一話 始まり
私こと千葉 樹はその日学校にいた。
正確に言えば学校の保健室にいた。
二時間目の体育でドッチボールの球を頭に受け倒れたのだった。倒れた俺を心配して様子を見に来る女子などもちろんいないわけであって、黙って天井のシミを数えているとドアが開いた。
「オー倒れたのかい優等生君」
スレンダーな体をした女保険教諭佐伯 望先生、通称男子生徒の望み、リアルエロゲ、起きたまま見る夢、など様々な呼び名がある。
「どうしたんだい優等生君、最近なかなかここに来てくれないじゃないか」
「俺の記憶の中じゃ、熱射病で倒れた一回きりな気がします先生。あと俺の成績は下から数えて3番目です。」
「なーにかわいい生徒にはいっぱい来て欲しいもんなんだ、先生ってのは。紅茶飲むか?」
「先生は一人の生徒を特別扱いしちゃいけないんだ。」
「私だって先生の前に一人の人間だ。好き嫌いだってある。」
そう言って紅茶をカップにコポコポつぐ。
「なあ、優等生君に見てもらいたいものがあるんだ」
「何です?」
「えーとたしかここらにあったはず」
先生は紅茶を飲みながら答える。えっ、俺のは?と思ったのはしかたないことだろう。
「これだこれ」
先生が持ってきたのは10センチぐらいの鉢植えだった。中にあるつる草のような植物はきれいな白い花を咲かしている。
「君は植物が好きだろ。この花の名前を知っているか?」
「俺は植物が好きですけどあんまり名前は知らないんです。でもまったくこの花はみたことがないですね。」
「だろ、珍しいと思って校長の庭からパクッtじゃなくて、道端に落ちているのを拾ったんだ。」
「へー、前半部分は全くなにも聞こえませんでしたけど確かに珍しそうですね。放課後図書室にいって、本を借りてみます。」
「ああ頼んだぞ。くれぐれもこの学校の最高権力者にみつからないように任務を遂行しろ。」
「イエッサー」
放課後俺は図書室にしのびはいり、幾重のトラップをかいくぐり無事保健室への帰還を成功した。先生は
「よくやったな!」
とだけ言い残し、帰っていった。
その後俺はいとしい植物ちゃんに話しかけながら、借りた本を読んでいった。
この姿を見られれば警察行きか良くとも精神病院行きだ。
3時間後
「ない、完全に無い。世界中にこの花は存在しない。ということは俺がこの新種の第一発見者てことかあ!じゃあ名前をつけますかな。」
うーん、ありきたりなのは嫌だし、かといってあまり派手でも「あの人が厨二臭い名前をつけた人よ、ダッサ」となってしまうしな。
「よし決めたお前の名はベアンテだ!!ふふーん、われながらいい名だ。」
すると突然目の前の植物が巨大化していくではないか!
「どーしたベアンテ何が気にくわないのだ、いい名だと思うぞ。」
俺の意思など関係ないように、更に大きくなるベアンテは俺に絡みつくようにつるをのばしていく。
「おーいベアンテちゃん止めて落ち着くんだ。ベアちゃんギブです。グーテンモルゲン」
どんどんパニくる俺の視界がベアンテのつるで覆い隠されていく。
「ええーい南無三!ままよ!大往生!」
完全に俺の目の前が真っ暗になったところで俺は意識を失った。