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41.リックの劇団面接に付き添うわよ!

 一週間後。

 リックの劇団『女神の鏡』での採用面接のため、リックと共に劇団の事務所を訪れた。


 あの後、ビビアンの方でも、ノエミが受け取った手紙が、本当に劇団『女神の鏡』からの勧誘か確認したが、間違いなく『女神の鏡』からの採用で間違いなかった。


 事務所の入り口で馬車を降りると、リックに尋ねる。


「リック、準備はいい?」

「はい。ビビアン様のおかげで万全です」


 リックには礼儀作法の指導を行っているデボラの臨時授業を受けてもらい、準備はバッチリだ。


「では、行くわよ。緊張はすると思うけれど、いつも通りで大丈夫だからね」


 受付で名を告げると、すぐに応接室に通される。


「ビビアン様、このお茶おいしいです!」

「よかったわね」


 帝国一の劇団というのは、名ばかりではないのだろう。

 運ばれてきたお茶を味わっていると、劇団の人がやってきた。


「本日は、足をお運びいただき、感謝いたします。劇団の長をしているブルーノと申します」

「ビビアンよ。こちらはリック」

「リックです。本日はよろしくお願いします」


 団長は、三十代半ばだろうか。

 貫禄がある体つきで、溌剌としている。


「皇妃殿下でございますね。お目にかかれて光栄です。リック君、よろしく」


 孤児院の後見をビビアンがしていることは、少なくとも帝都で知らない人はいない。そのため、身分を隠して来てはいない。

 ブルーノが、リックの様子に満足げに頷いている姿を見て、ビビアンは少しだけ警戒を緩めた。


(少なくとも『皇妃』との繋がりだけを目的に、リックに声をかけたわけではなさそうね)


 そんなことを考えていると、ブルーノが言う。


「早速ですが、本題に入りましょう。この度は、当劇団へ入団をご検討いただき、感謝いたします。まずは、簡単に説明をいたします」


 ビビアンとリックが頷いたのを見て、ブルーノが説明を始める。


「まずリック君は、劇団に所属後、団員として普段はこの場所でレッスンを行ってもらいます。裏が団員用の研修施設なのです。そして、舞台がある時にはその手伝いをしてもらうことで給料を支払います。大道具や照明、役割ごとに給与の額は固定で、一番高いのは舞台に立つ役者です」


 額を見せてもらうと、最初はギリギリ暮らしていけるだけの金額しかもらえないようだ。

 だが、反対に舞台役者の給料はとんでもない。


「どのくらいの頻度で公演を行っているのかしら?」

「大きいものは、年四回、大劇場を借りて行う公演です。大劇場での公演がない月も、小さな劇場で月に一回は公演を行っています」

「なるほど。毎月、給与はいただけるということね」

「代わりに、練習に公演準備と毎日忙しく、休みはあまりあげられません」


 寮もあり、希望すれば朝夕の食事もつくという。


「他に何か質問は? リック君、何かあるかい?」

「……どうしてオレに声をかけてくれたんですか?」

「殿下のコンサートを私も見ていて、舞台映えすると思ったんだよ。それに、この劇団は君のようなタイプの子はいない。それで、舞台の幅を広げられるのではないかと思ったんだ。今度、うちで新しい演劇の形を試そうとしていてね。台詞を歌いながら劇を行うという形のものなんだ。この間のコンサートで、既に君は高位貴族にも顔が売れているし、きっと目玉になる」


 なるほど、ミュージカルのような物を始めるのかと頷くビビアンに、リックは固い表情で頷いた。


「話してよかったの?」

「先日、専売法での保護申請が通りましたから」


 ならばビビアンが真似して同じようなことを企画すれば、専売法により決められた金額が徴収されるということか。


「しっかりなさっているのね」

「光栄です。もし他にご質問がなければ、折角ですから団員の練習風景などや施設をご見学いただければと思います」


 研修施設では、発声練習や、ダンスレッスンをしている様子や、次の舞台の通し稽古をしている風景などを見せてもらった。

 初めは緊張していたリックだったが、目を輝かせて見入っている。


(大丈夫そう、かしら)


 ノエミからは、基本リックの意思に任せると言われている。

 ただ、ビビアンとしては、リックが気を回して、行きたくないのに行こうとするような様子であれば、断るよう助言するつもりであった。

 断ったことで、今後孤児院に劇団からの声がかからなくなるかもしれないと、リックなら心配するかもしれないと思ったのだ。

 だが、その心配はなさそうだ。


「以上が、こちらの劇団の説明になります。前向きに、ご検討いただけるでしょうか」

「お願いするのは、オレの方です。ぜひ、お願いします」

「ありがとう! これからよろしく、リック君!」


 ブルーノがはっとしたようにビビアンを見る。

 その視線に頷いた。


「リックの気持ちを尊重するわ。でも、孤児院を出ても、私が後見する大切な子であることには変わりないわ。ブルーノさんも、その点忘れないでね」

「もっ、もちろんでございます!」


 ブルーノの様子に、ビビアンは微笑む。

 これで、リックが孤児院出身だからと変な扱いをされることはないだろう。

 ブルーノには、もしビビアンに何か連絡を取りたい場合は孤児院を通すように言い含めて、帰途についたのだった。

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