四十一話 出会いはリリンが生み出した文化のホニャラララ
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どうもありがとうございました。作者は深く感謝しています!!
これからもどうぞよろしく!!
あれからユーリィの案内で更に北へ北へと進んで行くこと五時間、ようやくユーリィの足が止まり目的地に着いたことが分かった。
止まった先には真っ暗な森があり、その薄気味悪い森への入り口はまるで巨大な魔獣が獲物を丸呑みにしようとしているかのようにポッカリと不自然な大穴をあけている。
「この山に私の実家があるんだ」
「ほほ、本当にこんな所にあるのかの?」
マキアは怖いのがダメなのか、俺の肩に掴まりブルブルと震えている。
俺と同じくらい髪を洗ってないはずなのにマキアの白銀の髪からはいい匂いが漂ってくるので十代の男の子には正直堪らん!!
近くで見るとやっぱりマキアは美人だ。
……そう、こっちを見るユーリィの視線が漫画とかでよくある熱線に変わるぐらいにね・・・
「ゴホン、それじゃあ行こうか」
ユーリィの視線に耐え切れなくなった俺は渋々マキアの手を離してその大穴に向けて足を進めた。
森の中は外で見たよりも不気味で日光もあまり入ってこない。木々たちも奇妙に捻じ曲がって成長していて元気が無さそうに一見見えるが少し意識を通わせたところ、不思議と見た目に反して元気な様子だ。
元々こういう植物なのだろうか?
まだまだこの世界には分からないことだらけだ。
一方、俺の前方ではユーリィを前にしてガロンに乗りながら泣きそうな表情でユーリィにしがみ付くマキアの姿が。ガロンも心配そうにギューと鳴いているがそれさえも耳に入らないようで時折頭上でカラスのような生き物がギャアギャア鳴きながら通り過ぎていくと、キャアーッと声を上げて顔を伏せ震えだす始末
良いね、それっ!!
もうそんな人種はとっくに絶滅したかとおもっていたよ。
ユーリィに全然怖がる様子が無いのはきっと実家近くだから慣れているんだろう
俺的に言えばユーリィも怖がって抱きついてきて欲しかったが幽霊とかお化けに関してはあきらめるほか無いだろう。
その代わりにいつかきっとユーリィの怖がるものを見つけてやるっ!!
最有力候補としては蛇、ネズミ、クモ、ムカデかな。あっ、でも後半は俺もダメだ。
そんなことを考えている内にユーリィはガロンの背から降りて森の少し広がったところにある一本の何の変哲も無い木に近づく。そして何やら木の幹に複雑な紋章を描きだし始めた。
一通り描き終ると少し距離をおいて、
「アバカム!!」
すると先程までただの木があったはずの場所に大きな木製のドアがたっていた。
「すごいのじゃ!!」
「これは父がつくった仕掛けで、この仕掛けを知らないものは入れないんだ」
「封印魔法の類じゃの~。どうやらユーリィの父上は魔法に精通しておられるようじゃ」
「それが分かるマキアも大分魔法に詳しいようだな」
「……まぁの」
「いやぁ~良いな魔法。師匠には才能無いって言われたけど俺もいつか使いたいな」
「帰ったら私が父上にかけあってもいいぞ」
ユーリィはそういいながら慣れた動作でその重厚なドアを開けた。
中は天国だった。山の中にも関わらず暖かい日差しが降り注いでいて外の暗い景色が嘘のように感じられる。遠くに見える大きな木と一体となったような家へと続く道沿いには緑ユレイアの由来であるユーリィ(桜)の木が何本も並んでいて壮観だ。
そんな見るものを和ませる光景がそこにはあった。
俺とマキアとガロンは目の前に広がる風景を楽しみながらその家へ向かった。
家の入り口にはたくさんの植木鉢が置いてあったのでおそらくユーリィの両親のどちらかが育てているんだろう。奇抜なピンクから落ち着いたブルーまで様々な色の花が並んでいる。
「ここで少し待っていてくれないか。いきなり知らない人が来たら両親も驚くだろうから」
「ああ」「わかったのじゃ」
俺はこの鉢植えの花たちをまだ見ていなかったのでユーリィの案には大賛成だった。
今の俺にはお花さんと話すという電波さんのすることを地で行けるからな。
「イツキは本当に植物が好きじゃのう」
マキアは少し呆れたように言う。
「まぁ、好きじゃなきゃこんな能力身につけてないと思うしね」
そういや今ベアンテ何しているんだろう?そういえばこの世界に来たとき眠いから寝るって言ったっきりだな。
また空の柱っていう奴から力を貰えば目覚めるかもしれん。その時を待とう
「あらら~、お客さんですか?」
大きな植木鉢の影から声をかけて現れたのはユーリィと同じ金髪の十二歳ぐらいの可愛い女の子だ。
長袖に土が付かないように腕まくりをして、園芸用のスコップを片手にもっている様子からさきほどまで庭弄りをしていたことが伺える。
「お邪魔してま~す。俺達はユーリィのギルド仲間なんだけど君はユーリィの妹さん?」
「違うよ~!!私は・・」
「シクエちゃん!!こんな所にいたのか!?」
玄関からユーリィが飛び出してきてシクエちゃんと言うらしい子に駆け寄る。
「あっ!ユーちゃんだ~!!私ユーちゃんに会えなくて寂しかったよ~」
「そうかゴメンなシクエちゃん」
ユーリィはシクエちゃんのご機嫌取りに頭をナデナデする。シクエちゃんもユーリィに撫でられてご満悦の様子だ。
俺とマキアは二人の間に他の誰も入らせない空気があるのを感じて話しかけるのを躊躇する。
いったいこの子は誰なんだ?妹では無いようだしきっと近所の子かな?
するとユーリィもようやく俺たちの不思議そうな表情に気づいたらしくゴホンと一度咳をした。
「ああ~、この子はシクエちゃんと言って……私の母だ」
「ほほう随分若そうな母上じゃな」
『えっ!?それだけ?
もっといっぱい突っ込みどころあるよ。若いってレベルじゃないし、ユーリィは完全に実の母を子ども扱いしているじゃん。
それでいいのかイーストフッド家!!』
「どうも俺はチバ・イツキっていいます」
と言えるはずも無く俺は形式通りの挨拶をする。
「我はマキアという者じゃ。」
「よろしくね~イーちゃん、マキちゃん。それにしても嬉しいよ!!久しぶりにユーちゃんがお客さんを連れてきてくれたからね
あと私のことはシクエちゃんって呼んでね☆」
シクエちゃんはそのまま俺達を家の中へ案内した。ガロンは家の中へ入れなかったので外でお留守番だ。最後までキューンキューンと鳴いていたので心が痛んだが入れないなら仕方無い。
とりあえずお茶を出してくれるようなのでユーリィに案内されるまま食卓に向かった。
食卓には既に人が座っている。まるで海のように澄んだ青い瞳に高い鼻、若草色の髪の毛を持つキリッとした顔つきのイケメンがそこにいた。そしてこちらをジロッと見ると、
「ユレイアこちらの方たちを紹介してくれないか」
「はい父上。」
もうだいたい予想はついていたがやはり若いなお父様。俺と同い年と言っても信じるぞ。
「左端からイツキ、マキアと言って私がギルドマスターをやっている『ルクゾの宴』のメンバーです。本来ならもう一人いますが今ここにはいません」
「なるほど。」
「自己紹介が遅れたが僕はユレイアの父でリザルト・イーストフッドという。見ての通りエルフだ」
そう言ってリザルトさんは髪を耳にかけてそのエルフの特徴でもある尖った耳を見せた。
この世界のエルフは耳が横に伸びて先端が尖っているのでは無く、後ろに向けて尖っている。そして彼らは総じて若草色の髪の毛を持っており、魔法に長け、森の中を獣のように駆け巡りたいていは美しい容姿をもっているのがこの世界の常識らしい。
こんなチート種族の血を引くユーリィはそのほとんどを受け継いでいるようで正直羨ましく思うのは俺の心が狭いからなのか。
そんなどうでもいいことを考えながらシクエちゃんに差し出されたお茶を飲む。
お茶は甘さと酸っぱさが混じった不思議な味だったがとても美味しかった。
「そういえばイツキ君、実を言うと君の事は前から知っていた」
「えっ!?それはどうしてですか?」
「正確に言うと一週間前からなんだが、親友から君のことを聞いてね。
おそらくもうすぐ狩りから帰ってくるころだと思うのだが……」
「帰ったぞ。シクエちゃん今日はこれで鍋にしてくれるか?」
「良かった~。お客さんが増えてちょうど食材が足りなかったの~」
玄関の方でそんな話し声が聞こえた。
どっかで聞いたことのある声だ。あまり良い予感がしないが……
「ほら帰ってきたようだ。君のよく知る人が・・・」
マキアは誰?とでも言いたげな表情で俺を見てくるが俺は目の前の災厄をどう回避すればいいか頭がいっぱいなので気遣う余裕は無い。
「誰か他に客が来ているのかいシクエちゃん?」
「奥にいけば分かるです~」
足音とともに着実に近づいてくる。
そしてその男は部屋に足を踏み入れた。
「イツキ!?どうして貴様がここにいるんだ?」
そこには質素なつくりの修道服を着た銀髪の渋いおっさんが・・・
「……ハロー、師匠」
すごく憂鬱だった。
そして作者も憂鬱だった。