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樹当千  作者: 千葉
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二十九話 別れ

更新が遅れた分、今回はちょっと長めなのでお許しください!



俺達はユーリィが水浴びをしている場所に急ぐ。

「お~い、ユーリィ!!」

「ちょっ!?こっちに来るなイツキ!!」

「重要なことなんだよ」

俺は草の陰で自分そっくりの形の木人形を創る。色は元の木のままなので近づけばバレるが、幸いにも今は夜なのでかなり近づかないと分からないだろう。

「ま、待て!こっちに来るなっ!!」

「よしっ、今行く!!」

「なんでだバカっ!!!」

俺の声に合わして人形を飛び出させた瞬間ユーリィの氷魔法をくらって氷漬けになった人形が目の前を横切っていった。

「な、だから言ったろ危険だって」

「ユレイア様の氷魔法をくらえるなんて幸せな人形だな」

「いや、あれがお前だったらどうだって話?」

「ユレイア様の氷魔法をくらえるなんて幸せな私だな」

ダメだこいつ。人間として大事な何かを失っている。

「ほほぅ、なかなか興味深いことを話しているな」

俺とナーガがゆっくり振り返るとそこには大きめのタオルを体に巻いた女神がいた。

「お前たちは人があれほど言ったことが聞けないのか?」

「「それでも可能性がある限りあきらめたくなかったんだ(です)」」

「いいセリフが悪く聞こえるからやめろっ!」




そんな感じで数日間旅を続けた。

レイドから西へ西へと街道沿いに移動していくとついに目的地のダッドルメアに到着した。

ダッドルメアは品種配合によって有能な移動用、戦闘用、補助用、捕獲用の魔獣を次々と生み出してきた地であり、魔獣使いを育成するための学校も設立されている。

サリアとクミはここからワイバーンの飛行船に乗って故郷に帰るらしい。

「ワイバーン船は今日の夕方に出発らしいからそれまで街を見ましょうイツミ!」

やたら元気があるクミは俺の腕を掴んで引っ張る。

俺はユーリィとナーガに助けを求めようとアイコンタクトをするが、『楽しめ』、『子ども相手に犯罪は犯すなよ』と全然とりあってくれなかった。

サリアもクミの侍女なので一緒についていくと言ったら急にユレイアが不機嫌な顔をした。

なんでだろう?


街の入り口に建つ巨大な門には様々な魔獣たちの絵が精巧なレリーフで描かれており今にも動き出しそうに見える。その中には小型のドラゴンやゴブリン、ユニコーンなど有名なものもいたが今まで全く見たことの無い奇妙な怪物もたくさんいた。

俺はじっくりそれを見て行きたかったがクミがせかすのでしかたなくあきらめた。

「なんでもこの門は今まで使い魔になった魔獣たちが描かれているらしいですよ」

「へぇ~、サリアは物知りなんだな」

「そんなこと無いですよ/////」

ものすごく照れてるな。なんかクールなキャラが照れると可愛さは当社比で三倍は跳ね上がると思う。そしてそんな俺の思いを見越してか、後ろからのユーリィの視線の破壊力も三倍に跳ね上がる。

門を通り過ぎるとそこには大きな噴水があり、近くのベンチでは魔獣使いらしき人が自分の魔獣と和んでいる。まるで小型犬のようなかわいいものから一つ目のゴツイ体をした魔獣までたくさんいたが唯一共通しているのは、みんなパートナーと仲が良さそうにしているとこだ。俺としては正直、不細工な豚の魔獣が飼い主の男と頬を寄せ合っているのを見るのはキツかった。

建物はレンガ造りの上から更に鉄板を重ねた非常に頑丈なもので、おそらく魔獣が暴れた時を考えて造られているのだろう。その建物の所々には屋上に飛翔系の魔獣のために巨大な止まり木が設置されている。

そしてちょうどダッドルメアを抱え込むように山があり、山の中腹には立派なお城が建っている。

「あのお城は魔獣使いのための学校です。あそこからかの偉大な魔獣使いネヴァとミヴァが輩出されたんですよ。」

はい、何のことやらな。サリアの言い方からすごく有名な人物らしいが俺が知るわけが無い。サリアに分からないといって赤っ恥をかくのは嫌なので後でユーリィかナーガに聞くとしよう。

「あれ、クミがいないぞ」

さっきまで俺の視界をウロウロしていたんだけどな。

「本当ですか?お嬢様に何かあったら大変!私探してきます!!」

そういってサリアは人ごみと魔獣ごみ?の中へ入っていった。

「……よしっ、観光に行くか」

「いや何でだイツキ!?」「おかしいだろ!」

「冗談だってアハハハハ」

ユーリィとナーガが冷たい目で俺を見る。

「さっさと探そうぜ!」

後ろから本日二度目の冷たい視線を感じたがそんなことは気にせず颯爽と走り出す


結果すぐにクミは見つかった。というかダッドルメアの自衛団詰め所の迷子センターらしき所で泣きながら自衛団の人とお菓子を食べていた。

俺を見ると泣きながらしがみついてきたクミ、なんかドラマとかでよく見た光景を実際に体験するとは思わなかったのでちょっと感動した。そして俺にしがみついて泣く幼女を見ると・・ジュルリ。

「あの大丈夫ですか?よだれが出てますけど」

おっといかんいかん、ナーガの言ったことを思い出せ俺っ!!

「グスッ・・・イツミごめんね」

「私はいいけどサリアかなり心配していたから後で謝りなよ」

「ヒック、わかった」


サリア達に合流するとクミは深く頭を下げてあやまった。

「あまり……心配させないでくださいね」

「……うん」

その後はみんなで観光をし、クミはなんだかたくさんのお土産を買っていた。俺も昔修学旅行の時買ったな、懐かしい。


楽しい時間もあっという間に過ぎワイバーン船の出発の時間がやってきた。飛行船のそばで待機しているワイバーンは体中に棘がはえている小型のドラゴンという感じでかっこいい。

「本当にお世話になりました」

「気にしなくていいよ」

「そうだぞ」

「そうですわ」

「クミ、お別れだな。」

「イツミ達もこんど内の領に来たときは寄ってね。絶対だから」

そう言うとさっさと飛行船の中に入ってしまった。

「お嬢様は別れがつらくなるのが耐えられなかったんですよ」

俺達は互いの顔を見てニヤニヤする。

「それとイツミさん、ちょっとこちらへ」

俺は不思議に思ったがとりあえずサリアの言うとおりにする。

「最後に一言、お嬢様は鈍くないですよ」

そう言うと飛行船へと走っていく。

「ちょっ、それどういう意味だ?」

サリアは走りながらこちらを振り向いて微笑むだけで何も答えてくれない。


そのままワイバーン船は飛び立とうとするがその前にクミが窓から顔を出して叫んだ。

「イツミ今度はその女装を解いた時に会いましょう!!」

何・・・だと・・・!?

バレてたのか!?確かにサリアの言うとおりだよ。


でも一つだけ疑問があるな。

何故ナーガの女装はバレなかったんだ?


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