八章 夏風邪に焦る心
水戸さんの宿題のレポートを教える片藁、妹のレポートをやる始末。
夏風邪はまだ治っていない。
「天野くんの妹さん?名前は何って言うの?」
「天野華。落ち着いてるように見えるでしょ。全然そんなことはないよ。私の前だけだからね。」(今私は滅茶苦茶頭が働かない。レポート課題は未だ私の分も残っている。非常に不味い。)
「そうなんですね。可愛らしい妹さん。私にも兄弟がいるけれど仲は良くないです。」
「そうか。そういう事情は何でも話してもらって構わないから。」
「え。」
「一人で思い悩み詰めるより、誰かに話して分かち合えたら解決には至らなくても気は楽になるでしょ。また何かあったら相談すれば良いんだよ。学校では変わり者とか言われてるけど私がいるではないか。」
安心した顔で「わかった。ありがとう。」そう天野くんの顔を見ると寝てしまっていた。目を開けながら眠っている。その横顔は益々仏様の顔立ちに似てきていた。
「本当に変わってますね。」
数日後
「漸く元気になった。」布団から立ち上がり窓を開けた。
「お兄ちゃん大丈夫?まだ熱とかあるんじゃない。」心配して私の額に手を当てた。
「大丈夫もう下がったから経過観察を終えて、明日からは宿題をやらなければ。」
「宿題って言ってもお兄ちゃん全ての宿題もう終わってるでしょ。」(いつものことだから暇でしょとか思ってるんだろうな。でも今の私には、)
「そうだけど頼まれてる宿題があるんだよ。」
「あの水戸とかっていう人のでしょ。」拗ねたよう言う。
「そうだけど華の分の研究レポートも終わらせたでしょ。水戸さんは悪い人じゃないし。」
「お兄ちゃん完全に水戸さんのものになってる。」がっかりしたように言う。
「水戸さんのものにはならないよ。一先ずもう心配ないよ。」
「今日もあの人と図書館?」
「そうだけどどうかしたの?」
「私も行く。私も図書館に行く。」
「まぁ、行くぐらいなら良いけど。」
二人で蓮根図書館まで行くと、水戸さんが待っていた。
「元気になったんだね。妹さんも一緒に?」
「図書館に一緒に行くって聞かないからね。ほら華。仲良くしないと。」
「こんにちは。華ちゃん。」
「こんにちは。」なんとも小声で話すもんだ。
「これが水戸さんの研究レポートです。出来上がってるので呼んでみて修正点があれば言って下さい。」
「いえいえそんな。ありがとうございます。」
「国があんな義務化をしてしまったために私のところも宿題として出てしまったよ。しかも二十頁も。」
「そうですね。この年からずっと続くんでしょうか。来年もあるとなると嫌ですね。華ちゃんの様子を見てくださいよ。」
「ムスッ」
何やら隣で頬を赤くして拗ねている妹がいる。
そんな事は気にせずに再び勉強に戻る。
(華と水戸さんの仲があんまり宜しくない気もするが、いつかは仲良くなるだろう。)
安堵していると二人からの質問が飛び交った。
「今日も大分勉強できましたね。宿題をさっさと終わらせてからやりたいことをやりましょうね。」
「そうですね。」
「さて私等はここ等辺で失礼しますかね。」
「またね水戸さん。楽しみにしてるよ。」全然楽しそうにしていない顔で言う。
「そうですね。ではまたね天野くん。」
そうやって別れた私達は夕飯を食べ、そのまま寝てしまった。
華と水戸さんの戦いは、想像よりも長く続いてしまう結果となるだろう。




