六十五話 例のぬた~んって奴です
何だかやけに体が重い。昨日はかなり遅くまで飲んでたからな~と眠気を振り払い目を開けると目の前には見事に割れた腹筋があった。どうりで重いはずだと誰だかわからないがとりあえずどかしてその腹筋の持ち主を確認するとそれは酒瓶を片手に熟睡しているナーガだった。
どうやら俺達はあそこでそのまま騒いで寝てしまったらしく、毛布も掛けずに床で寝てしまっていたようだ。その中にはブリッジのまま寝ていたり、男同士でBLのように抱き合って眠っているやつなど、大陸一有名なのは個性が強いからか? という疑問が出てくるくらいである。クロトはイケメンの意地? なのかイスに座って片足を抱えるようにかっこよく眠っていてムカついたので、起きないように細心の注意を払いながら地面にカエルのように四つんばいにさせた。いい気味だ
さすがに寝ているのは男たちだけで女性たちは騒ぐ俺達を他所にベッドで寝てしまったのだろう。このまま寝起きドッキリでもしようかと思ったがさすがに一人で行く勇気はないし、ナーガやイケメン野朗も起きる気配はない。
外からは時々荷車で何かを運んでいるのだろう、ゴトゴトという音がするだけだ。
随分早く起きてしまったな。普通ならもう一眠りするとこだが冷たい床の上で二度寝などお断りだ。少し長い散歩にでも出かけたら帰ってくるころには朝食の準備を女性陣がしてくれているところだろう。
早速散歩に出かけようとしたところでフィランを握ってないことに気づいた。
空っぽになっている酒樽と熟睡中の人を避けながらフィランの姿を探すと、まだ中身が充分ありそうな酒樽に三本の槍が入っているのを見つけた。
「ったく! 誰が俺のフィランにこんな真似しやがったんだ!?」
『間違いなくあなたですよマスター』
「えっ!? 嘘っ?」
『はい、少し酔いが回ったマスターが自らの手でそうなされました。あのショタ槍には相応しい待遇ですね♪』
酔いというのは人を狂わせるものだなとしみじみ思いながら急いでフィランを酒樽から救いだす。酒樽につかっていただけあってすごく酒臭い。フィランには悪いことをしたな
『お~い、フィラン大丈夫か?』
『ん? どぅお~したのイチュキ?』
ダメだこいつ完全に酔ってやがる。早くなんとかしないと……
『僕はじぇんじぇん酔ってないよ~。ケラケラケラッツ♪』
酔った人間の常套句を言うフィランの酒気を醒ましてやろうとミサゴの力で宙へ浮かばせた【天沼矛】と【地虚矛】を激しく回転させ、ミサゴの方はおれ自身の手で回す。
『おぇっ、気持ち悪いよイツキ!』
『槍だから吐けない、ということはこれ以上気分も悪くならないから後は直るしかないだろう』
『マスターの理論はかなり無理やりですけど、そこに痺れるっ! 憧れるっ!』
戯れがすんだところで本部へ出てたくさんの露天商がいる大通りへ向かう。結局酔いが醒めたフィランはかなり不満気だったがそれでもまた置いてかれることを嫌がったので持っていく。むしろ俺はフィランが拒否しても持っていくつもりだったので結果は変わりないんだけど……
あわよくばフィランの穂鞘が欲しいとこだったがさすがに店が開いてなかったので諦めることにした。しかしそのほかの店は結構朝早いというのにあいていた。
やはり文化の違いと言うやつなんだろうか?
朝食に向いてそうな薄いパン生地に粉砂糖をたっぷりかけたものを売っている店や、アクセサリーショップ、魔導具店などいろいろやっている。
その中で気になったのがアクセサリーショップだ。俺がいない間も探してくれていたマキアやナーガ、クロトたちに感謝の気持ちを表したいし、ユーリィは今の状況じゃおそらく受け取ってくれるとは思えないが記憶が戻った時に渡す為に何か買っておきたい。
指輪は自らが冒険者であるという証明の為に既にあるので渡すとしたら、腕輪かピアスかネックレスかあるいはちょっとした小物でもいいかもしれない。いずれにせよ渡すのならある程度のセンスが必要になってくるので考える時間も欲しいし、何より金がまったくない。さすがにナーガやクロトに金を借りて買うわけにもいかないので今日は何かギルドで依頼を受けよう。
「あんた買うのかね、買わないのかね?」
店先でずっと悩んでいたら店員のおばちゃんに怒られた。
「また金が手に入ったら買います」
「冷やかしなら結構だよ!」
そのまま手に持った箒で追い払うような仕草をしたので渋々店をでる。気づけば朝日も眩しく、人通りも大分多くなってきたように感じたので本部へ戻る。
本部の入り口には朝日を気持ち良さそうに浴びている男の姿。名前は知らないが昨日一緒に飲んだルクゾの宴のメンバーだ。
黒いマントの下は貴族が着るような白いフリル付きのシャツ、下は装飾はないが高そうなズボン。髪は沼のようにくすんだ色だが、目は黄金色で正確的に明るそうなこともありあまり気にならない。年はフランと同じく15歳ぐらいでやんちゃそうな少年といったところだ。
「おはよう。そういえば名前をまだ聞いてなかったな。知ってはいると思うが俺の名前はイツキ、種族は人間だ」
この世界では自分の名前の後に種族名をつけるのが主らしい。最も明らかに人間やエルフだと種族が分かる時は省かれるらしいが、丁寧な挨拶の時は今もやっているらしいので俺もやってみたというわけだ。
「おはようございます。俺の名前はルクイエ=ゲッシュフォールド、種族は吸血鬼です。
……正直、昨日の騒ぎようからこんな丁寧な挨拶がされるとは思ってもみませんでした」
八重歯の代わりに白い犬歯をだして苦笑いするルクイエ君。なるほど確かに吸血鬼だ。
「俺も時と場所をわきまえるんだよ。……それにしても意外だな。
失礼だけど吸血鬼はもっと暗くて、太陽が苦手なイメージを持ってたんだよ」
「そう思われても仕方ありませんね。同属の中でも僕は異端中の異端で、太陽も大好きですしニンニク料理は食べたら口が臭くなるだけですよ」
そう言うルクイエ君の表情は少し悲しそうだった。そんな悲しそうな表情をするルクイエ君の前だが俺の空気を読まない鼻は本部の中から漂ってくる香ばしい香りを貪欲なまでにキャッチする。
「おっ、中からいい匂いがしてきたな。一緒に行こうかルクイエ君?」
「俺はもうちょっと太陽の光を浴びときますよ。お誘いありがとうございます」
それなら仕方無いと本部の大きな木製のドアを開ける。既に朝食の香りに誘われてやってきた人がテーブルについていてその中には寝癖でアホ毛がついているシーアさんや魔導書を読むアリアちゃん、自らの槍を抱えるフラン君の姿もあった。
3人に軽く挨拶をして同じ席に座るとフランは少し不満気だったがアリアちゃんは俺にお茶まで入れてくれた。この子はいい子すぎて少々フランには勿体無いような気がする。
シーアさんはまだ眠気が覚めないのか目をゴシゴシと両手で擦りお腹からは空腹を要求するように抗議の音を鳴らす。
「お腹……空いた」
シーアさんの今すぐ抱き寄せてウリウリして可愛がりたいほどの愛らしさをその時偶然二階から降りてきたケイの猫耳と尻尾を弄んで解消する。本人はもの凄く嫌がってたがこうでもしないとシーアさんをどうにかしてしまいそうだから勘弁してもらいたい。
はぁはぁ、シーアたんのカワユサ恐るべし!
そんな可愛いシーアさんは本当に年上なのだろうか?
案外年は近いのかもしれない。まぁ例えそうだとしてもシーアさんへの対応は変わりそうにないが
そうこうしている内に続々とメンバーは集まってくる。昨日親しくなった何人かに挨拶をすると向こうも元気よく返してくるので清々しいばかりだ。
最後に一度起きて、上のベッドで寝なおしてきたのだろうナーガが降りてきて全員が集合したところで朝食が始まった。
う~ん、このフワフワとした触感のパンとジャムがまた合うな~
朝から美味しい食事に満足していたところで、マキアがこちらをキラキラとしたアーモンド形の目で見つめてくることに気づく。
「どうしたマキア?」
「いや、今日はイツキは何をするんじゃ? 良ければ我と――「今日はギルドで依頼を受けてくる予定だけど」……そうか、ならば我も着いて行こう!」
「いや気持ちは嬉しいけど、久しぶりに体の動きを確かめたいからきっとマキアの足を引っ張るだろう。だからいいよ」
そうか、と見るからに落ち込むマキアに悪い気がするがマキア達にアクセサリーを買うための依頼を本人に手伝わせるわけにはいくまい。今度また手伝ってくれとお願いしておいたら一応は納得してくれたが不満気である。
「そういえばシーアからお主の五年間を聞いたぞ。大変だったろうのう」
確かに精霊殊に閉じ込められ五年(体感時間は四年だが)、もうあまり思い出したくはない経験には違いない。マキアの同情の言葉に熱いものがこみ上げそうになったがここでいきなり泣き出しては周りの連中に引かれること間違いなしだ。
「まぁ悪くはなかったさ」
と俺は強がって泣きそうな自分をどこかへ放り投げる。マキアにはばれていたみたいだが話しを聞いていた他の連中はさすがだとでも言いたそうな表情でこちらを見るので罪悪感によるダメージが俺のHPを削っていく。
俺は早々に食事を終わらせ本部から出て(別に逃げたわけじゃない、絶対にだ!)依頼を受ける前に鍛冶屋か武器屋で三本の穂鞘をつくってもらおうと考えていると慌ててフランが追いかけてきた。
よほど急いで来たのか息を切らして随分しんどそうである。見ると服の上から革製の鎧を身につけ、槍を片手にもう片方にはなにやら手提げの包みももっていて完全に俺について来る気満々のご様子。今のフランではお荷物になりかねないので別にこのまま走って逃げても良かったがあまりにも必死な表情だったのでそんな気もなくなってしまった。
「どうしたフラン?」
「ぜぇ、はぁ……マキアさんが同じ槍使いとして……腕を見ておけって。後絶対目を離すなって」
どちらかと言うとマキアは後者の理由が本命だろうな。もういなくなったりしないというのに心配性な所は変わってないどころか加速している。
とは言え以前の恩もあるしいずれ有名になるだろうフランに槍について教えておくのも悪くないと考え始めた時、ハッと気づいた。そういえばまだ俺は自らの師匠に挨拶をしてない!
昨日いろいろあってすっかり忘れていたが普通は帰って一番に師匠に挨拶しにいくべきだとあっちで剣術を嗜んでいた友人のS君が言っていた。
それに師匠の許可なく槍を人に教えるようなことをしていいものか?
いろいろ考えたがうちの師匠ならいいか! と結局答えは変わらず近くの武器屋へ直行。ギルドでの依頼がすんで帰ってきてから挨拶すればそれでいいだろう。あまり師弟関係は厳しくないうちだから出来ることだ。
とりあえず以前師匠が言っていたお勧めの武器屋へ行ってみる。
大通りから二つ三つ外れたところにあり、行くまでにチンピラらしき連中に睨まれたフランは冷や汗を垂らしていた。あまり治安がよさそうではない場所だったので心配したが、そこへ着いてみると店は小さめな割りに小奇麗で店員のおじさんもホンワカとした雰囲気で感じも良い店だ。
「すみません。この三本の槍の穂鞘が欲しいんですけど」
槍を渡そうとした時、フィランが泣くわ騒ぐわで大変だったが心を鬼にしておじさんに渡す。おじさんは俺のフィランを手放す悲しみで目から血の涙が出んばかりの表情に分かってますよと言わんばかりに優しく微笑む。ああ、きっとこの人も槍道楽だ
「おお……!? これはなんとも……素晴らしいものですな。魔槍なのは分かりますがここまでの物は私も商売40年の間に見たことがありません」
「魔槍…!?」
フランも普段とは違い驚きと喜びの混じった少年らしい表情になる。
「でしょでしょ♪」
俺は勿論自慢のフィランが褒められ天にも昇る気持ちだ。
「それに少々この柄に羽根模様が施された槍は穂が複雑なので穂鞘をつくるのに時間がかかるでしょう」
柄に羽根模様が施された槍というのはミサゴのことで、穂は正方形の頂点のように四つ並んでおり、そこから長さ50センチばかりの刃が対角線の内側に向かって細くなっている。
そんな普通ではない穂をしているので作るのに時間がかかるというのも頷ける。
一応すべての槍の穂の角度や大きさを測り、型紙が出来ると手間賃(フランに払ってもらった)を出してギルドへ向かう。
【天沼矛】と【地虚矛】は穂の形に近いものが見つかったのでちゃんとした穂鞘が出来るまでの間貸して貰う事にしたが、未だミサゴには穂鞘がなくすれ違う住人も武器の管理も出来ない奴め、みたいな顔をしている。これが俺の自意識過剰であってほしい
何はともあれギルドへ着くと受付嬢のところへ向かう。ここへ着くまでにコロ大湿原でモンスターを倒したのでひょっとするとCランクからBランクへ上がっているかもしれない。
「いらっしゃいませ。本日のご用件は?」
「ランクをチェックしたいんですけど……」
「はい分かりました。え~と……イツキさんは現在Cランクです」
なぬっ!? あんだけ倒したのにまだCランクなのか?
そんな俺の表情を読み取ったか受付嬢は、
「どうやらイツキさんは依頼以外でモンスターをたくさん倒されているようですが、依頼を通すのと通さないでのモンスター討伐はギルドに対する貢献度に大きく差ができ、よってギルドランクも上がりにくいのです。モンスター討伐依頼を受けることをお勧めしますよ」
今まで全然知らなかったその情報に唖然とする俺を見て大丈夫かこいつ? と小声で毒づくフランの頭を一発殴って再び受付嬢と向き合う。
「後どのくらいでBランクになれますか?」
「そうですね。後中級レベルのモンスター討伐を一度受ければBランクになると思います」
受付嬢にお礼を言った後フランを連れて依頼のたくさん貼ってあるボードへ向かうとそこには既に冒険者が続々と集まっていた。
押し合いへし合いしながらなんとか列のトップに躍り出ると直ぐ目に入った<中級モンスター>の文字が書かれている依頼書をボードから剥がす。帰り際に誰かの足を何度か踏んで、『痛えーー』や『誰がやりやがった、ぶち殺す!』などと叫ぶ連中に心の中であやまって列の外で待っていたフランと合流した。
「それで、どんな依頼をとってきたんだよ?」
「ハッハッハ、これだ! 見ろ愚民め!」
バシッと紙を見せ付けるとフランは顔色が一気に悪くなる。
やはり初心者には中級モンスター討伐は少々刺激が強すぎたかな(キラッ
まぁ今は我慢の時だよ少年!
「おいおい、あんたこれに俺を連れて行くとかアホじゃないか?」
うん? フランの様子が少々おかしい。確認のためフランのほうへ向けていた依頼書をピラッと裏返すとそこにはこう書かれていた。
<中級モンスターの群れの討伐>
対象:西の森に住むジャッカルナイフの群れの討伐|(およそ百頭~二百頭だと思われる)
報酬:200万ラド
注意:ジャッカルナイフは体中あらゆるところからナイフのような突起物を生やすことができる魔物で、非常に攻撃的で主に集団行動を行う。一匹だけでもその体中から生やすナイフによって攻撃は防がれ、逆に攻撃した手がそのナイフによって傷つく。
おまけに俊敏で狡猾、チームワークも出来ていることもあり、一匹一匹はCランク程度だが群れになるとBランクの上位さえも倒すことがあるらしい。
最後にこの注意書きを読んでそれでも依頼を受けようとする奴に一言、『死ぬな!!』
う、う~~んこれはちょっとなまった体を慣らすどころかなます斬りにされてしまいそうだなWW
『きっとあの最後に死ぬな!! と書いた人はいい人だね~』
我ながら上手いこといったなと思ったが、フィランは褒めてくれず、そればかりか見当違いな意見を出したので自分で自分を褒めてみる。テヘヘッ////
『マスター、私が褒めてあげましょうか?』
『うん! 褒めて褒めて♪』
※イツキはいろいろとショックを受けたせいでただ今幼児退行中。しばらくお待ちください
『は~い、よくやりまちゅたよ~マスター♪』
『うん♪ ありがとうベアンテっ――ブッファーー!』
『大変!? マスターが大量に吐血をなさりました!』
『きっと今まで赤ちゃんになっていた自己嫌悪とか羞恥心が一気に解き放たれたからだよ』
『普段はマスターに甘々なくせにこんな時だけ厳しく当るんですね。マスターが可哀そうです』
『ち、違うよ! 僕はイツキのことを思って……。だいたいお前がいつもイツキに甘くするからこんなダメ人間になっちゃったんじゃないか!!』
グサッ!
『フッ、甘いですね。私はマスターがダメ人間だろうと人間のクズだろうと、果ては床をコソコソ動き回る黒いGだろうと面倒を見ます。一生ね。あなたにそれが出来ます?』
グサッ、グサグサグサッ!
『それは純粋な愛じゃないよ、そんなのただのヤンデレだっ!!』
うん♪ その通り!
『分かっていませんね。愛とは相手を縛り、相手に働きかけることです。純粋な愛は何も生まず、相手に働きかけない。それは相手にしてみたら無関心と一緒ですよ。あなたはそれで本当に愛しているといえるのですか?』
理詰めをさせるとベアンテに並ぶものはいないな。さてフィランはどう返すのか?
『そんなことないよ! 僕だってイツキのことをあ…あああい……して』
「おいっ、聞いてんのか!!!」
感動的なフィランの告白はフランの罵声によって意識が脳内会話モードから現実へと引き戻された。大事なとこを邪魔しやがって! そういえば全然関係ないけどフィランとフランて響きが似ているというかほぼ一緒じゃないか?
まぁ可愛さを比べたらフィランが圧倒的完全勝利だけどね。
「はいはい聞いてるお。で、ユーリィと俺のなりそめはどこまで話したっけ? たしかロッドマスター編だったっけ?」
「全然っ違う! 本当にこの依頼にするのかって聞いてんの!!」
「全く最近の若者は、大声上げて年長者をびびらせることしか出来んのか? もっと年長者を労わりなさい」
「誰が大声上げさせているんだ、コラッ!」
本当に切れやすいな最近のガキは、牛乳だけじゃカルシウムが足りないのなら煮干でも豚骨でも食べてカルシウムを増やすべきだろうに……
これから先こいつらが未来を背負っていくと考えたら無性に悲しいね
「よしっ、じゃあこの依頼受けよう!」
「え!? じゃあって何だよ、じゃあって?」
「別にさっきまでは違う依頼にしようと思っていたが、こ五月蝿いフランにせいぜいこれで怖い思いさせて反省させてやるぜっ! ケッケッケ♪ という展開によりこの依頼を受ける事にしたなんてことはまったくないから安心するんだ」
「何っ一つ! 安心させる要因がないんだけど気のせいか?」
気のせい、気のせいと軽く流して俺は受付に依頼書を持っていく。ローブの裾を引っ張って必死で俺を止めようとするフランを引きずりながら依頼受付完了♪
最後の方はフランが少し涙ぐんでいたが受付完了の印が入った依頼書を見せると諦めてギルドの床へペタンと座ってしまう始末だ。迷惑がかからないようにフランをギルドの外へ連れ出し準備にとりかかる。さすがに何の準備で行くほどバカでもないのでジャッカルナイフをおびき寄せる為に血のしたたる牛肉の塊と討伐証明のためのジャッカルナイフの尻尾を入れるためのおおきな麻袋を購入して準備おkだ。
昼飯も買っていこうとしたところフランが自らの持っている包みを指差す。フランが俺を追う前にマキアが急遽弁当を作って持たせたらしい。
何の心配も無くなったところで西の森へ続く城壁の門の前で少々手続きをして出かける。
出かける前は酷くやつれていたフランだが雲ひとつない晴れ晴れとした天気のせいか徐々に気分も楽になったようで今は口笛を吹くほどリラックスしているようだ。
緊張感に欠けているようだがこれから先は緊張のしっぱなしになるだろうので今の内にせいぜい平穏を楽しんだほうがいいだろう。
「フランはどうして冒険者になろうと思ったんだ?」
俺の素朴な質問でフランは口笛を吹くことを止め、少しの空白の後に言う。
「……俺の名前はランスフィールド=フランっていうんだけど、誰にも愛称でランスって呼ばせたくない。それは付き合いの長いアリアでも一緒だ」
「槍使いになるのにぴったりな名前じゃないか」
「ああ、俺も幼いころは自分の名前に自分の好きな武器の名前が入っていて喜んでいたよ。だけど同じ槍の道場生にこれまたすげぇ才能の奴がいて、だんだん俺は自分の名前とそいつに対してひけめ――って言うの? それを感じて来たんだ。
またそんな自分を認めるのも悔しくて、冒険者になって有名になればそんなひけめもなくなるだろうという考えに至ったっていう感じかな」
フランはそこまで語ると、なんでこんな奴にこんなことを話してしまったんだと自己嫌悪に陥っているようだ。俺はむしろ冒険者になるのにそんなちゃんとした目標を持ってなる奴が少ないのでフランの目標に好感をもてた。冒険者はたいがいその日暮らしの小金を求めてなるやつが多い、無論俺もその中の一人だ。まったく文化や習慣が異なる異世界でそういうことが求められる客商売がやっていけるとは思えなかったのでそれしかなかったというのが正しいけど……
「自信を持っていけよランス。お前の才能は俺が認めてるんだからさっ♪」
「ハッ、あんたに認められてもな。せいぜい黄金のカナゼ並みの実力がなきゃあ俺があんたを認めないさ」
言っていることはきついが口調は先程よりもだいぶ柔らかなものになっている。
だが師匠と俺の槍術を比べるのはよくないぞ。凡人が一生真剣に槍を振り回し続けてもいけるレベルではない。類まれなる才能と、それを凌ぐ努力によってのみたどり着くことが出来る境地といっても過言ではないだろう。
「お前それは無茶言い過ぎじゃないかランス」
「だからそれ言うの止めろって!!」
「今の内にランスって呼んでおかないと将来有名になった時ランスって呼ばれた時に反応できないだろう?」
「ハァ、もう好きにしてくれ」
フラン改め、ランスの了承を得たのでこれからランスと呼ぶ事にしよう。フィランとの差別化成功だ。
ランスとの溝も大分埋まった頃に西の森に着いた。途中街道沿いに魔物が出ることもなく、行商人の一団に会っただけで安全な旅だったがここからは違う。
訪問者を退けるように鬱蒼としげる森の入り口は延びた蔓によって塞がれている。槍で切り裂くのもありだが植物を愛する俺にとってそれは少々心を痛めることだ。仕方ないのでランスに怪しまれないように、俺が手で蔓の壁をこじ開ける動作と同時に脇にどけてもらう。複雑に絡み合った蔓の壁の強度はすさまじいもので普通は両手でこじ開けることなど
出来やしないのでたいていはナイフで切り裂いたり、火で燃やすのが一般的な解決方法だがそれを知らないランスは、結構簡単にいけるんだなと暢気な発言をする。これは後で冒険者の一般的な知識を教えておいたほうがいいだろう。
森の中に入ると木々はあまり高さがなく、太陽光線を遮っているせいか薄暗いという表現がピッタリで不気味な鳥の鳴き声が耐えることがない。こんな状況では魔物の襲撃に会った時反応が遅れる。逆に魔物を呼び寄せる事になるかもしれないがそれでも不意打ちをくらうよりはマシだろうと索敵の為にランスの用意していた背嚢からランプを取り出し、マッチで火をつける。
ボォッという音共に不明瞭だった辺りの様子をランプが照らし出し、ランプのオイルが充分あることを確認した後森の奥へと足を進める。
「ランス、そこコケが湿って滑りやすいから気をつけるんだぞ」
「もっとこっちへランプを近づけてくれよ。足下が見えにくいんだ」
そんな風にしていちいち足を引っ張るランスを連れてしばらく進むと暗い所為ではっきりとは見えないが少し平けた場所に何かがいるのが見える。一気に緊張したランスは、
「なんだあれ魔物か?」
と少々震えた声で聞いてきた。
「わからない。でも油断はしないほうがいいな」
近づいてみるとそれは頭から一本角を生やし、乙女しかその背に乗せないといわれる聖獣のユニコーンだった。まぁそれは地球にある神話の情報なので、この世界では正しいといえないがその姿はゲームや本でよく見る姿と同じだ。問題はその聖獣が地面に倒れ伏し、確かな腐臭を漂わせて自身の青色の血の池で死んでいたということ。
体には刺殺痕が多数あり、穴だらけになったその姿は無残としか言いようがない。
「何故ユニコーンがこうも無残に……!?」
ランスの口ぶりではどうもこの世界でもユニコーンは強く気高い種族であるらしいな。
『イツキ、気をつけて。何かに囲まれているみたいだよ』
『木々の振動から見るに四足歩行型の生物約二百頭がこちらを円形に囲んでいるようですね。十中八九標的のジャッカルナイフたちでしょう』
ジャッカルナイフをおびき寄せるために持ってきた肉の塊はどうやら無駄だったようだ。
事態を読めてないランスに事情を語ってランプを死守するように言う。この薄暗い森の中で唯一の光源であるランプを失ったら、夜目がきくジャッカルナイフどものリンチになるのは分かりきったことだ。それだけは避けなければいけない
自分ひとりだったら傷ついてもなんとかなるが今回はランスがいるのでより安全策をとるほうがいいだろう。森の中から二つの光る目がどんどんとこちらへ近づいてきて、一番近い数十頭のジャッカルナイフの位置を素早く確認すると地面に左手を押し付け、足下から拘束用の蔦を生やして捕らえた後はそのまま絞め殺す。ランスからではいきなり二つの光る目がいなくなったと同時にグェッという絞め殺したジャッカルナイフの断末魔が聞こえたことしか分からなかっただろう。
群れに動揺が走り、何頭かが撤退しようとしたがそれより速く群れ全体を囲むように巨木を生やして逃げ場をなくす。撤退が無理だと分かったジャッカルナイフは当然のように檻に囚われた俺達を狙うだろう。
その前に震える手で槍を構えているランスの周囲にミサゴで自動防御の【天沼矛】と自動攻撃の【地虚矛】を浮かばせて後方の憂いをとっておこう。俺にはまだミサゴがあるから何とかなる
「な、何だ!? 槍が勝手に浮いて?」
「それはランスを守るから安心しろ。後絶対そいつらから離れるなよ」
「お…おう!」
ランスの声と共に駆け寄ってくるジャッカルナイフを再び蔓で捕えようとしたが、先ほどの攻撃で学習した奴らは生えてきた蔓を体中からナイフのような物を出し、それで蔓を斬りさいて脱出した。まるで意志というものが感じられない丸い白目にそれほどの知性があるとはなかなか信じられない。
そして続いてその蔓攻撃を行ったのが自分だと気づくと直ぐに向かってくる。奴らの気を惹くために地の滴った牛肉を放り投げたが見向きもしない。奴らは分かっているのだ。俺達を倒せばもっと新鮮な肉が手に入ることを……
「うわっ!? アブねぇ!!」
戦闘の意志がほとんどなかったランスを狙おうとしたらしいが、その爪とナイフは【天沼矛】により防がれ、【地虚矛】の返す一撃で地面に崩れ去る。しばらく何匹かでランスを狙っていたようだがそれが無理だと分かると標的を俺に変える。
「ハッ!!!!!」
こちらを襲おうとしていたジャッカルナイフの動きが一瞬止まるほどの咆哮を上げ、一足飛びに固まった数頭へ向かうと瞬時にその脳天にミサゴを叩き込んだ。
ミサゴの四本の刃によって脳天を貫かれたジャッカルナイフの死に様も見ず、直ぐに次の敵を狙う。
決して俺は受身になってはいけない、常に一定の距離を保たないと存分に槍は震えないのだ。だから攻めて、攻めて、自分の間合いを取り続けることだけを考えないとこの群れ全部を相手に出来ないだろう。
ふとジャッカルナイフ達の攻撃が止みどうしてだと一瞬俺が迷った時、なんと四頭のジャッカルナイフが四方から同時に飛び掛ってくるではないか!
直ぐに槍を短く持って振り回すことで何とか叩き落したが、その知性溢れる攻撃には驚きの念が隠しきれない。チームワークが得意とは聞いていたがまったく同時に四方向から攻撃を受けるとは想像してなかった。
「やるなぁ」
再び襲い来るジャッカルナイフたちの攻撃が止むと、油断していたさっきと違い今度は俺を囲むように四頭が位置どるのが分かった。同じ攻撃を繰り返そうとするとは所詮獣は獣だということだろう。
先ほどと同じく四頭が飛び掛るがそれを予期していた俺は焦りもなく全て叩き落す。
「危ないぞっ!!」
フランの声で俺はとんでもない勘違いをしていたことに気づく。四頭が地面へと落ちていく中で、足下から俺の足目がけ頭にナイフを生やしたジャッカルナイフが一頭飛びつこうとしていたのだ。四頭が先ほどと同じ攻撃をしたのは注意を上に向けさせるための布石に過ぎず、更に恐ろしいのは先ほど飛び掛ってきた四頭は自ら囮になり死を覚悟してまでその役目を果たそうとしたことだ。
「チッ!」
足下から飛びついてくるジャッカルナイフの存在は意外だったが、まだ充分石突による返しで迎撃出来る距離だ。俺はそいつを煩わしく思いながら迎撃に入ろうとしたが、
「シャッ」
「な――うぉっ!?」
そのジャッカルナイフによる体当たりで体勢を崩され地面へ倒される。
距離的には充分間に合うはずだったが、やはりまだ体が鈍っているらしい。一緒に倒れこんだジャッカルナイフは俺の膝をその大口で喰らいつこうとしたが、そうはさせじと蹴りを無防備な脇腹へ叩き込んで吹き飛ばす。なんとか地面から起き上がると、数十匹近くが既に俺の槍の有効範囲内の内側に来ていた。
『今だけ【天沼矛】を呼ぶからねッ!!』
フィランが切羽詰ってそう言うと目の前にランスを守っているはずの【天沼矛】が現れやつらのナイフによる攻撃を高い金属音を響かせ受け止めた。当るはずの攻撃を受け止めた【天沼矛】の存在に動揺したジャッカルナイフたちの頬面を蹴飛ばして安全距離を保つとすかさず天沼矛をランスの守りに返した。今は俺に攻撃が集中しているが、ランスの守りが無いとしたらすかさず奴らはランスを狙うだろう。
『フィラン、さっきは助かったがもうこんな真似はしてくれるなよ』
『……嫌だよ』
フィランとの会話中にでも構わずジャッカルナイフは襲ってくるので、打撃と突きを使い分けて闘っていたがフィランのその発言に思わず驚いて、奴らの一匹に噛まれるところだった。
『な、何言ってんのフィラン!? 俺は少々の怪我は直ぐ治るからいいんだけど、ランスは死ぬかもしれないんだぞ!』
『だけど僕は……イツキが傷つくほうが嫌なんだもん!』
『気持ちは凄く嬉しいんだけど――ねっ!』
ジャッカルナイフはだんだんチームワークを利用した攻撃が増えてきて、前と後ろから来たジャッカルナイフの一体を槍で巻き上げ、向きを変えてやり互いのナイフによって脳天を貫いて死んでゆく。
『私もクソ槍と同意見です。最優先されるのはマスターのお体のみ、それ以外が死のうと関係ありません』
相変わらずのヤンデレ振りに辟易するがそれがベアンテという存在なので仕方無い。
俺が出来るのはおれ自身を守る事によってランスの守りの要である【天沼矛】を奪わないことだけだ。
唯でさえ体が鈍っているのにそんな制限まである縛りプレイはきついな。
魔法で吹き飛ばすという方法もあるが一度魔法を失敗して暴走させ、自らの命も危うく仕掛けた俺が五年ぶりに魔法を使って失敗する可能性は多いにあるし、マナとオドの合成に時間がかかるがそんな暇はジャッカルナイフが与えてくれるとも思えない。
「手が無いこともないけど、ランスの手前上やっぱり槍だけでやるしかないか……」
無論、本当に命がやばい時はランスの前でもバンバン使うけどね。
それにこの制限された環境で闘ってこそ槍術のレベルアップ、しいては師匠の打倒にも繋がるわけだから少々の困難は覚悟の上だ。
そろそろ槍で倒した数が百を超えるだろう。今も向かってきた五頭を真横に斬り割いたからそれプラス5。
息が上がり、肩が震え、地面に倒れたジャッカルナイフの血で滑りそうになるがまだ全体の半分しかいってないのだ。返り血で元々真っ赤だったローブは更に紅く染まり、血の匂いが染み込んでしまっている。
このまま帰ったら門番に完全に門前払いされるだろうなとどうでもいいことを考えてしまうぐらい俺は疲れていた。
そんな俺にも容赦などしてくれない数十頭のジャッカルナイフは時間差をつけて、脇腹に生やしたナイフで俺の腕を、足を切り裂こうと迫る。さすがにこれを受けたらヤバイだろうと体をミサゴの上に投げ出し、宙へ浮かびその攻撃を避けたがしつこくこちらの方へ飛び掛ってくる。必死でジャンプして噛み付こうとしているが、ミサゴは地面から高さがあるのでその攻撃は全く届かない。
「ちょっと……休憩させてくれ」
「わぁ~! こっちへ来んな!!」
ふとランスの声のする方を見るとランスの周りにたくさんのジャッカルナイフが集まっているのが見えた。【天沼矛】や【地虚矛】が意志を持っているかのようにそれらの障害を斬りさき、ランスを守るがそれでもこのまま放っておけば敵の数は増えていずれ手に負えない時が来るだろう。一応ランスも槍を持ってはいるが頼りになりそうもない
「少しは休ませてくれよ」
『私の力を使えば直ぐ片付きますよ』
ベアンテの甘い誘惑を振り切りミサゴでランスを襲おうとしているジャッカルナイフを追い払うと再び地面について対峙する。
大丈夫だ。師匠との脳内戦闘を思い出せ。
相手の動きをよく見て、動きを予測しろ。脳内は槍を手の内で扱いきる冷静な部分と、相手と向き合う心構えを養う情熱、その両方を持ちえたらただ無心に槍を振るえ。
向かってくるジャッカルナイフの群れの動きがゆっくりに見え、耳元でやたら大きなやつらの息遣いが聞こえる。世界は色を失い、唯一手にある槍のみがセピア色の世界の中鮮やかに輝いていた。
槍を動かすのは俺ではなく、俺自身が槍によって動かされている、そんな感覚だ。
ジャッカルナイフは一頭、また一頭とゆっくりこちらへ向かってくるがある種の予定調和? めいたものを感じさせるように俺の槍によってあるものは刺し殺され、あるものは叩き殺されていく。自分でも到底無理なスピードで槍は振るわれ、不謹慎ではあるが楽しいという感情がこみ上げる。
ああ、これだ。これが師匠たちのいる高みだ
気づけば百頭近くいたジャッカルナイフは半分に減り、残りの五十頭もこのまま倒せると確信したところで世界に色が戻ってきてしまった。
その反動のせいか一気に疲労感がダッと押し寄せ、その場に膝づく。
『大丈夫、イツキ!?』
疲れてフィランに返事をすることさえおっくうだが、気配で残りのジャッカルナイフがこちらを警戒しながら近寄ってくるのは分かった。
もはや奴らも俺しか狙ってないだろう。
残った力で【天沼矛】と【地虚矛】を呼び寄せ、俺は糸が切れたように地面へ倒れた。
ガクン、ガクンと一定のリズムで振動が起こる。
それまでは体中が心地よい気だるさに包まれていたが、その振動は妙に荒っぽく肌にヌメッとした触感がしたので状況確認の為に薄目を開けてみると、そこにあったのは茶色の髪の毛だった。いや正確には人の後ろ頭か?
足も目の前の人物に抱えられているところから、どうやら俺は誰かに背負わられているらしい。
「どこだ、ここは?」
「おっ、目覚めたのか?」
声からランスということが分かったが、いまいち現状が掴めてない。
とりあえず今分かっているのはヌメッとしていたのはランスの背汗と、ジャッカルナイフの返り血だったという、嬉しくもない情報だけだ。男におんぶされるなんて屈辱だが、やはりあの時相当無茶な動きをしたせいか立って歩けそうにないので我慢しよう。
「ここは首都エリアノへ続く街道だ。あんたが気絶しちまった後にあの勝手に動く槍たちが全部ジャッカルナイフを倒しちまったから、討伐証明の尻尾だけ斬って寝てるあんたを負ぶさってここまで連れてきてやったんだぞ」
『その通りだよ! 僕が最後までイツキを守ったんだからね!!』
「ありがとうな」
「礼なんていいさ。俺はあんたに助けられたんだ。槍もあんたには遠く及ばないってことが分かったし認めてやるよ」
フィランに言ったお礼がどうやら口に出てしまっていたようで、何やら勘違いしたランスが妙に偉そうにほざいている。……まぁ、いいか
自分の実力が足りないってわかっただけランスも強くなっただろう。
エリアノに着くと俺はランスの制止も無視して自分の足で地面にたった。フラフラしてて何度も転んだが、男におんぶされたままで街中は歩きたくないので仕方無い。返り血は門に入る前にローブを絞ったので大分落ちたが臭いは酷いままなので早く本部に帰りたいがその前にギルドで証拠のジャッカルナイフの尻尾を差し出し討伐証明した。
受付嬢は血の匂いにビクともせず淡々と報酬の200万ラドを差し出し、俺のBランク昇格を営業スマイルで賞賛する。凄まじいばかりの営業精神にこちらが賞賛したくなるほどだった。
そして日が暮れる頃に帰った俺を見てマキアが大慌てで怪我はないか? と心配そうにし一時、本部のメンバーを巻き込んでの大騒ぎになったことは語るまでもないだろう。
フィランのカワユサは異常だ。作者の俺が言うんだから間違いはない