五話 ペット
翌朝深部のなかへと出発した。
「お前そんな棒切れどこから拾ってきたんだ?私のナイフを貸すからさっさと捨てて来い。」
「俺はこれがいいんだ」
「私は知らんぞ。」呆れたようにユレイアがいうが、この杖のすばらしさを知らないからそんなことが言えるんだ。
奥へ進むほどいっそうと辺りに草が生い茂ってきた。
「そろそろ人食い植物がでてくるぞ、お前に任したからな。」
「俺を前に置いたのはそのためか」
その点に関してはまったく心配はしてないがな。
「来たぞ!大きな蕾の中にたくさんの牙をはやした植物型モンスター『ヘルプラント』だ!」
「説明ありがとう」
「バカッ!食われるぞ」
あせるユレイアの声を聞き流しながらおれはモンスターに近寄る。
50センチぐらいの大きさで根を足代わりに動き両手?に葉っぱを構えている。
「キュウウーン」甘えたように俺にちかづいてくるかわいいやつをどうして拒めようか。
そっと頭?もしくは顔に当たる部分をそっとなでると気持ちよさそうに口をパクパクさせる。周りから見ると今にも食べられそうにしかみえないらしく、ユレイアがあわあわと慌てている。こっちも可愛い、あっちも可愛い状態を楽しんでいたがさすがにユレイアに心配されるのも悪い気がしてきた。
「おーいユレイア大丈夫だって。」「はっ!?そいつは凶暴なモンスターだぞ逃げろ!」
「だから大丈夫だって」俺はこの子を撫でながら答える。
「なんで懐いているんだ?動物型モンスターならしつけた例は聞いたことがあるが、植物型モンスターをなつけるなど聞いたことが無いぞ」
「お前は特別なんだよね~?」
「キャウキャウ」
俺とこの子のラブラブぶりをみてうらやましそうな表情をするユレイア。
「ユレイアもこの子をなでてみるか?」
「え、いいのか?」
「ああ」「それじゃあ」
おそるおそる俺の腕の中にいるヘルちゃんに近づくユレイア。たぶん、いや絶対ヘルちゃんはユレイアが触った瞬間本能をさらけ出すだろう。急いでヘルちゃんに意思を飛ばす。
『俺の仲間だから丁重にな。』静かにうなずくヘルちゃん。
俺たちのやりとりがちょうど終わった後、ユレイアがヘルちゃんをなでる。
「キャウシュー」
嬉しそうにヘルちゃんが鳴くとユレイアの緊張した顔に花が開く。
「イツキーかわいいなあ、かわいいなあ」
「ごふっ」俺は吐血した。ふだんクールな女がそんなことしたら、ギャップがやばい。
「大丈夫か!?イツキどうしたんだいきなり血を吐いて、怪我したのか?病気か?」
「いやこれは世界の真理だ、気にするな。」
「そうなのか?」不思議そうに小首をかしげるのもヤバイ。
「そういうものだ。」
そういいながら二人と一匹で歩き続けて二時間、さすがにダラダラしてきた。
「ヘルちゃんが遺跡を知っていればいいのにな」
冗談めかしてユレイアがいう。
するとヘルちゃんがあいまいなイメージを送ってきた。どうやらあの遺跡のイメージらしい。
「ユレイアー、ヘルちゃんが遺跡まで案内してくれるらしいよ。」
「お前は話すこともできるのか?」
「うん」
「もうお前にまかした。」
ため息をつかれた!なんかショックだ。