二十三話 負傷
俺は『痛くないのかなぁ?』と思った。
だがそんな俺の心配を他所に奴は痙攣したように体をビクビク震わせながら、徐々に体の周りから赤い光を放ち始めている。俺はなんだか嫌な予感がしてベアンテでやつの体を拘束した。
「はぁ、はぁ、チカラが、力が満ちてくるジャナイ」
ついにやつの体の周りに力が溢れるのがはっきりと見えるまでになった。
ハンターの漫画では念だが、これはおそらく魔力だと思われる。
「まずはこのうざったらしい草どもを・・」
奴は先程とは比べ物にならないほどの炎を頭上に呼び寄せた。
これはヤバイと思い俺は自分の体を覆うように木を展開した後俺の力の限界まで木を硬質化させ防いだ。そのあとすぐに轟という音がしてあたりの植物達の意思が感じられなくなったので外でだいたい何があったのか分かった。
俺が木の壁から出ると奴はほぼ焼け野原と化した植物園の中でにやけた面をしながら俺を待っていた。
「あとは君だけジャナイ」
奴はこっちに脱力したような体勢でやってきてろくに構えずもせずただまっすぐ剣を振り下ろした。俺が槍でそれを受け止めた時、あの勢いでは考えられないほどの力が俺の両手に響いた。まるで象がのしかかってきたようなその攻撃に俺は槍を地面に落としてしまった。槍が壊れなかったのは奇跡に近いだろう。
俺はあわてて拾おうとすると腿が焼けたような痛みを感じて勢いよく転んだ。
振り返ってみると腿がばっさり切られ、そこからたくさんの血が奴の剣のもとへ吸い込まれていた。今まで感じたことの無いほどの痛みに冷や汗がダラダラと流れ俺は低く呻いた。
「君はじっくりいたぶってから殺してやるジャナイ」
くそっ、俺はこんなところで死ぬのか?
ユーリィを助けずに死んでたまるか!!
腿から流れる血を必死に手で抑え槍を杖代わりに立つ。信じられないほど痛いがまだ立っていられる。
「・・・私はそういう根性論は嫌いジャナイ。君はさっさと絶望した表情を私に見せるジャナイ」
「俺だって・・・嫌いだよ。・・・・でもな・・ここで立たなきゃ・・・・・ユーリィ救えないだろ?」
俺が言い終わると同時に奴は俺の腹をけりつけ俺はそのまま数メートルほど吹き飛ばされ、何か堅い物にぶつかり止まった。
ぶつかった物を見るとそれは巨大な樹だった。先程の奴の魔法でもそれは全く焼けた跡が無く、表面はゴツゴツとしていて普通なら堅くて冷たい印象を与えるがそれは不思議と暖かさを感じた。
俺は安心を求めてか、それに触れた。
そして俺は木に吸い込まれた。
最近になってミスチルを聞きながら執筆していると全く筆が進まないことに気づいた千葉です。