四話 実験
最深部への入り口に入る前にキャンプをして夜を明かすことになった。
「なあ、何でユレイアはこんな危険な旅に出たんだ?」
「無事遺跡から帰った人物は3人しかいないとさっき言ったろ。」
「ああ言ったな。」
「その3人すべてが男なんだ。だから女の私が女の力を証明したいからだ。」
ユレイアの思いつめた表情からなんか過去にあったんだなと勝手に俺は推測した。
するとユレイアは不思議そうな表情をして、
「お前はどうなんだ?旅をしてきたというのは嘘だろ。お前の服はどう見ても旅にはむいてないし全く汚れていない、オマケに武器も持っていない。どこから来たんだ?」
あちゃ~、ばれていたみたいだ。どうすっかな。
「これから旅をする仲間なんだ。嘘はつくな本当のことだけ言え、言いたくなければ言わなくてもいい。」
本当のことを話しても信じないと思うしな、むしろ本当のことのほうが嘘だと思われる。
嘘は言わずに真実の一部だけをいうしかないな。
「気がついたらここについてたんだ。でも植物に襲われることは無いのは本当だ。」
「嘘は言ってないようだが、まあいいだろ。明日はしっかり働いてもらうからな。」
そういってユレイアは自分のテントに入っていった。明日までに能力の練習をしないと不味いな、まだしたのは樹と話したぐらいだしガチで明日死ぬかもしれん。
少し森を歩くとちょっとした空き地を見つけたのでここで練習するか。
ベアンテはなんか植物の力とかいってたけど、確かに今日はけっこう動いたのに疲れてないしそういうことだろ。
もう一つは植物を使役するとか言ってたな、俺的にはこの左腕のタトゥーが気になるな。
ためしに木が生えるのをイメージして左の人差し指で地面をついてみる。
すると目の前に木が生えてきて、10メートルくらいの大きさになるまで約3秒。質量保存の法則までも通じないし、俺の創った木は俺の意思どうりに動いてくれる。いろいろと実験したが普通に生えている木は俺の意思どうりに動かない。頼んでやってもらったがせいぜい葉っぱをおとすぐらいでしょんぼりしていた(十分すごいが)、だが俺が落ち込むなよと手を置いたら急に俺の思い描いたように動き出した。どうやら俺の左手が触れている間は自在にうごくらしい。木は幹を横に伸ばして壁をつくることもできたし、いろいろと無茶な動きをした。なかでも一番すごかったのは俺の身長ぐらいの杖になれと言った時さすがに無理だろうとおもったが、木全体でメキメキいいながら外側から内側へと収縮していき一本の杖になったことだ。
完成した杖はかなりの密度をもっていて堅くしなやかだった。
「今日のとこはこんぐらいにするか。」
満足した俺はキャンプに戻りさっさと寝ることにした。