三十話 酒場での出会い
だいぶ遅れましたがPV10万突破しました。
一度でいいから「私のPVは五十三万です」とか言ってみたい!!
その後近くの宿屋で部屋を借り、ようやく女装のためのカツラと女物の服を着替えた。
俺は本当にしばらくぶりに男として生きられるので重くのしかかってきた肩の荷がとれたかのようにすがすがしい気持ちになっていたが、隣で着替えるナーガは心無しか少しさびしそうな表情をしていた。
それは本当にどうかしている気がしたが世の中にはいろんな人がいるんだと自分に言い聞かせ、言いたい気持ちをグッとこらえた俺は偉かったと思う。
着替えた後はユーリィと合流して近くの酒場に寄った。
造りは少々古そうだが店内はにぎわっていてなかなか良さそうな店だ。ここでも魔獣とマスターのコンビが目立って多くいて少し肩身が狭い気がしたがそんなことを言っているとここでは何処にも行けないから我慢しよう。
とりあえずここの店主に肉料理と飲み物を注文して今回の旅の思い出について語り合った。
ユーリィは俺がサリアの話をしだすとムッとした顔をしてそっぽを向いたのでナーガにアイコンタクトで助けを求めたが、ただ『空気を読めよ』とでも言いたげな顔で見返すばかりだ。なんとかしてユーリィの機嫌をとるためにとりあえず今日疑問に思っていたことを聞いてみる。
「なぁユーリィ、ネヴァとミヴァって知ってるか?」
「ああ、あの伝説の魔獣使いのだろ。」
「良かった。詳しく教えてくれないか?やはり俺にとってユーリィだけが頼りなんだ」
「ふふぅ、仕方ないな」
えらそうに胸を張るユーリィはご満悦の様子だ。
「ネヴァとミヴァは双子でな、幼い頃から魔獣と話すことが出来たらしい。そしてある日二人は非常に珍しいことに森で怪我をしたドラゴンの子どもを見つけたんだ。ドラゴンも最初は二人を警戒していたが毎日話す内に二人と友達になった。
それから二人とドラゴンは共に大きくなり旅へでて、洪水で流されかけた村の人を救ったり、人を食うオーガの群れを倒したりした。
だがそんな冒険も長く続かなかった。彼らと共にいたドラゴン、名はアンヘルというのだがな。そのアンヘルは彼らとの旅の途中メスのドラゴンと出会い、二匹の間に子どもが生まれた。
その子どもを狙ってある魔法使いがねぐらに忍び込み子どもを盗み逃げていった。
ネヴァとミヴァは何とか魔法使いの寝ている隙にその子どもを取り返してアンヘルのもとへと届けたが、アンヘルの怒りは収まらずネヴァとミヴァの制止を振り払いその魔法使いが潜んでいた小さな村を灼熱のブレスで炭化させたが、それでもアンヘルの怒りは収まらない。一説によるとドラゴンの怒りを止められるのはわが子の鳴き声だけといわれているからな。
そしてアンヘルは今のザルナ王国の一つ前の王国であるブリアン王国に飛び立ち破壊をしようとしたがそれを待ち構えていたのがネヴァとミヴァだ。
アンヘルと彼らは大事なパートナーだったが、怒りで興奮したアンヘルにはそれが分からない。
そこでネヴァは両手を、ミヴァは両足をアンヘルに自ら喰わせた。アンヘルは己のマスターの血肉を喰らったことで正気を取り戻し、自らの行いを反省し生涯彼らの手足になることをその場で誓ったらしい」
「その後は?」
「ここから南の方向にあるキリ山脈の方へ飛んでいったらしいがそれ以上はわからないんだ」
さすが伝説になるというだけの話ではあるな。
「お嬢さんなかなか詳しいですがその後の話がいけねぇや」
なんかここの店主のオッサンが会話に参加してきた。
「貴様っ、ユレイア様を侮辱する奴は私が許さんぞ!!」
「いやナーガ落ち着け。お前が出てくると話がややこしくなるから」
「しゃべっていいんで?」
オッサンも気まずそうに言ってくるじゃねぇかナーガのアホッ!!
「ああすまない。どうぞ」
「その話の続きでは確かネヴァとミヴァはそこでドラゴンと共に死んで石になったと聞くぞ。」
「バカかっ!!あんたが言ってるのは首都にあるモニュメントだ。オチはお嬢さんの言うとおりだよ」
隅で飲んでいた冒険者の一人がそう言う。
「何言ってんだ!?俺の話の方が正しい!!」
「俺の聞いた話だと今も二人はキリ山脈で生きてるって話だぞ!!」
酒場の連中が次々と話に入ってきて好き勝手に口論を始めだしたのですっかり蚊帳の外になってしまった俺は奴らを放っておいてグビリと酒を飲む。
次々にビンを開けていく俺を見てユーリィは少し咎めるような視線を送ったが無理はするなよとだけ言って先に宿屋へ帰っていった。
それにしてもさっきから明らかにアルコール度数の高い酒をがぶ飲みしているが全く酔う気配が無い。これもベアンテの能力のせいだとしたらちょっと迷惑だな。
もう二、三人の客を残しほとんどの客がいなくなった頃、隣では途中まで俺に付き合っていたナーガが『ユレイア様~』と呻きながら寝だしたのでさっさと勘定をすまして宿に帰ろうとしたが、その前に俺の服のすそをを引っ張る感触がした。
どうせナーガが寝ぼけて引っ張っているんだろうと思い、振り向いて一発殴ろうとしたが当のナーガはカウンター席で突っ伏して寝ている。
じゃあ俺の服のすそをひっぱっているのはなんだろう?と確認したその先には顔が竜のようで体が馬の生き物がいた。
慌てて飛びのいたがそいつはただ俺をそのアーモンド状の目でじっと見つめてくるだけだったのでどうやら襲う気はないようだ。
「お客さん、心配しないでくだせぇ。そいつはマスターと契約した騎竜だから滅多に人は襲いませんよ」
たまには襲うんじゃねぇか!!
…あまりこいつに近づかないようにしよう
そんな俺の意思を無視して騎竜とやらがこりずに俺の服のすそをひっぱり、ついて来いという意思表示をするので仕方なく店の隅のほうへついていくと木製のテーブルに体を預け寝ている女がいた。騎竜はその女に体を寄せて揺り起こそうとするが女に起きる気配は無く、騎竜は困ったように俺を見る。
「お前の主人なのか?」
騎竜には人語が解せるらしく俺の質問に首をコクリと頷く。
「それでどうしろと?」
騎竜は自分の背に何度も主人を乗せようとするが、うつぶせで脱力しきっているので主人を上手く乗せられない様子だ。
一度ため息をついてから俺は女を抱きかかえる。ただでさえ軽い体だったから今の俺には人型の綿をもっているような重さしか感じられなかった。
騎竜の背に女をのせるとご機嫌な様子でキューと鳴く様子は見た目の厳つさとは逆で可愛かった。
用事がすんだ俺はそのまま会計をして帰ろうとしたが店主が目ざとくナーガという大きな忘れ物を持って帰れと言うので仕方なくナーガの片足だけを掴んで地面を引きずりながら夜道を歩いた。
ナーガが堅い石畳の上を引きずられながら幸せそうな顔をしていたのでムカついて5回ほど間違って投げ出してしまったが、当のナーガはそれでも幸せそうだったので体力の無駄遣いを止め、地面から木を生やしその上にナーガを乗せて宿までその木を伸ばしていくことにした。
道半ば頃に後ろから蹄の音が聞こえだし、不審に思い振り返ると背中に主人を乗せた例の騎竜だったので驚いた。きっと主人と同じ宿なのだろう
「お前も大変だな」
そんなこと無いよとばかりに首を振る騎竜
「そうか、俺は大変だよ」
俺が引きずっている物を見た後、こちらを向きかわいそうにと言うように軽く鳴く。
こいつはいい奴だな
そのまま目的地の宿につきさっさと寝るために自分の部屋に帰ろうとしたがそこで後ろから自分を引っ張る存在がいた。
「今度は何だ?」
騎竜は自分の背に乗っている主人を首でさす。
「もしかして主人が部屋の鍵を持っていて入れないのか?」
肯定を示すように縦に首を振る。
仕方ないとは言え女のボディチェックは犯罪の匂いがしてなかなか気が進まなかったがしぶとく騎竜がせまるのでなるべく意識せずにやることにした。
だが予想以上にこの女は素晴らしいプロポーションだったので理性を抑えるのが大変だった。
しかもそれでいてちょうどいい筋肉がついているのでおそらく俺達と一緒の冒険者だろう。
時折出す息の漏れる声は今までの人生で一度も彼女がいない俺には毒過ぎる。
とりあえず目的の鍵を探し出し部屋の鍵を開け、ついでに女をベッドに寝かしてやった。
ただもっと肌の感触が味わいたいからとかじゃ絶対無い!!
騎竜にお休みを言って帰ろうとしたらいきなり強い力で引っ張られ俺は意識を失った。
今までずっと書いた小説をストックしておりましたが最近は考え付いたものをすぐ投稿しているもんですからミスもあると思います。
バンバン悪いところ、あれば良いところを教えてください!!