九話 出発
昼食をすまして目的の場所につくと案外早く獲物がやってきた、翼をあわせて十メートルはありそうな巨大な鳥だ。
そのまま大きな鉤爪を向けて突っ込んできたのを左に転がって避ける。
「あれにつかまったらかなり痛そうだな」
槍じゃあの高さまで届きそうにないからな、俺の力を使うか。
俺の能力は拘束に特化している、今回もその力を発揮しようと俺はベアンテを放ち巨鳥の腹に巻きつけたまではよかった。だがやつは気にせず空を舞う、当然ベアンテをもっていた俺の体はやつの動きに従い空にひっぱられる。
やつは俺という荷物が気に食わないらしく、いっきに上昇してそのまま俺を地面に振り払う。風が耳もとでびゅんびゅんいいながら地面へと向かっていく俺の体がまるで他人事のように感じた。遠くでユーリィが何かさけんでいるがよく聞こえない。そのまま地面に墜落すると鈍い音がして土のかけらがぱらぱら舞う、普通なら全身骨折で死んでいるとこだが不思議と体の痛みは無い。たちあがって怪我がないか確かめても赤のローブのどこにも汚れは無い。まて、なんで汚れてないんだ?あの勢いでたたきつけられて土汚れがないのはおかしいぞ・・・・あのロッドマスターは大変なものをよこしてくれました。
「イツキの仇だー!」
俺が地面にたたきつけられて死んだと思ったか(普通は死んでいるが)、ユーリィがそういうとあの遺跡で手にいれていた碧色の剣から透明な気迫が立ち上り、かなりの高度にいた巨鳥にまでひとっ跳びするとその剣を突き立てる。すると巨鳥は内部からばらばらに解体された。
「イツキお前のことは忘れない。」
かっこよく地面に着地して一言きめるユーリィ。
「かっこいいー!サインして」
俺が拍手とともにそういうと、
「そ、そうか?でもまずは友人を弔わせてくれ」
「どんな人なんですか?」
「パッと見はお前みたいな顔をしていて、ちょうどお前のような変わった赤いローブを身にまとっている・・・・・・ってお前イツキじゃないか!?」
ユーリィはいよいよ万能になってきたな
あれから俺が生き残ったわけを話すとユレイアは俺のローブをじろじろと眺めると、
「どうやら物理的衝撃を緩和する魔法と常に最善の状況を保つ魔法がかけられているな。」
「やっぱすげぇなロッドマスター!」
「でも気をつけるんだぞイツキ。そのローブには防刃効果や魔法耐久力は無いに等しいんだからな。」
「なんでロッドマスターはその魔法をかけなかったんだ?」
「簡単だ。まず魔法で負けることは無いし、あいつは接近戦もできたが本来魔法使いは遠距離戦に特化してるからな。それにマジックアイテムはたくさん魔法をかけると一つ一つの効果が薄くなるという性質をもつから、それに使う分を物理的衝撃を緩和する魔法にそそいだ方が効率的だと思ったんだろう。」
よく勝てたな俺。
「その剣もなんかのマジックアイテムなのか?」
「正確に言うと魔剣だな。風の属性が付加されている。」
「俺もユーリィみたいに武器をちゃんと使えるようになりたいな」
「まぁ慣れだ慣れ。イツキは経験さえ積めばいいとこにいくぞ。」
とりあえずクザにもどった俺たちだが依頼に失敗したので当然報酬はなかった。
「うむ、そろそろ路銀が尽きてきたな。」
「あとどのくらいなのか?」
「だいたい三日分だな。」
「よし俺がかせいでくるよ!」
ただでさえ今までのお金はすべて払ってもらっているので俺はそう提案した。
女のひもになるなんて許されんからな。
「ささっとギルドで稼いでくるわ」
「油断するなよ」
俺はギルドに行きクザ周辺のモンスター討伐の依頼をとった。
なんでも今日戦ったあの巨鳥、名前はバランというらしいが、それの巣が近くの岩場にできていて、近くの牧場の家畜がさらわれているらしい。
リベンジと金のためにふるぼっこになってもらおうか。
問題の岩場にたどり着いた俺は、ギャアギャアうるさい鳥どもを見て驚いた。
巣の中には二十羽以上の群れがいたのだ。確かに急いでたから何羽かは見てなかったけどまさかここまでとは。
二度と同じミスはしないように今度はベアンテを投げ放ち翼をおさえて一網打尽にしようと思ったが、半分はベアンテから逃れた。もう半分は怨みをこめてかなり強く締め付けたから気絶をしてしまった。
空に逃げた連中は怒りで突っ込んできたが、軽くよけた後は用意していたベアンテの網でみんな捕まえた。一羽ずつ近づいて頭に槍を突き刺しとどめをさす。心ぐるしいが生きるためだ。
あとは換金部位である一羽に一枚しかないバランの尾羽をむしりとる。
全ての羽をむしりとりギルドに帰ったころにはもう夕方になっていた。
「すみません、モンスター討伐の確認と部位の換金をおねがいします。」
「では指輪をこちらに」右手をさしだすと、小さな機械を受付が指輪にかざす。
「無事バラン二十羽の討伐を確認いたしました。部位の換金はバラン二十羽分なので20万ラドとこちらは報酬の30万ラドです」
お金を受け取り、あらかじめ予約していた宿屋兼酒場にはいるとユーリィが俺を待っていた。
「どうだった?」
「この通り」袋を上に掲げながら答える。
「よし、明日は私の恩人に無事帰ったことを報告しに行かなければな」
「どこにいるんだ?」
「ザルナ王国の首都、エリアノだ」
更新遅れてすみません。
なんだか展開が早い気がするのは俺だけでしょうか?