十二話 嫌な予感はまず当たる
一週間はあっという間に過ぎ、いよいよ大会の日になった。
天気は晴天、闘技場の周りは活気に溢れている。俺は観客席の人の多さで緊張して鬱になってきている。それに待合室にいる人達の強そうなこと強そうなこと。
やたらに傷がある人や、おどろおどろしい大きな斧をもった人がひしめいているし、発せられる威厳が違う。
「今日勝てる気がしないな。」
「何を言っているイツキ?やる前からそんなことを言っては勝てるものも勝てないぞ。あっ、ほらもうすぐ20人ずつの総当り予選だぞ。行って来い!」
しぶしぶ闘技場に向かう。
全員が闘技場に揃うとこの大会の解説者が舞台に現れた。
「ルール説明をします。殺しは認めません、ギブアップかリングアウト、戦闘不能と思われたら審判がとめます。まずは恒例の総当り戦だ!!残り二人になるまで初参加のみんなも常連のみんなも生き残ってくれ。では開始!!」
いっせいに武器をかまえて雄たけびをあげる選手たち。辺りを見回しても杖らしきものを持った魔法使いは見当たらない、どうやらあまり魔法使い人口は多くないみたいだ。だいぶ気が楽になった俺は日課の走りでだいぶ鍛えられたスピードで一気に相手に向かい槍で相手の武器を跳ね飛ばし、石突で後頭部をたたいて眠らせていく。あっという間に九人倒したらもう目の前には一人しか残ってなかった。
そいつをよく見るとなんと、馬車に乗っていた目を包帯で隠していた男だった。
「強いんだな。」
「あんたも倒した人数は一緒じゃないか」
「ははっ、確かに。名前は?」
「イツキ・チバだ。あんたは?」
「ナーガだ」
そのあと軽く飲みにいこうと約束して俺たちは別れた。観客は拍手喝采で俺たちを見送った。
ユーリィの試合が気になって見にいくと、ちょうど最後に残ったもう一人の男にナンパされたのがイラついたのかそいつの頭を剣の峰でうって気絶させたところだった。
そんなことしていいのかと思ったが心配は無用だった。
「先ほどユレイア選手が最後に残った男を気絶させましたが、あれは正当防衛なので不問とします。かわいいは正義なのです、ハイ。」
大部分の男の観客はうんうんとうなずいていたが、女性の観客はいまいち納得してない様子だった。
「どうだイツキ見てたか?」
「うん、最後だけ」
「で、勝ったんだな?」
「うん」
よっしとユーリィはガッツポーズした。かわいいなぁ
「あ、俺これから飲みにいくから」
「えっ、今日は祝勝会じゃないのか?」
「ごめんな、先約があるから。」
「それは、女か?」
ユーリィは真面目な顔をして聞く。もしかしてやきもち妬いてんのか?だとしたらこんなに嬉しいことは無い!ここはひっかけてみるか。
「気になんの?」
「ああ、大会の参加者を脱落させるために女をけしかけるのはよくある事だからな」
「ああ、そう。」
ちょっと落ち込みながらナーガと待ち合わせた酒場にいった。中にはたくさんのガラの悪いおっさんがいた、働けよ。辺りを見回すとナーガがカウンター席からこっちに向かって手を振っていたのでそのまま隣の席に座る。
「どうした?落ち込んでいるようだが?」
「あんたは目が見えてないのにそんなことも分かるのか?」
「気配をかんじるのがうまいんだ。まぁ感情はなんとなく分かる程度ぐらいだが、イツキお前の気配には驚いたぞ」
「どうしてだ?」
「森そのものが歩いているかのように感じたんだ。初めて馬車に乗り合わせたときは驚いた」
まぁ、たいていの植物は使役できるし、生やせるからな。
俺たちが話しているのを見ると店員のおばちゃんがやってきた。
「あんたらは今日予選を勝ち抜いた人たちだね、おごりだ。」
そういっておばちゃんが二つビールをさしだした。
「あんがと」「恩にきる」
二人でグビグビやる。
「あんたたちも凄かったけど、あの女剣士も凄かったね。たしかユレイアっていったっけ」
「それ俺の知り合い」
「本当かい!?でももう一人は知らないだろ、あの選手は予選最後の試合だったからね。」
「誰?」
「なんだか変な仮面をかぶって参加しているあんた以上の槍の使い手だよ。なんたって開始3秒で10人をたたきのめしたんだ!」
そこまでの使い手がいたのか、気になるな。
「もう少し何か特徴はないの?」
「そういえば、金色の槍をもっていたね。」
あれ?たしか知り合いがそんな槍をつかっていたような・・・まさかな、そんなはずは無い。あの人もそこまで暇人じゃないはずだ、そう信じたい。
「まるで黄金のカナゼみたいだな。一時期は真似するやつが多かったけど、十年以上たった今やると逆に新鮮だな。」
俺の考えを無視してふざけて答えるナーガ、頼むからそれ以上この話を膨らませるな。
「ま、まぁ当たるのはだいぶ先になるだろうし、今は関係ないな!」
「何をいっているんだい、次あんたが戦う相手じゃないか」
え・・マジで!?
きっと大丈夫だ。そんなはずは無い!まず勝てる気がしない
戦闘描写短っ!
と思ったかたもいらっしゃるかもしれませんが、僕もその中の一人です。
あと新キャラ登場いたしました、これからも増やしていきたいです!