったこともある。

 こちらは、ユリウスと話して、一度、皇室領での栽培が成功すると実績を作ってから、広めようということになった。


(さすがに、帝国全土で薬草を作るところまではいかなかったけれど、皇室領は任せてもらえたから、回復薬を沢山作るわよ!)


 ノークス領にも、新しく村を一つ作った。

 これは、ジョージの希望でもあった。

 ノークス領は、伯爵位から男爵位へと爵位が下がり、不祥事の件もある。

 今、無理をする必要はないのではとも思ったが、将来を見据え、どうしても村は増やしたいらしい。


 確かに将来を考えると、今が村を増やすチャンスだろう。

 他領でも薬草の栽培を始めれば、わざわざノークス領に行って薬草を作りたいという人もいなくなる。

 今ならば、ビビアンの援助もある。

 ただ、この時期に村を増やすことに不安もあるため、皇室領の薬草畑に指導員を派遣してもらうことを対価に、多めの援助を行うこととした。


 ちなみに、スラムから薬草農家への就職希望者を募ったところ、ノークス領で働きたい者と、皇室領で働きたい者とに別れたので、人が集まらないということにはならなかった。


(ノークス領の方が元いた土地に近いとか、新天地で一から働きたいとか、人によって希望が違ってよかったわ)


 そういうわけで、薬草については、今年は国内での生産量が増え、国産の回復薬が夏には市場に並び始める予定だ。



 数日後。

 ビビアンはユリウスと共に孤児院に向かっていた。


 今日がリックの就職及び、孤児院卒業のお祝いの回の予定である。


「ビビアン様、ようこそいらっしゃいました!」


 皆に出迎えられ、普段通りに音楽室へと向かう。

 すると、ベンが椅子を持ってきて、ミアとトムがリックをそこに連れて行く。


「え、なに? どうしたんだ、みんな。今日は練習じゃないのか?」


 戸惑うリックに、皆が顔を見合わせて「せーのっ」と息を合わせる。


「リック、孤児院、卒業おめでとう!」

「……え、みんな!? あ、ありがとう!」


 リックは一瞬ぽかんとした顔をしたものの、すぐに笑みを浮かべる。


「今日は、リックのお祝いよ」


 ビビアンの言葉を引き継ぐように、ノエミが言う。


「リック、今までありがとう。あなたがいてくれて、本当によかった。私一人じゃこの孤児院を守り切れなかった。寮に入ると聞いたわ。何かあったら……、いいえ、何もなくても、いつでもこの孤児院に帰ってきてね。リックのこと、いつも応援しているわ」

「今日は、リック兄ちゃんのために、みんなで歌を準備したんだ」

「みんなで、兄ちゃんがいない時に、練習がんばったよ!」

「私達の演奏、聞いてね!」


 リックは入団後の打ち合わせや、引っ越し作業などでこの一ヶ月孤児院を空けがちだった。

 皆、その時間で必死に練習を行っていた。

 フランの合図で、ピアノの演奏を始める。


 一曲目は『ハチさんのお散歩』、二曲目は『幸せを探しに』。

 子供達が二曲歌ったところで、三曲目はビビアンが歌う『約束をその手に』。

 最後の曲は思い出もある『銀色のお星様』。


 ユリウスは忙しいにも関わらず孤児院の練習にも参加してくれて、全ての曲に対して魔術での演出をつけてくれた。

 リックは、自分一人のためにと最初は恐縮した様子だったが、二曲目の途中で涙が止められなくなっていたようだ。

 最後の曲が終わると、リックは涙を拭きながら、拍手をする。


「みんな……、ありがとう……。オレ、頑張るよ。あと、休み、もらえたら帰ってくる。だから、……オレのこと、忘れないでくれよな」

「わかってる!」

「兄ちゃん、約束、絶対だよ!」


 小さい子供達から、リックに抱きついて泣いている。


「てか、選曲、泣かせにきてるだろ」

「えへへ、ばれた?」

「泣いても、お歌のせいにできるよ?」

「……うん、そうだな」


 落ち着いたところで、広間に向かう。

 今日はビビアンとユリウスが沢山のお菓子とジュースを持って来ている。

 皆で分けあい、リックの卒業とこれからの活躍を盛大にお祝いしたのだった。

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