二十六話 予想できたこの展開
その後もしばらく俺達は街にいた。それというのも俺は一週間意識が無かったらしく一応念のために五日ほど入院することになったのだ。
一日に数回聖職者が神聖術の治癒をかけにやってくるのだが、実際俺の体はベアンテの力のおかげで二日目には体力もすっかり回復したので暇を持て余した俺は病室のベッドの上でゴロゴロしていた。
ちなみにあの赤いローブは俺が完全に駄目にしてしまったので、今はナーガが買ってきてくれた紺色の麻のシャツと七分丈のズボンをはいている。旅には向いてなさそうだがなかなか丈夫なつくりをしていてけっこう俺は気に入っている。
病院というのは本当に暇なものでぼんやりしながらベッドの上で寝転んでいると足首に巻きついたイバラの棘がシーツに引っかかり破いてしまった。俺はどうにかならんものかと考え、とりあえずちょっとイバラに触ってみたが不思議と棘が全く痛くなかった。やはり俺自身の能力だから俺に危害が加わることはないのだろう。
とは言ってもこのままだと服を着るたびや、ベッドで寝るたびに引っかかりそうで怖いな。
とりあえず一回外してみるか。
結果、外れねぇ!!あきらかに足から外れそうなぐらい輪っかには余裕があるのだが足首から先はまるで不可視の壁でもあるかのごとく動かなくなる。
こうなればあれだな。太古の時代より存在する究極の解決方法『押して駄目なら引いてみろ』作戦しかねえな。
先程までは外に引っ張ろうとしていたから今度は中に埋め込ませようぐらいの気持ちで行くか。両手でしっかりイバラを掴んで足首に押し当てるようにすると、俺の足の中にイバラは吸い込まれていった。
ミッションコンプリート!!
まぁどういう構造かは気になるが異世界だからなんでもありということにしておこう。
それよりさっきから頭に違和感を感じるな。
何だろうと思い俺は頭を触ると、そこにはさっき触ったような触感がするものがあった。
その正体を確かめるために病室の隅についている鏡で見てみるとやはりというか何と言うか。
よく大会で優勝した人がつけるのは月桂樹の冠だが俺のそれはイバラでできた冠だった。
・・・・うん、最初はなんだか嫌だったが慣れるとむしろ良いな。
「おーいイツキ!!急いで支度しろっ、この街を出るぞ!!」
「どうしたナーガ、それよりこの冠似合ってない?」
「あ・・・ああ、なかなか良いんじゃないか・・・・て、そんなことよりお前はさっさとこれに着替えろ!ユレイア様も今食糧品の調達をされているところだ、準備が整い次第ここを出発するぞ!!」
「何でなんや~~、うちまだ体力回復してないんやでー!!」
「嘘付けっ!!ピンピンしているくせに。それとその気持ち悪いしゃべり方を止めろ!!」
「で、何故この街を出なきゃいけないんだ?」
『・・・こいつ急に真面目になりやがって』
「おいおい、何か大事なことがあったんじゃないか?」
「くそっ!釈然とせんが、説明しよう。とりあえずこれを見ろ。」
ナーガは新聞紙っぽいものを俺に渡す。この世界にもあるんだな
今まで全く見たことが無い文字で書かれていたが俺には読めた。たぶんベアンテの力だと思うので俺の中にいるベアンテに感謝しておこう。
「えーと、どれどれ『魔法都市レイドの視察中にゼノア教の幹部ローグ・エソードさんが何者かの手によって殺害されました。ゼノア教はこの犯人の捜索のためにレイドへ聖地守護隊の派遣をするそうです。』だって。アホな事をした奴がいるもんだなぁアハハハハ」
「現実を受け止めろイツキ」
こいつはヤバイぞ、これ完全に俺だし。あの時きれてなんだか殺しちゃったみたいだな、ついに俺も人殺しかぁ~。
「私もユレイア様からこれを聞いた時は驚いたぞ。ここレイドは完全な中立都市なためにあらゆる武装勢力の派遣・駐屯は禁じられているはずなのにな。ゼノア教はかなりのコネを持っているようだ。そしてなんだか落ち込んでいるところを更に凹ませるようで悪いが、この聖地守護隊はその名とは裏腹にドラゴンの討伐も受け持つ実力派戦闘部隊だぞ。」
「よし、さっさと逃げようぜ!!」
「そうしたいのはやまやまなんだが、今から急に出ようとしても門番に必ず止められる。それを回避するために城壁から抜け出してもし見つかってしまった場合は更に怪しまれる結果になるから危険すぎるだろう。」
「じゃあどうすんだ?」
「幸い冒険者ギルドの護衛依頼は門番のチェックが甘いからそこを狙おうと思う。」
「もう手配したのか?」
「ああ一応な」
「だったら何の心配もいらないじゃないか」
「ところが護衛対象はどこぞの貴族のお嬢様でな、その子が護衛は女だけで構成すると言ってきて・・・」
「だったら無理じゃん」
「いや、女3人で登録した」
「…えっ!?ナーガ知っているか、俺らは生物学上オスなんだぞ」
「仕方ないんだ、私だって一生懸命探したがこれしか護衛依頼はなかった」
「・・・・明日に出発しない?」
「聖地守護団は遅くとも今日の深夜にはここに到着するそうだ。そこまで早い理由はおそらくブーストの魔法で移動速度を上げているんだろう」
「・・・じゃあひょっとしたらさっきお前が着替えろと言って渡した袋には女物の服がはいっているんじゃ・・・」
「惜しいな、服とカツラだ」
この時程俺の予想が外れて欲しかったことは無い。
投稿が遅れた理由は小説を書き溜めていたからです。
決してゲームにうつつを抜かしていた訳ではございません!!
どうぞこれからもご意見ご感想をよろしくお願いします!!