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樹当千  作者: 千葉
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四十五話 素顔の魅力



「そんな顔をするな。風はイメージがしやすいから直ぐに出来るようになると思うぞ。」


「だったらマキアがお手本見せてよ!」


「わっ、我はいいのじゃ!!人のことはいいからイツキはさっさとイメージせいっ!!」


「はいはい、分かったよ」


とは言ったもののどうしよっかな~。風といえば某有名RPGの魔法のように竜巻を起こしたり某忍者漫画のように手の平に小規模の台風をつくったりといろいろあるが共通するのは吹き飛ばしたり、切り刻むイメージだと思う。

とりあえずそういう感じでやってみるか。



狙いは訓練用の人形

合成した魔力を手に集めて風の塊を押し出すイメージ!!

さあ、行けっ!!


「おおっ、なんということじゃ!!」


マキアのセリフに勝利を確信した俺は集中して閉じていた目をゆっくり開く。

目の前には人形が木っ端微塵に吹き飛ばされている姿が……見当たらない

さっきのマキアのセリフはいったい何だったんだろう?


声の主は……隣で気持ち良さそうに目を閉じておそらく俺がおこしたであろう風にあたっていた。


「なんと気持ちいい風じゃ!!高原をかけぬける風、夏の夜にそっと人を癒す涼風、


そのどれにも当てはまらない風が今ここに!!


魔法初心者は最初攻撃魔法をつかいたがるというのに人を癒す風を起こすとは、


イツキはなかなかの人格者よのう……!」


「だ、だろっ!!俺もそうしようとは思っていたんだがここまでマキアが喜んでくれると


は思わなかったよ。アハハハ」


ふぅ、危ねぇ。なんとかこの場は逃げ切ったが次は成功させなくては!


攻撃のつもりでやったはずなんだが少し合成魔力が少なかったのかもしれない。

……よし、こんなもんでいいだろ。少し多すぎかもしれないがさっきみたいに恥をかくのは御免だからな。


「待てっ、イツキ!それは魔力が多すぎる。中止するんじゃ!!」


んなこと言われても魔法の止め方知らないし・・・

とりあえずマキアの口調からじゃやばいことになりそうだからターゲットを目の前の人形から急遽変えて、思いっきり頭上へと放つ。

極端に圧縮された空気がブーンブーンと羽虫のような振動音をだしながら空へと向かっていく。


その音がどんどん速くなっていくのが聞こえだすとものすごく嫌な予感がしてくる。

マキアも顔を青白くして急いで逃げろと目で訴えるので、ロケット花火を点火したら急いで物陰に隠れるほどビビリな俺はダッシュで逃げ出そうとするが先程の魔法で魔力を使い尽きたのか、体が鉛になったかのように重く石に躓いて無様に転ぶ。


間に合いそうに無いと感じたので出来るだけ体を地面に伏せ想定できる被害を少なくする。


「バカッ、イツキ!


その程度じゃ防げん!!クソッ、今待っておれ!!」


「アホッ、こっちへ来るな!!巻きぞいをくらうぞ!!」


互いをけなし合うがどちらも相手の安否を気遣ってのことだがそんな状況をせせら笑うかのように天からの振動音はその速度を速めていきマキアが俺の手を掴んだ瞬間、音は消えた。


あたりを無慈悲なまでの風が襲った。圧縮された空気が解き放たれるとき爆風が起こる。

それはまさに一個の爆弾と化す。


周辺の木々は風によって押しつぶされた後空へと舞い上がり、飛礫がマシンガンのようにあたりにぶつかる。


終わりを迎えることのないように感じるほど長い時が過ぎると余韻も無くいきなりそれは終わった。


唯一それがあったことを知ることが出来るのはあたりに散らばる被害のおかげ。



「大丈夫かイツキ?」


「ああ、なんとかな。ていうかそれ普通は男のセリフじゃないか?」


「男なら細かいことは気にするでない」


俺とマキアを包む薄紫色の球状の何かによってどうやら救われたらしい。マキアがつくったこれもおそらく魔法の一種なんだろう。

そういえばマキアに俺の制止を無視して助けにきたことを怒っとかないと……


「うん?どうした口をポカンと開けて、そんなにさっきの魔法に驚いておるのか?」


「……いやマキア、お前、その頭!?」


マキアの頭には、いや正確にはマキアの頭の上には……二本の角が生えていた。

よく悪魔の描写で山羊の頭というのがあるがグルリと曲がったマキアの角は正に山羊のそれだった。


それに良く見てみると綺麗な褐色の肌が薄紫色へと変わっておりマキアのセクシーな体をよりいっそう強調している。その肌の色がヴァンパイヤを想起させるが角をつけているヴァンパイヤを俺は聞いたことがないので何か別の存在なのだろう。


マキアも俺が遠慮なくジロジロ見てくるのに気づいているとは思うのだが本人はうつ伏せのようになっていて全然リアクションがないのがつまらない俺はマキアの肩を掴んで下から見上げるように顔を覗き込んだ。


……な、何故かマキアは泣いている!?


どうしてだ!?プルプル、僕悪いスライムじゃないよう!!


・・・とりあえずネタに走っている場合じゃないことは確かなので現実に向き合おう。


「どうしたマキア!?さっきの俺の魔法でどこか怪我したのか?」


「うっ、ううう。我はもうお終いなのじゃ、もう我に近寄るなっ!!」


そんなに涙目で言われても……


「こっちを見るなっ!優しい言葉をかけるなっ!




……どうせ最後はみんな裏切っていく。」


最後の言葉は今までで一番小さな声だったがひどく重みのある言葉で俺はかける言葉を失う。


きっと彼女はこの姿で今まで悲しい目に遭ってきたのだろう。

ここで下手な慰めをして彼女の気持ちを全て分かったかのように言うのは今まで頑張ってきたであろう彼女を一番侮辱することになる。


「……マキア。」


「・・・」


「マキア。」


「・・・」


「マキア。」


「……何じゃ?」


小さく今にも途切れてしまいそうな声。普段のマキアから発した声とは思えない。


「たぶんマキアの姿のことでだと思うんだが・・・」


「・・・」


無言は肯定と受け取ろう。


「ここから去るつもりか?」


首を縦に振る。


ハァ、やっぱりそういうつもりだったか。


「じゃあ去る前に聞いておきたいことがある。いいな?」


これもまた肯定。


「まずマキアはどういう人種で何故隠していたんだ?」


「……わ、我は魔界に住む俗に言う魔人という人種じゃ。紫色の肌とさまざまな動物の角を生やしておるのが特長で、七つ以上の属性魔法に通じ総じて気が荒く攻撃的な生き物であることが原因で狩りの対象になり一時期は絶滅の危機もあった。


姿を隠していたのは……迫害に遭うのを避けるためじゃ。」


「なるほど。それは分かったが、何故マキアはそんな迫害のある中こっちへ来たんだ?」


「我だって好きでこっちへ来たわけではないっ!!


魔界とこの世界、現界をつなぐ穴が時折自然発生することはどうせ知っておるまいな?」


「いや、知っている。」


たしかザルナ王国の首都エリアノの図書館でそのようなことが本に書いてあったな。

あの時はそんなに注目してなかったがまさかここでその知識をつかうことがあるとは思わなかった。


「ふん、まぁよい。我は幼い頃その穴に巻き込まれこの現界に来ただけじゃ。


これでもうよかろうっ!もう二度と会うこともあるまい」


「マキア、待てっ!


……誰が去っていいって言ったか?」


「何を言っておる、『去る前に言っておきたいことがある』と言うたではないか。」


「ああ、だから去る前に言っただろう。俺はお前が去ることを認めたわけじゃない」


「それは屁理屈じゃっ!!」


「ああ、屁理屈だって構わない。俺はただマキアにいて欲しい。それだけなんだ」


まっすぐマキアの瞳を見てそう伝えるとさっきまでの冷たい態度が嘘のように落ち着きを失う。今にもはわわわ~とか言ってしまいそうだ。


むしろ言えっ!!

俺をもだえさせてみるがよいっ!!


「し、しかし……我のこの姿を見て、気持ち悪いとはお、思わんのか?」


「そんなことは無いぞ。むしろ萌えだ」


「燃え(・・)とはなんじゃ?」


「萌えとはハキュ~ンとなることだ。」


「……イツキが何を言っておるかさっぱりじゃが、どうやら悪い言葉ではないようじゃの。」


こんなに分かりやすい説明はないというのに何故マキアは理解できないんだ!?

萌えは故郷じゃあ国を超えて理解される共通概念だと言うのに……

惜しむべきは文化の違いというやつか。


「それとその角を触らせてくれないか?」


「……いいぞ?」


恐る恐るマキアの角に触ってみると結構丈夫で微妙にくすぐったそうではあったが別に性感帯ではなかった。少し残念だが見るからに堅そうだったので仕方ないかという納得の気持ちもある。


そういえばユーリィのとんがった耳をまだ触ってなかったな。ハーフエルフであるユーリィの耳を触ったときいったいどんなリアクションをとるのだろうか?

頼むから『え、こいつ何やってんの?キモい』みたいなリアクションは帰ってきて欲しくないな。


そんなことになったら死ねる

\(^∀^)/


「というわけでユーリィにもちゃんと言えよ」


「どういうわけか知らぬがユーリィにも言わねばならんかぁ」


「大丈夫だ。ユーリィはきっと受け止めてくれるさ」


「確かに変態のイツキと一緒におれるくらいじゃしの。


なにか勇気が湧いてきた今の内にユーリィに伝えてこようかのう。行って来る」


「俺を例に挙げてから行動速くない!?」


「気のせいじゃ♪」


まぁ元気になったみたいだしいいっか。

あ~、あ~、あんなに急いで走ったらこけるぞ。


まるで誰かから逃げるかのような勢いで走って、そんなに早くユーリィに伝えたいのか?


すると肩にトントンという誰かが叩くような感覚を覚え後ろを振り返る。


「イツキ君、どうしてこんな状況になっているんだ?」


笑顔のリザルトさんに恐怖しながらあたりの状況確認。

そこにはまるで嵐が通り抜けたかのような悲惨な光景が広がっていましたとさ☆


「じ、実はさっきなんの前触れもなく巨大な竜巻という自然災害が発生して俺達を巻き込んだんですよ~。いや~あれは驚いたな~。(全て棒読み)」


「その証人であるマキアちゃんはどこにいるのかな?」


「マキアはその竜巻に巻き込まれてはるか空の彼方まで飛んでいきました。(遠い目)」


「じゃあ君に責任をとってもらわなくてはね。」


「だが断る!」


「口応えしたからペナルティ更にプラス100だね。」


「すいまっせん!!一度言ってみたかっただけなんです。」


「あははは、僕にジョークは通じないよ。じゃあ逝こうか?」


マキアの裏切り者っ!!



どこか遠くまで旅をしたい。そう考えた作者は今日も近くのコンビニで夕食を買うのであった。




あ、あと感想をいただけると嬉しいです。






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