表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/49

34.枯れてた薬草が元気になったですって?

 その後は、昼食を挟み、午後からは薬草のお世話の注意点や肥料の調合などについて教えてもらい、夕方に城に戻る。


「戻る前に、私が持ってきた薬草を見に行ってもいいかしら」

「もちろんでございます。ただ、昨夕に早速対処はしておりますが、あまり期待なさらないでください」

「わかっているわ。原因がわからないのだもの……」


 今日、色々な知識を教えてくれたジョージでさえ、見たことがない状態だと言っていた。

 ただ、少しでも何か変化が現れているのではと思ってのことだった。


 城の敷地内でビビアンの薬草の世話をしているそうだ。

 預けた鉢を見て、ビビアンは驚きの声を上げた。


「一体、何をしたの? 薬草が元気になっているわ!」


 信じられないことに、全ての薬草の葉が水分を取り戻していた。

 さすがに茶色く枯れてしまった部分はそのままだが、緑が残っていた葉には水分が戻っている。


「昨夕、私が指示を出し、こちらの四鉢は、畑から持ってきた土に植え替え、あちらの四鉢は、薬草が元気がない時に使う液肥を水に混ぜました。そして、残りの二鉢には、比較対象とするため何もしていません。この状態で、様子を見るよう言いつけていました」


 本日、世話をした者を呼び出す間に、ジョージが説明をしてくれる。

 昨日の段階では、薬草はまだ元気ではなかったそうだ。

 そして、鉢についての説明を終えると、世話係がやってきた。


「世話を任せていた者は、平民です。失礼な話し方をしてしまうかもしれませんが、何卒ご容赦ください」

「気にしないわ」


 ビビアンの言葉にユリウスも頷く。

 そうしている間に、野良着を着た農民がやってくる。


「ビル。呼び出して悪かったね。今日、どんなことをしたのか教えてくれないか?」

「あ、あの……。あっしは、若旦那に言われて、いつも薬草にしている世話をこいつらにもしただけで……ご、ございます」


 ビルはビビアン達を気にしつつ、ジョージに答える。

 ビビアンは、ビルを怯えさせないように優しく話しかける。


「いつものお世話って何かしら?」


 だが、ビルはびっくりしたようにビビアンを見て、ジョージを見る。

 ジョージが頷くと、ビルはおっかなびっくり話し出す。


「畑の薬草にするのと同じ時間に、み、水を――」

「水をあげたのね。それは、全ての鉢に行ったの?」

「は、はい。他は、誓って何もしてません、です」


 聞きたいことは全て聞けた。

 ジョージが許可を与え、ビルは怯えながら戻っていく。

 その背を見ながら、ビビアンは考える。


(土に原因があるかもと思っていたけれど、植え替えていない鉢の薬草も元気になっている。ということは、水に理由があるのかしら……?)


 ふと、前世で、日本と国外とで、水質が違うと聞いたことがあるのを思い出した。

 思いつくまま、ジョージに尋ねる。


「薬草に与える水は何を使っているのかしら?」

「城で使っている水です。レミ川からひいた、普通の水のはずですが……」

「今日見てきた薬草畑も、同じ水をあげているのね?」

「はい。飲み水も全て、この辺りでは川の水を使っています」

「気になるわね……」


 ビビアンの言葉に、ユリウスが頷く。


「そうだな。水に原因があるとしか思えない」

「ユーリもそう思うのね」


 ノークス伯爵領を流れる川は、国境の山脈に水源があったはずだ。

 回復薬が特産の隣国もあの山脈の反対側になる。


 それに帝都周辺は別の河川の水を使っていた。

 もし、薬草が水の影響を受けるのなら、ビビアンの薬草が全滅したのも頷ける話だ。

 できることならこの場で川の水と他の場所の水を比べたいが、流石にビビアンにそんな技能はない。

 せめて道具があればできないこともないだろうが、この場にはそんな道具さえなかった。

 となると、比較ができる誰かに頼むことになるだろう。


「川から汲んだ水を持って帰ることはできるかしら。帝都の水と比較して、成分分析をしたいわ。何か違いが出るかもしれないの」

「では、樽で準備いたしましょう。水だけでよろしいですか?」

「念のため、土もいただける?」

「かしこまりました。よろしければ、先に王都にお送りいたしますか?」

「頼むわね! 分析は誰に頼もうかしら……」


 ビビアンにはギブソン商会くらいしか伝手がない。

 石けん事業で忙しいなか申し訳ないが、理由を説明して協力を求めるしかないだろう。

 そう考えていた時だった。


「私から宮廷魔術師に頼もう。もし、薬草の栽培が他の土地でもできるならば、国益にも繋がる」

「ユーリも協力してくれるのね。感謝するわ」

「……もしこれで水が原因とわかれば、本当に他の領地でも薬草が採れるようになるかもしれないのですね」


 ぽつりとジョージの呟きが聞こえ、ハッとして彼の方を見る。


「私の薬草畑が成功したら、やはり困るかしら?」


 その質問に、ジョージは首を横に振る。


「正直に申し上げると、影響は出ると思います。しかし仕方がないことだとも思います。それに専売法の保証期間以上に、この伯爵家は回復薬事業を独占していましたから、その期間のノウハウもあります。なんとかするしかありません」


 意外にも、彼は決意を固めているようだ。


(昨日の伯爵のように、やめてほしいと言われなくてよかった)


 薬草の病気の原因はまだわかっていないが、できるだけ伯爵家の損にならないように考えたい。


 そして、ジョージはその日のうちに水と土を運ぶ手配をしてくれた。

 本日中の出発は流石に無理だが、明日の朝一で荷物を載せた荷車が帝都に向けて出発する。

 配送してくれる伯爵家の従者にはビビアンとユリウスの手紙も預けているし、ユリウスはそれとは別の連絡手段もあるそうで、帝都には既に連絡が届いているそうだ。

 ビビアン達が帰らずとも、荷物が帝都に届き次第、宮廷魔術師が分析を行ってくれると聞き、安心することができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ