四十話 それぞれの思惑
改めてみると文章がおかしいので少しずつ訂正していきます
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それは白と黒の部屋。
壁から床まで磨き上げられたかのような白い大理石で覆われており、椅子や机といった会議室に必要なものは見当たらない。
椅子の変わりに黒い一辺が一メートル近くの立方体がまるで積み木のように置いてあり、それが円形になるように配置されている。
積まれている数が違うのはその上に座る人の力の強さを表している。
高さが上のほうから順番に天席、上席、下席と分けられているのだ
天席に座る男は二十代とかなり若いが、身にまとう王者の風格がその場にいる者たちにそんなことも気にさせない。
「何か報告は無いか、諸君?」
「私は特にありませんよ教祖様」
うやうやしく一礼して答えるのは上席に座るブクブクと太ったデーボという男だ。
表では人一倍信心深い態度をとってはいるが、奴の本心はここでの権力にしか興味は無い。
その直属の部下である若い男は上司の無能さに辟易しながら立ち上がる。
「失礼ながら一つ報告があります教祖様」
デーボは自分の部下の唐突の発言にイラつきその場で叱責しようとしたが、教祖が目でそれを封じたので居心地悪そうに再び席についた。
普段感情を抑えなれている男ですら喜悦が顔にでないようにするのは一苦労だった。
「まずは三年間の任務ご苦労といっておこう。
多少予定外のこともあったが記憶は無事戻ったようだな。」
「ハッ、ありがたき幸せ!!」
「しかしお前の記憶が戻った後は奴らをここラノーラ帝国に誘導するのが本来の任務ではなかったか?何か申し開きがあるなら言ってみろ」
教祖の鋭い視線はその場の空気をまるで固体と化したような気にさせるほど強いものだった。男は軽く冷や汗をかきながらそれでも強い意志を持って答える。
「あの男には今回の計画で必要とされる力が見込まれず、更にあの男の力は不安定な様子でこのまま計画を行った場合力の吸収はおろか、魔高炉の崩壊にもつながりかねないと考えた為であります」
「ふふん、一応は納得できる理由だな」
男は教祖の放つ空気が緩くなったことを感じ、ホッと小さくため息をつく
「しかし教祖様。奴はまだまだ成長しそうだし力不足については時間が解決してくれそうだぜ」
男もそれについては思い当たる節があるだけに自分の同僚のそんなカミングアウトを憎憎しく思った。計画通りにいかない苛立ちが徐々に焦りを強くする。
「あとはその不安定な力をどう制御するかだが……」
「ヒッヒッヒッ、それについては提案がありますぞ教祖様」
腰を屈め、大きすぎてサイズの合わない眼鏡をかけた老人は生物兵器と魔導兵器のスペシャリストでこの教団における裏の戦力を造り続けている主要人物だ。
「どうやらその男に宿る力は人の身に過ぎる力。ならばそれを制御し力を発揮する大元、『核』が体内にあることでしょう。それを取り出せばあるいは……実験は成功し、更には永久機関すら完成するやもしれません」
「仮定ばかりの議論を交わしても計画は進行しない。ローケンは再び人狼を引き連れて奴を連れて来い。今度は失敗は許さんぞ。話はそれからだ。」
「教祖様、私も行ってよろしいでしょうか?」
「ナーガ、お前は計画のために自室で休んでおけ」
「しかし、「これは命令だ」
「……わかりました」
ナーガの心境は複雑だった。
* * * *
ヤコブ村を出て少したった後
「あの、言っておかなければならないことがあるんだが……」
「どうしたのじゃいきなり?」
「なんでも言ってみろ」
いつかは言わなければならないと思っていたナーガのことを俺はユーリィたちに包み隠さず話した。
「ナーガが私達のスパイだったと!?そんな馬鹿な!?」
「それは敵の人狼が言ったことじゃろう、我らの仲を裂こうとしての策略ではないのか?」
「おそらくそれはないだろう。
奴は俺の実力を圧倒していた。わざわざ嘘をついて混乱させる必要はないはずだ」
「じゃあとりあえずナーガがスパイだと仮定して、いったいどこのスパイなのじゃ?」
そういえばナーガがスパイだというのに驚いてそんなこと考えもしなかったな
「……そういえば昔カナゼ司教が言っていたな。ラノーラ帝国の帝都では夜、街中にも関わらず狼の鳴き声がすると。」
「それは確かなのか?」
ラノーラ帝国に行くのは当初の予定にあったが、結構カナゼ師匠は意味も無い嘘をついて人を困らせる節があるのでいまいち信じられない
「分からない。だがそれぐらいしか情報がないのが現状だ」
確かにユーリィの言うとおり人狼がいたとしてもナーガがいるとは限らないし、第一帝都はかなり広いだろうから見つかるとも限らない。それにナーガに会って何を話していいか俺には分からない。何故スパイなんてやっているのか?と聞くべきか、そもそも俺達にそんな価値があるのか?考えても分からないことだらけだ
最悪、ガセネタだった場合は完全に打つ手が無くなる。
う~ん、必要な情報が少なすぎるな
落ち着いて今分かっていることを見直そう
まず俺達にはナーガについての確実な情報が無い
この件に関してはどうしようも無いから今は放置だ
……そういえばケンという人狼はナーガのことを知っている素振りだったな。
そして奴は最後に「今日のところは……」と言っていたことから再び襲撃に来る可能性があることが分かる。
となると、次こそは奴にリベンジしてボロ雑巾のようにした後ゆっくりと奴から情報を引き出すのが一番平和的かつ確実性の高い作戦だろう
もちろんそのためには俺が強くならなければならないと意味が無い!!
そして短期間で強くなるには人に教授されるのが一番だ。だいたい一人で強くなれるなら俺は師匠に教えを請いたりはしない、絶対に!!
「とりあえず強くならなきゃな」
「確かに今の私達には力が足りない」
「どこかに安全でここから近くて俺に戦闘を教授する強い人がいる場所はないもんかね」
「それは都合良過ぎじゃろイツキ」
やっぱりマキアもそう思うかね
「だったらもう俺にすることと言えばガロンを撫でるぐらいしかないな」
「ギュッギュッ!!」
はぁ~可愛いなガロンは、正に癒し!!
毛並みもいいし何でみんな騎竜をかわないのか不思議に思うぐらいだ
まぁ、心あたりは無いこともないが……おそらく食べもの?
「イツキ、アホ面させている所悪いんだがその場所、私に心当たりがある。」
「ガチなのかユーリィ!?」
「ああガチだ。」
「何故それを早く言わんのじゃユーリィ!!」
「いや~、私も出来るだけ頼りたくなかったというか何というか……」
物事をキッパリ言うユーリィにしては珍しく言い難そうに語尾を小さくする。
何がそんなに嫌なのだろうか?
もしかしてかなりの怖面で人の血を見るのが大好きなオヤジか?
それともかなりの美人で人をいたぶるのが大好きなお姉さんか?
……あれ?後者は悪くないかも?だが新しい性癖に芽生えそうな気がするので少し怖い
でも最初は誰だって怖いって聞くし、慣れれば……って危ねぇ!!
言ってるそばから芽生えそうになっていた。
もしかして俺にはそっちの気があったというのか!?
認めん!!認めんよ私は!!
「また変な考え事をしているようじゃのうイツキは」
「そろそろ慣れてきている私が嫌になるんだ」
「うむっ、分かるぞそれ!!」
とりあえず考え事から抜け出して、失礼なことを言っている美女連中の話に混ざる
「で、結局どんな人なんだ?」
「うむ、すっかり忘れておったわ」
「まぁいずれ分かることだがイザルト・イーストフッドという名の人物だ」
「あれ?イーストフッドといえば……」
どこかですごく聞いたことのある苗字だ。するとユーリィも俺の表情を見て軽く肯定の頷きをする。
「そう、父だ」
最近こういう終わり方が多いと思う件についてww
他のかたはどうしてあんなに上手く終われるか不思議です