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樹当千  作者: 千葉
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三十九話 ヤコブ村には変なおっさんがいる

この物語が終わった後、第二部を書こうと思っています。


いつの話になることやら……

また……か。

また気絶したのか、俺は


酷く体が重い

ゆっくり瞼を開けてふと横を見ると木製のタンスの上に男性用の着替えが綺麗に折りたたまれて置いてあった。


改めて自分の体を見ると腹部に何重も包帯が巻いてあり、あの人狼の蹴りの酷さが伺える

とりあえず立ち上がろうとしたら腹部に痛みが走り咳き込んでしまう。

咳を抑えるために当てた手には血がべっとり付いていたので、どうやら内臓をいためているらしい


長い咳が止むとあたりの喧騒が聞こえてきた。

時折泣き叫ぶような声が聞こえてくるのであまり穏やかな様子ではないようだ


また咳き込まないように出来るだけ急いで立ち上がりおそらく自分の為の物であろう着替えを着て外へ出る



……悲惨だった

村の建物のほとんどが崩壊や半壊に近い状況になっていて、今だ火が出ている建物もある。

極力被害の少ない建物にはたくさんのケガ人が並んでいて悲鳴や嗚咽が絶えることは無い


あの人狼たちの仕業だろう

あの時すぐに止めをさしていたらこんなことにはならかった

悔しいが俺は奴の言うとおりに甘い、甘すぎる


奥歯をかみ締めながら、何か手伝うことは無いかと思いその建物に入るとまず消毒用のアルコールの臭いと血の臭いが鼻に入ってきた。そして次に堅い床一面にケガ人が寝ているのが目に入った。その中で続々とやってくるケガ人を手当てしている女性たちの中心となっているのはスゥおばさんで治療の仕方が分からない若い女に指示を出して陣頭指揮をとっている。


「スゥさん、俺もケガ人の治療手伝いますよ」


「あらイツキ君!確かに今は猫の手も借りたいぐらい忙しいけどケガはもう大丈夫なのかい?」


「平気ですよ」


「……そう、じゃああっちの人から頼んだよ」


スゥさんが俺の体の状況を知りながらあえて見過ごしてくれたのは本当に感謝してもしきれない。


俺は恵まれているんだなと思う


スゥさんに言われた方向に歩いていくと見覚えのある顔がいた。


「ユーリィ、マキア」


「イツキ!?もう大丈夫なのか?」


「まだ寝ていてもいいんじゃぞ」


「大丈夫だ。この人たちの治療は俺がするからユーリィたちはケガ人を探してここに連れてきてくれ」


挨拶も手短に俺は床に寝ているケガ人のもとへ急ぐ。処置も十分にされてなく、衛生状態もよくない今では治療の遅れは命に関わる。


火傷や人狼の噛み傷、引っ掻き傷が多いが中には崩れ落ちた瓦礫による圧迫骨折などケガの種類は様々だ。幸いなことに狼男と違って人狼に噛まれても人狼にならないらしいから安心だが……

若くて体力のある人には大地の力で自己治癒能力を高めて治療するが、年配の方にはそのケガに合った薬草を処方していく。

治療を嫌がる子どもや大人がいたが、人狼によるケガは感染症の原因にもなるのでベアンテでしっかり縛り付けて治療した後は泣きだした子どもに手作りの飴をあげて泣き止んでもらった。

泣き出した大人は見苦しくて仕方が無いのでさっさと建物から出てもらったが……


そんなこんなで飯も食わずに治療を続けていき夕焼けが目にしみるころようやく全てのケガ人に治療し終えた。後半は全てのけが人が俺のもとへ押し寄せてきて途中でユーリィとマキアのヘルプが無かったら俺は再び倒れていただろう。


「だ~っ、疲れた」


「イツキ、ほらっ来るのじゃ」

マキアは正座の状態で膝の上をポンポンと叩いて俺を誘う


それは疲れた体にはとてつもなく魅力的な誘いで、フラフラと吸い寄せられるかのように綺麗な膝の上を目指す俺だったが途中でいきなり横から出してきた足によって躓いてしまう。


「イツキ、いきなり躓くとは大分疲れているようだな」


「いや、今のはユーリィが……」


「なら私が寝所へ連れて行ってやろう」


「別にいいよ。自分で行くから」


「遠慮するな。私にまかせておけ」


全く人の話を聞こうとしないユーリィに背負われて連れて行かれる。

普通なら恥ずかしくて降りようとするが疲れすぎてどうでもいいやという考えに至る俺。


やたらユーリィが嬉しそうだったのと、後ろのマキアがまるで子どものように頬を膨らませていたのが印象的だった。



次の日ヤコブ村を出て行くことになった。どうやら人狼たちは俺達を狙ってきたらしいのでこれ以上ここにいるとまた巻き添えになってしまう。

そう判断して誰にもばれずに日の昇る前村を出る……はずだったが、村の出口にはおっさんが待っていた。


「朝早くからお勤めご苦労様です」


「ハッハッハ、そちらこそそんな荷物を背負ってこれからどこへ行かれるつもりですか?」


チッ、どうやらごまかされてはくれないようだな

あと呆れた目でこっちを見るのは止めたまえレディたち!!


「で、どったのおっさん?」


「いやなに旅立つ前に少し手合わせとを思ってね」


「おっさんも物好きだね」


「では行くぞ!」


オッサンはぎこちない足取りで剣を振り上げながらこちらへやってくる。

大振りな一撃は俺に当たるはずが無く、体を捻らせてかわし昨日ユーリィにされたように横から足をつきだして転ばせる。

「ぐわっ、……さすがにやるなイツキ君」


「おっさんも足がそんな状態でよく立っているね。ほら見せてみな」


座り込んでいるおっさんの足首は人狼の噛み傷でざっくりと裂けている。


「これは酷いな」

とユーリィ


おっさんは体力がありそうなので薬草とアルコールでしっかり消毒した後、大地の力で傷を塞いでいく。かなり痛いはずだがおっさんは目を閉じたままピクリとも動かない

そうして治療が済むとようやく俺は言いたかったことを言う。


「なんで俺が治療している時に来なかったんだ?」


「それは「どうせスゥさんに余計な心配かけたくないとかいうつまらない理由じゃろうよ」


やっぱりね。でもマキアそれを先に言うのはどうかと思うよ

ほらおっさんもタジタジしているし、

「しかし、私はイツキ君のように強い男にならなくてはならない!スゥにはとてもじゃないが……」


「おっさん、おっさんの言う強い男ってのはただ単に腕っぷしが強い奴のことを言うのか?おっさんの憧れていた勇者はそんな奴だったか?」


「それは……違う」


「そうだろ、だから俺は強い男なんかじゃない。」


「そんな……」


急に今まで目指していたものを見失い困惑と落胆に陥るおっさんはガックリと膝をついた。


「だが俺は自分なりに強くあろうとしている。

だからおっさんもゆっくり強さについて考えて結論をだせばいいと思う。

きっとその時おっさんの進むべき道が見つかると思うから」


「イツキ君」


俺は後ろを振り返らずに片手でバイバイして村の出口へ向かった。

俺達の正面から朝日が差し込み気持ちいい出発になるなと思「イツキ君、最っ・高!!」……ったけどそれはやっぱ気のせいだった。



今回は話の都合上短いです。すんません


あとそろそろユーリィの両親を出したいなと思っています


いったいどんな変人か僕も楽しみですww



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