八話 武器と心のぬくもり
武器屋ではいかつい顔した歴戦の戦士が店員だった。
「あ~ら、ユレイアじゃないのお久しぶりね。」
「今日はこいつの武器を見てやってくれないか。」
いいいい、今このおっさんから声が発せられたのか??
「どうしたの坊や?震えちゃって、か・わ・い・い。」
俺は吐き気を必死にこらえる、とりあえず武器を探さないとな。
「じゃあじゃあ、まずこれはどう?」
オッサンが取り出したのはヌンチャクだ。
「あのまず最初はロングソードとか手ごろなの選ばない?いきなりヌンチャクってどうなんですか?」
「ちょっとしたジョークじゃないの、怒んないでよ。」
「もう俺が探すんでいいですよ」
「つれないわね。」
男がすねてもかわいくないぞ。
店内は古今東西の武器で敷き詰められている。
「どーしよっかな?」
とりあえず一本ずつ持ってみるが、どーもしっくりこないな。
しばらく悩んでいると店の奥からなにかが落ちる音がしたので、その方向に向かってみた。
床には日本風の槍が落ちていた。俺が一歩進むたびに振動するそれはいかにもな感じを出していた。
「変わったものを気にいったわね。」
いつのまにか後ろに立っていたオッサン、見た目どうりの実力は持っているみたいだ。
「どうする?買っていくの?」
「ちなみにお値段は?」
「二十万ラドになりまーす☆」
「ユレイアどうなんだ?」
「普通より少し割高だな。」
「お願いします!」
「そんなに気にするな、先行投資ってやつだ。」
ちなみに一円と一ラドはほぼいっしょだ。
「武器も手に入ったことだし、とりあえず魔獣の討伐Cランクを受けるか。」
俺は掲示板の左端にあった依頼書をはがして受諾する。
場所はクザから北へ向かう街道の途中に現れるらしい、依頼書についているモンスターの絵からすると大鷲のようなやつらしい。
「私はギリギリまで助けないからな。」
街道を歩きながらユレイアは言う。
「わかってるよ。」
俺だってユレイアの前でかっこ悪いところ見せたくはないしな。
街道は大人が十人横になっても歩けるくらい広い。まぁさっき通りすぎていった荷車を引っ張っていた牛とトカゲを合体させて大きくしたような生き物がいるような世界だから決して広いとは言い切れないがな。
はぁこの世界に慣れる日が本当に来るのかな?ちょっとホームシックになってきた。
「どうしたんだイツキ?そんなに悲しそうな顔して?」
ユレイアは案外するどい、あるいは俺が顔に出やすいタイプかもしれないが。
「少し故郷を思い出していたんだ。」
「故郷は好きか?」
「たぶん俺が思っていた以上にな。」
「そうか・・・そろそろ休憩にしないか?あのユーリィの木の下で昼食をとろう。」
ユレイアがさした方向にはピンク色に色づく花を咲かした木が立っていた。
「桜じゃないか!?この世界にもあるのか?」
「イツキの故郷ではユーリィをサクラと呼ぶのか。きれいな名だな。」
「でもユーリィとユレイアって似てるな。」
「当然だ!私の名はユーリィからとられたんだ。親しい者は私を本名では無くてユーリィと呼ぶぐらいだ。」
「そうなんだ。」
その言葉を聞いて俺の胸に黒いものがよぎる。
「イツキになら許す。」
ユレイアは俺の心を読めるんじゃないか?
「ユーリィ。」「どうした?」
「ご飯にしないか」
顔が自然と笑顔になってしまうのはしょうがない。