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樹当千  作者: 千葉
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二十二話 再戦

いきなり引っ張られてナーガはしばらくギャアギャア言っていたが、道を走りながら事情を話したら自分でスクッと立ち走り始めた。

辺りはすっかり夜になっていたが幸いなことに月(正確には月では無くウィスプという天体らしいが)明かりが辺りを照らしていて、道がはっきり見えるので夜の闇の中で足を躓かせることも無い。

俺達は痛む体に鞭打ちながらやっとの思いでドームにたどり着いた。距離はせいぜい1キロぐらいだったが今の俺の体にはかなり遠くに感じられた。


ドームの入り口にはあの青いローブの少女が俺達を待ち構えていた。

「イツキ、お前は先に行け」

「・・・頼んだぞ!」

俺は槍を使って棒高跳びの要領で少女の真上を飛び越える。

「待ちなさい!ローグ様のところには行かせないわ!」

少女は着地した俺を狙い両手から勢いよくナイフを投擲するが俺は槍を回して弾く。

「おっと、お前の相手は私だぞ」

「ちっ、さっさと片付けてやる!」

後ろでナーガたちの声が聞こえてくるが俺は後ろ髪を惹かれる思いで暗いドームの中に飛び込んだ。




ドームの中は俺達が探し求めていた植物園のようだったが、目の前で奴がユーリィを肩に背負っているのを見た俺には全く喜べる状況ではなかった。

「おいっ!ユーリィに何をした?」

「ちょっと眠ってもらっただけジャナイ。いやそれにしても滑稽だったジャナイ、私が魔導具でちょっとお前に化けたらこの女はあっさりと騙されたジャナイ。」

俺は奴への怒りが沸々と湧いてくるのを感じ槍を構えた。

「ほう、まだやる気ジャナイ。次は殺すけどいいジャナイ?」

「お前をな」

奴は俺の言葉を面白そうに聞きながら耳にジャラジャラついているピアスの中の一つに軽く触れると、奴の背中に背負われていたユーリィがいきなり消えた。

「貴様!!ユーリィを何処へ!?」

「落ち着くジャナイ、あの女はこの魔導具『闇の密室』の中へご案内しただけジャナイ。もちろんこのピアスはただの拘束用魔導具では無いジャナイ。中に閉じ込めた対象には素敵な悪夢へとご招待し小一時間で廃人同様へするという素晴らしい魔導具ジャナイ!!」

くそっ、ただでさえ体が本調子では無いのに時間制限付きか。状況は悪い方向にしかいかないがここで弱みを見せたらつけこまれるな。

「お前を殺す理由がまた増えたな」

「馬鹿にはこの素晴らしさが理解できないジャナイ」

「ほざけっ!!」

俺は一気に奴との間合いを詰めて槍で突くがさっきまで何も持っていなかった奴の手にはいつの間にか一振りの剣があり、その邪悪なオーラを放つ剣で俺の突きは防がれた。

刀身にたくさんの異国の文字が浮かんでいるそのロングソードは主人の意思を反映するように鈍く光っている。

「続けてこれは魔剣ポラチネリカといってネ。この刀身が少しでも相手を傷つければそこから血を吸出しあっという間にミイラに変えてしまうジャナイ。」

お前にお似合いの陰湿さだな。と話す暇すらも与えてくれず奴は切りかかってくる。

俺は連続で切りかかってくる奴の攻撃を防ぐがやつの剣技は相当なものでたまらず距離をとる。

「あららとんだ臆病者ジャナイ」

うるせい!俺はつい最近まで普通の高校生だったんだぞ!

それに少しびびったのもあるが一番の目的は戦いやすそうな場所へと移動しただけだしな。

「時間が惜しいからこれでお終いにするぞ」

俺はこの植物園にある植物達に協力をお願いする。そこには魔獣すら襲う植物もたくさんいたが俺の意思を感じ取ると萎縮して素直になり、ドームいっぱいに植物たちのざわめきが広がるほどになってきた。

当然奴もこの異様な事態に気づき身構える。俺は心の中で植物たちに合図をだすと同時に左手からベアンテを大量に放つ。ベアンテはひとつひとつが意思を持っているかのように複雑な軌跡を描いて奴を襲い、植物たちは地面の土を吹き飛ばす勢いで奴のもとへとその強力な酸や棘をとどけようとする。

奴はその嵐のような攻撃の中剣で切り裂きつつ火球を放ち奴を襲っていた植物を撃退したが次々に俺が植物に襲わせているので休みを与えさせない。

俺は植物たちの包囲網をどんどん狭めていき奴は端へ端へと追い詰められついに奴の逃げ場は無くなった。

「ジ・エンドだ」

「・・・クッククク、私をここまで追い詰めるとはね。この手は使いたくなかったんだが・・」

何か奴の様子がおかしいので俺は奴をベアンテで奴を拘束しようとした瞬間、奴は耳にたくさんついているピアスの中からもっとも大きな赤い宝石が入ったものを手にとり地面へと叩きつけて壊した。

俺が突然のことで驚いていると、奴の足下に転がっている宝石の欠片が急に赤い閃光をだし更に俺は驚かされた。だが奴にとってその現象は当然のものだったらしく驚いた様子は見られずその代わりに興奮した様子で近寄ると宝石の欠片を手に集めてそのまま飲み込んだ。


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