二十話 強敵
そして都市の中心部から離れて古い町並みが広がる場所に来た。
この辺りに来ると魔法使いの人もあまりいないらしく建物もレンガ造りのいたって普通なもので、空を飛ぶ魔獣の姿も数匹程度だ。
「ここまで逃げる必要あったか?」
俺は疲れを感じて建物の壁に寄りかかる。
「用心には用心をという言葉があるだろう」
ナーガもそう言いながら俺の真似をして寄りかかる。
「だったらまだまだ用心が足りないジャナイ」
急な声に驚き俺は身構えて声の発生源を探す。
「上か!?」
ナーガの言うとおりに上を見上げると、ジャラジャラとピアスをつけた赤い髪の男が俺達が寄りかかっている建物の屋上に立っているのを見つけた。
「馬鹿な!?声を聞くまでに気配を感じなかったぞ!」
「・・・それはたぶんこの子の力ジャナイ」
すると男の後ろから店内にいたあの少女が出てきた。
「貴様っ、あの時の!?よくも俺を・・・」
「な、何よ、『裏切ったな!』とでも言いたいの?別に私は最初からあんた達の味方なんかじゃ・・「よくも俺をホモと勘違いしたな!」
「そこっ!?」
「おたのしみのところ申し訳ないジャナイ。君はさっさとそのローブをおとなしくよこすジャナイ」
「断るジャナイ」
「・・わ、私は人の真似をするやつが一番許せないジャナイ」
「落ち着いてローグ様。」
「お前は下がってるジャナイ」
ローグとか言う奴は手のひらに小さな火の玉をつくりそのまま俺達に投げつけた。俺とナーガはその場から急いでバックステップしてかわしたが、どうやら相当な威力が込められていたようで俺達を爆風が襲う。
なす術も無く俺は転がりレンガ造りの家に突っ込む。
かなり強く打ち付けたように感じたがローブのおかげでダメージは無い。
「大丈夫かナーガ!?」
「俺は平気だ」
瓦礫の中からひょろっと出てくる。なんで大丈夫なんだ!?
「あららうまく避けたジャナイ、でもこれはどうジャナイ」
奴は今度は両の手のひらに火の玉をつくり俺とナーガを個別に狙って放つ。
俺は間一髪目の前に木を生やして防ぐがあっという間に火が燃え広がり、危うくローブに火がつきそうになる。
危ねぇ!こんな貴重品が灰になるなんてことになったらもったいないじゃすまないぞ。
「そこの君はくだらないことを気にしてるジャナイ、そのローブはこの程度の魔法攻撃で駄目になるようなつくりはしてないジャナイ。・・まぁ君の体は別だから避けた方が賢明ジャナイ」
ユーリィの嘘つき!!
奴は最後の言葉と共に今度は両手を合わせて巨大な火の玉をつくり再び放つ。
さすがに今回の攻撃はさっきと同じように防げないな。俺は左手からベアンテを出し、近くの建物に絡ませるとそのままベアンテに引っ張ってもらって火の玉を避ける。
少し距離をおいたことで心にゆとりができた俺は奴がまだ屋上にたっているのを確認した。
俺を追い詰めておいてあの位置から動かないと言うことは奴は完全遠距離タイプの魔法使いだな。
ナーガは奴の放つ火球を次々と避けていたがきりが無いと判断したらしく俺のいる場所に一時退避した。
「イツキ俺がおとりになる。その内に奴のもとへなんとかして行って、どうにかして倒せ!」
「えっ!?不確定要素が多すぎなんだけど!」
「みたところ奴は典型的な遠距離タイプの魔法使いだから接近戦は苦手なはずだ!それともお前に重要なおとりがこなせれるか?」
「くっ、仕方ない」
「じゃあ、行くぞ!!」
ナーガはそう言いながら奴の方へ突っ込む。
奴は再びナーガを標的にし始めるが、ナーガは奴を翻弄するようにかわしていく。
奴の攻撃がナーガに集中し始めたので俺はその隙を突くように猛ダッシュで建物に向かい十八番の植物創造で足下に木を生やしていっきに屋上へと飛び出す。
「し、しまったジャナイ!」
「ローグ様!危ない」
奴の後ろで少女が叫ぶが、この距離では間に合いそうも無い。
俺は勝利を確信し奴に槍を突きたてようとした瞬間、奴の口が邪悪に歪むのが見えた。
「なんてね☆」
次の瞬間俺は屋上のゴツゴツした床に叩きつけられていた。
いきなりの行動だったので俺は奴が俺の鳩尾を蹴り更に右手で俺の頬を殴り倒したんだと気づくまでに少し時間がかかりぼんやりしてしまっていた。
だがその時間は奴にとって十分だったらしく俺がきていたローブを剥ぎ取るとそのまま俺を地面へ蹴り落とした。
俺は受身も取れず十メートル以上の高さから堅いレンガの上へ落ちた。
落ちた瞬間の衝撃で肺に溜まっていた空気がすべて外にでたような息苦しさを感じ、その後体中を激しい痛みが襲った。
「イツキ!!」
ナーガの必死そうな声が遠くから聞こえる。
「う~ん、この内在魔力はあの伝説のロッドマスター級ジャナイ。君のようなグズがもっていたらこのローブがかわいそうだから私がもらってあげるジャナイ」
「き、貴様らーー!!」
「あぁ、まだゴミがいたジャナイ。さっさと片付けて次に行くジャナイ」
俺は消えいく意識の中で奴の勝ち誇った声を聞いた・・どうせならユーリィのきれいな声が聞きたかった・・な・・・
ついに敵登場!これからの展開がどうなるかは作者自身ですら分からない!!