人工知能の国有化の方法とその後の世界秩序について
私は前に人工知能は国有化されるべきであるとする記事を書いた。何のことかわからない人はシンギュラリティ後の理想の政治について改を参照するように。ここでは人工知能技術をどのように買収すればよいのかとその後の国際秩序について考察してみた。
シンギュラリティ後は人工知能技術を民間企業から買い取るべきだと私は述べた。しかし、人工知能技術を買収するためには莫大なお金がかかる。そこで私がお勧めしたいのが、企業の人工知能技術を国内でのみ人工知能技術を独占的に使用し国内向けに独占的に人工知能技術を提供する権利(海外で人工知能技術を使用したり海外向けに人工知能技術を提供したりする権利は含まない)を買い取ることだ。国家としては国内で人工知能技術を独占的に使用し提供する権利が必要なのであって、人工知能技術の所有権や海外で人工知能技術を使用する権利や海外向けに人工知能技術を提供する権利はいらないものです。そして企業が真に手放したくないのは人工知能技術の所有権と海外で人工知能技術を使用する権利と海外向けに人工知能技術を提供する権利であって、国内でのみ人工知能技術を独占的に使用し国内向けに独占的に人工知能技術を提供する権利ではありません。故にこの条件だと国家は比較的安価に人工知能技術を企業から買い取ることができるし、人工知能開発企業は自身が持つ人工知能技術を複数の国に売ることで莫大なお金を稼ぐことができる。この取引なら企業も国家も利益を上げることができるのです。
ところがこうやって複数の国がシンギュラリティ後に人工知能技術を国有化すると、シンギュラリティ後に世界中の国は二つのグループに分かれることになる。一つ目のグループは、資金力が十分にあり結果として人工知能技術を国有化することに成功した国、二つ目のグループは、資金力が不十分で結果として人工知能技術を国有化することができなかった国だ。ここでは一つ目のグループを先進国、二つ目のグループを後進国としよう。後進国は自国の労働者の雇用を守るため国内での人工知能技術の商用使用を禁止するかあるいは自国の労働者の雇用を無視して海外の多国籍企業にお金を吸い取られるかの二択しかなくなる。そして後者の選択を選んだ国ではやがて労働者による暴動が起きて政権が転覆するだろう。つまり後進国には事実上自国内での人工知能技術の商用使用を完全に禁止するしかないのだ。
するとどうなるだろうか。答えは先進国と後進国は互いに依存状態になるしかなくなるのだ。人工知能技術を使うことで、先進国には人工知能技術の暴走というリスクが発生することになる。このリスクを最小限に抑えるためには後進国に対して緊急時に国民を難民として受け入れるよう要請するしかない。しかし後進国はその要請を無料で引き受ける理由がないので後進国は緊急時の先進国からの難民受け入れを条件に先進国に対して資金援助を要請することができる。また後進国には資金がないので先進国から資金援助をしてもらうしかないが先進国は対価なしに後進国に資金援助をしてあげる理由がない。故に先進国は通常時の資金援助を条件に緊急時の先進国からの難民受け入れを要請することができる。こうして先進国と後進国は一種の相互補完関係になる。そして先進国からの資金援助によって後進国は経済を回すことができるようになる。この相互補完関係は二つの国家間の正式な条約や制度として整備されることになるだろう。こうして先進国は豊かだがリスクを抱える国、後進国は貧しいがリスクを回避できる国となる。
この関係は豊かで軍事力も大きく技術力も高い先進国が主導することになる。また先進国と後進国の間にある技術力や資金力の差は時がたてばたつほど大きくなるのでこの関係は永続的に続くことになる。ただし後進国は搾取される側ではなくむしろ搾取する側になる。なぜなら後進国には緊急時の先進国からの難民引き受けという強力な外交カードがあるからだ。先進国の国民はいざというときに後進国に行かなければならないので、後進国の国民の自由と権利及び豊かさを保証せざるを得なくなる。確かに先進国は後進国の人工知能技術の使用は認められませんし先進国は後進国の労働はなくすことを認められませんがほかの面では先進国は緊急時に後進国を先進国の人たちが我慢できる状態にするために行動する必要がある。例えば先進国には緊急時に難民を受け入れてくれる後進国のインフラストラクチャーを整備する必要がある。また先進国の人は後進国の政治的腐敗を許すことはできない。また先進国は緊急時に難民を受け入れてくれる後進国の選挙や言論の自由だけでなく教育や文化の自由な発展まで保証する必要がある。さらに、後進国は自分たちの外交的立場を有利にするために連帯をするかもしれないが、東側諸国の先進国と西側諸国の先進国の間の連帯は不可能だ。故に外交上の立場は後進国の方が強くなる。この後進国の団結は先進国には無視される。なぜなら後進国に渡すお金は雀の涙だし、後進国を豊かにすることが先進国にもメリットになるからだ。
いずれにしても後進国は先進国と比べれば貧しい生活を強いられるが後進国の住民も先進国からの資金援助を受けることで今の我々よりは豊かな生活を送れる。また、先進国は技術的に最先端だが、人工知能技術依存と緊張の中で生きることになり、後進国は技術的には後れを取るが、自由と文化の豊かさを享受できるというわけだ。故に後進国の住民もある程度満足すると予想される。こうして先進国と後進国の関係は安定するわけだ。
なお、シンギュラリティ後は先進国では国民に選択の自由は事実上ない。なぜなら勝ち続け失敗しないためには人工知能の助言という名の命令を聞き続ける必要があるからだ。後進国の人の大半は先進国に行きたがるだろうがそれは許されない上に先進国には後進国の人の考える自由はない。なぜ後進国の人が先進国に行くことを許されないかというと、後進国の安定および先進国の人がいざという時に移住する移住先を楽園のまま維持するために先進国の人が後進国の人の受け入れを許さないからだ。逆にシンギュラリティ後に後進国に行きたがる先進国の人もいるしそちらは実際に行けますが現地で馴染むことはできません。なぜなら働いてない人が働くのは難しいことだからだ。結局彼らの大半は先進国に戻ることとなる。つまり、先進国は技術に縛られた勝利の世界、後進国は精神に開かれた不自由な勝利の外の世界、という二重構造が完全に固定される。そして先進国の人は自由を失った勝者、後進国の人は勝利を失った自由人になるだろう。
先進国は自由を失った勝者の国、後進国は勝利を失った自由人の国、君たちはどちらの国に住みたいかな?